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行きつけの喫茶店のバイト君が常連客に「フリーターにならずに済みそうです」と嬉しそうに話していた。この不況下、就職が決まらず困っていたところ、親から「留年して再チャレンジしていい」というお許しが出た由である。
80年代後半に某アルバイト情報誌が作った「フリーター(フリー・アルバイター)」という言葉は、もともと夢を追いかけるため、あえて就職しない若者を指していたが、今では「無職者」に近い意味に成り下がってしまったのだ。
ポジからネガへ。フリーターという言葉の意味の変容は「就職しない」という個人の意思の問題が、「就職できない」という社会的問題に変質したことを意味する。と同時に、ワーキングプア、格差社会、派遣切りといった言葉がマスコミをにぎわすようになってきたのはご承知の通りだ。
これをどう解決すべきか。雇用制度の国際比較と歴史的考察を駆使し、法律、政治、経済、経営、社会、教育など、さまざまな側面から、今後の労働社会のあるべき姿を提示したのが本書である。
著者によれば、日本型雇用システムの特徴は「職務」という概念が希薄なことだ。職務に応じて労働者を採用し、定められた仕事に従事させるのがグローバル・スタンダードであるが、日本企業の雇用契約の基礎にあるのは「メンバーシップ」。どの職務を担ってもらうかは入社後に決まり、使用者の命令によっても変わるのが当たり前なのである。
雇用「三種の神器」と呼ばれる終身雇用・年功賃金・企業別組合の成立も、ここから導き出される。
職務と雇用契約が切り離されているので、担当する仕事がなくなっても、別の部署で人が足りなければ異動により雇用が継続される。これが長期(終身)雇用につながる。
賃金の額も諸外国とは違い、職務と切り離された形で決められる。といっても何らかの指標は必要だから、わかりやすい勤続年数あるいは年齢が適用される。すなわち年功賃金となる。
一方、こうした賃金の額や労働条件に関しても(元々、職務との関連が薄いのだから)、企業を超えたレベルでの交渉を行うことは意味がなく、むしろ所属企業の経営陣と行う必要がある。だから組合が企業別になるわけだ。
問題は「派遣」ではない
このような日本型雇用システムが適用されるのは正社員のみであり、非正規労働者には期間の定めがある雇用契約のもと、年功ではなく職務に基づいた賃金が支払われ、多くは組合への加入も認められていない。
それでも、かつては彼ら非正規労働者が社会的弱者と見なされることはなかった。なぜなら、その主役は家計の補助を目的に働く主婦パートや小遣い稼ぎの学生アルバイトであり、彼らの夫や父親が、正社員として家族の分も含めた生計費を年功賃金という形で手にしていたからだ。
しかしバブル崩壊後、企業が新卒採用を絞り込んだため、学卒後も正社員となることができず、やむを得ずフリーターという道を選び生計費を稼ぐ若者が増加。非正規労働者の貧困という問題が表面化したのである。
前述したように、日本企業の正社員は組織に所属することが雇用契約の基礎にあるから、一旦上からの命令があれば、残業や転勤もいとわず従わなければならず、経営側もそうした“会社人間”をこそ評価してきた。
こうした正社員に対する企業の拘束性の強さが、非正規労働者との待遇格差に表れてきたのである。
ならば、正社員(とりわけ男性)が担っている過重責任・過重労働を緩和し、この待遇格差を正当化できなくすればよい。具体的には、勤続年数が男性より短く転勤を命じられることもない、旧来の女性正社員の働き方をモデルにすべきだ、と著者は主張する。
と同時に、非正規労働者の待遇そのものを改善する必要もある。“派遣”悪者論、特に登録型派遣事業の禁止に傾きがちな昨今の風潮に対して、著者はこう反論する。
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