「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

2009年8月26日(水)

「10万台、7年で電気自動車が主流になる」
〜祝・社長就任! 「シムドライブ」は未来を開くか?

第10回:エリーカ【清水 浩 慶應義塾大学教授・後編】

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(前編「『みんな勝ち』の未来へ急発進! 時速370kmの電気自動車」から読む)

 先週号の清水浩先生のインタビュー記事をアップしたその週末、「ホンダが2010年代前半をめどに米国市場に電気自動車(EV)を本格投入することを検討していることが分かった」との記事が日本経済新聞の朝刊に載った。

 「検討していることが分かった」という、日経特有のビミョーな言い回しが実に芳ばしいのだが(ホンダはすぐ翌日に「具体的な日程等は一切未定」とのコメントを発表した)、火のないところに煙は立たず。EVが大きなムーブメントとなっていることは間違いない。

 そして更に昨日(8月25日)。“EVの普及を目指す慶応大学発のベンチャー企業「シムドライブ」社の設立“なる記事が朝刊各紙に大々的に掲載されていた。今回ご登場頂いている清水先生が自ら代表取締役を努めるこの企業は、ベネッセ・コーポレーションの福武会長個人や中古車販売のガリバーインターナショナル、丸紅等のそうそうたる企業が出資している。因みにシムドライブのSIMは(Shimizu In wheel Motor-Drive)の略称である。

 やるなぁ清水先生。このタイミングで清水先生のインタビューを掲載するのって、あまりにも“デキ過ぎ”という感じだが、当連載はヤラセやシコミとは一切無縁。業界ではつとに有名な「引きが強いヤマグチ」、とか「嵌張(カンチャン)のフェルちゃん」の“引き”の部分が今回も偶然に炸裂した。ただそれだけのことだ(村上春樹調)。編集Y氏が張り切って、掲載を1日早めたけどね。

 さてさて、それではお待ちかねのインタビュー後編をお届けしよう。

 EVのムーブメントは良いのだが、現在のEV車は連続走行距離が良いところ300km。出先で止まってしまうのは絶対にイヤだ。気軽に給電できるステーションの設置が欠かせない。EVの発展には、やはりインフラの拡充が急務である、と思う。 民主党のEVに対する感度はどれくらいあるのだろう。教育や高速料金同様、EVインフラにも盛大にバラ撒いて下さればEVの普及も加速するのだろうか。ところが“ミスターユニーク”清水先生の見方は全く違っていたのである。


慶応大学、ベネッセコーポレーションや丸紅などが出資する新会社「シムドライブ」の社長となった清水先生。最新の著作では、インホイールモーターを使う電気自動車の利点から、社会システムの構想までがエネルギッシュに分かりやすく語られている

* * * * * * *

F:電気自動車が普及する用件として、インフラの問題があります。ケータイは、インフラが固定電話に比べて格段に安いという途上国にも合ったメリットがありました。だからこそこれほど早く大量に普及した。電気自動車が普及させるにあたり、給電ステーションを全国展開するには相当なカネと時間が掛かりませんか?

:インフラね。皆さんそう言います。インフラについても言いたいことが山ほどある。そもそもインフラが整ってから普及した技術なんて無いんです。

F:え?

インフラは常に「あとから追いかけてくる」もの

:インフラは後で付いてくる。デジカメが出来たときに、フィルム屋さんはいっぱいあったけれども、デジカメをプリントするなんていうビジネスはなかったですよね。携帯が出てきたときもそう。ごく狭い一部の地域でしか通話できなくて不便極まりなかった。でも、あ、コレ良いねとなったらアッという間にエリアが拡大したじゃないですか。2年ぐらいで全国展開。

F:確かにそうでした。発売当初に地方の山奥で掛からないから買わない、という人はいなかったですね。

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:いないですよそんなゼータクな人。クルマだってそう。多少不便だって使う人は必ず使う。高速道路が整備されたからクルマが普及したんじゃない。逆です。アリモノの既存の馬車道で走ってみて、あ、こりゃ調子いいやということで舗装道路ができて高速道路ができた。インフラなんて後から着いてきます。

F:良い製品で市場が望めばそうですね。

:そうそう。あくまでも人が望む良い製品であれば、です。だから何と言っても最初に良い製品を作ることが大切です。そうすればインフラは間違いなく後から着いてくる。特に電気自動車のインフラなんて簡単ですよ。だってコンセントさえあればいいんですから。

F:何か面白い授業みたいで楽しいなぁ……。先生は大学でどんな授業を教えていらっしゃるのですか?

:私は環境です。今日も環境問題を教えてきました。

F:アル・ゴアみたいな?

:そうです。ゴアみたいことを教えています。元々の専攻は応用物理で、クルマではありません。1つの学期で1回はクルマの話をしますけれども、そのほかは環境の話です。普通の環境の先生だったら、「ゴアはこう言ってるよ」で終わりになるけれども、私はそこから始める。「ゴアはこう言っているけれども、それだけじゃないぜ」、と。こんなイヤな現象があるのは確かだけれども、こうしたら世の中をよく変えていくことができるんだ、という話をします。私から見れば、地球温暖化なんてメじゃないよ、と。

温暖化は、19世紀の技術を使い続けた結果にすぎない

F:地球温暖化はメじゃない・・・?

:全くメじゃないです。温暖化の原因はCO2とされています。化石燃料を使っているからだ、と。私の基本的な主張は、「19世紀につくられた技術を今でも使い続けていることこそが問題だ」という事です。19世紀に発明された自動車、19世紀に発明された製鉄法、19世紀に発明された火力発電所。火を焚くからCO2が出るんです。火を焚かないで、CO2を出さないで済む技術が既にもう有るんだから、そっちに置き換えればいいだけの話じゃないか、と。

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F:といいますと。

:20世紀になって量子力学というものが出てきました。これは簡単に言うと、原子の中身と分子の中身を見る科学です。その科学のお陰で20世紀の中ごろから末にかけていろいろな発明が出てきたんです。その最大の発明がトランジスタ。そのほか太陽電池もあるしリチウムイオン電池もある。モーター用の非常に強い磁石もカーボンファイバーなんかもそう。

F:日本が強い分野ばかりですね。

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著者プロフィール

フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチ 47歳です。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。


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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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