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あなたも「人生は退屈なもの」と思っているのだろうか

2009年9月1日(火)

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フランス映画みたいな短編小説

キャサリン・マンスフィールドは、1888年、ニュージーランドで生まれた小説家だ。ロンドンで作家生活を送り、1923年、わずか34歳で亡くなっている。短編小説の名手として名高く、長編小説は書いていない。

英米のみならず、早くからフランスでも評価されたが、読めば誰でも「そうだろうな」と思うはず。派手な事件は起こらないが、静かに淡々と描かれる「絵」があまりに繊細で美しく、最後には、ほのかな哀感が残る。彼女の作品は、まるで印象派の絵画やフランス映画のような趣があるのだ。

もちろん、感覚的に美しい、というだけではない。
たとえば、「園遊会」だ。

この作品が出版されたのは1922年。重い病気を患っていたマンスフィールドは、出版後、公式の遺書を書いている。そしてフランスに渡り、フォンテーヌブローにあるグルジェフ(19世紀末から20世紀初めの神秘思想家)の施設に移り住む。翌年1月、彼女はグルジェフのもとで生涯を終えている。

つまり「園遊会」は、自らの死に直面し神秘思想に共鳴している作家が書いた作品なのだ。

「大人への入り口に立った多感な少女のとまどいが、みずみずしい筆致で描かれている」といった理解は、もちろん間違ってはいないだろうけれど、さらに踏み込んで、「死」や「死に触れるという経験」についてのマンスフィールドの考えを読み取ってもいいはずだ。

そのつもりで、主人公ローラの意識の変化、死や生についての思考の深化をたどっていきたい。

パーティーの準備

「園遊会」のストーリーは以下のとおりだ。

(1)
ローラは裕福な家庭の女の子だ。今日は朝から母や姉、召使い、料理番、園丁たちといっしょに、ガーデンパーティー(園遊会)の準備をしている。午後には、バンドを呼び、友人や知人を招いて歓待するのだ。
ローラは、天幕を張る場所を職人に指示した。サンドイッチに飾る小さな旗も作った。台所でクリームパフのつまみ食いもしたし、花屋が大量のカンナ百合を持ち込むのを見て大あわてもした。
晴れ渡った空の下、ローラたちは、庭から室内へと夢中で駆け回っている。

(2)
そのさなか、ローラは不幸な事件を耳にする。
家の近くの貧しい家々の並ぶ小路、そこに住む荷馬車屋の男が事故で亡くなったというのだ。後には、妻と幼い五人の子どもが残されたとか。

因習を嫌い労働者階級に親近感を持つ、と自認するローラは、さっそく姉や母にパーティーの中止を求める。しかし、まともに取り合ってはもらえない。

ローラは寝室に下がり、ふと鏡に目をやる。たった今、母親にもらった帽子をかぶり、これまでになく美しい自分がいる。ローラの気持ちは揺れる。

お母さまの言うことは、正しいのかしら? 彼女は思った。そしていま、お母さまが正しいのであればよいと思った。あたしはとんでもないことを考えているのかしら? たぶん、あたしの考えはとんでもないことなのだろう。そのとき、あの気の毒な婦人と五人の小さな子供と、その家に死骸が運びこまれている光景がチラッと頭にうかんだ。だが、それはすべておぼろで、現実的でないようにおもわれた。ちょうど新聞に出る写真のように。

結局、パーティーは予定どおりに開かれた。そして、大成功だった。

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