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休みはない、キツい、儲からない。それでも…~『農民になりたい』
川上 康介著(評:朝山 実)

文春新書、690円(税別)

2009年9月4日(金)

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評者の読了時間4時間00分

農民になりたい』 川上 康介著、文春新書、690円(税別)

 素人を登場させる、さんまさんのテレビ番組で、農業マニアの小学生の男の子が人気を呼んでいる。

 職人風のぶっきらぼうなしゃべり方は、尊敬するおじいちゃんのリズムが伝染したんだろうけど、子供と思って侮ったりしていると、農業の知識のすごさにスタッフもさんまさんもびっくり。

 男の子が魅力的なのは、農業を世の中でいちばんカッコイイと思っていることだ。こんなに面白いのに、なんでみんな面白いと思わないのか、まるでわからんわと不思議にスタッフを見返す表情にも飾りがない。

〈四〇年近く生きてきて、農業に就きたいと思ったことは一度もない〉

 本書はこんな著者の独白ではじまる、「農民」に転職した人たちのルポルタージュ集で、農業をやりたいとは思ってない人間が聞き手という、この距離感がポイントだ。

 ワタシの家も農家だったが、将来何になりたいかといわれて、子供のころ答えはくるくる変わったが、百姓だけは論外だった。

 ただ50年も生きてみると、爪の間まで草のあくで真っ黒のオカンの手前、ウソでも農業と答えていたら、お年玉を弾んでくれたであろうに、と思わないでもない。

 それはさておき、紹介される人たちの前職は、大企業相手のコンサルタントや人気アパレルショップの店長など。都会での勤めに見切りをつけ、「農民」を選ぶにいたった経緯はさまざまで、テレビ番組「鶴瓶の家族に乾杯」ふうな物語になっている。

 人生はそれぞれだが、転職した結果を見てみると、ひとつだけ共通しているものがある。

 年収の大幅ダウン。最大で20分の1にまで減った人もいる。

 10年続けて、はじめて楽しく思えるというだけあって、転職後の苦労も尽きない。

農業は「職業」ではない

 サラリーマン時代は、90キロだった体重が、半年で20キロスリムになったと語るのは、兄弟三人で、岐阜県でしいたけ栽培を行う横田尚人さん。

 原木を切り出したり運んだりの日々の作業は、体力勝負。〈朝六時から夜一一時まで、一日中体を動かしてました。一日四食、いくら食べても痩せていきましたね〉

 休みはないし、仕事はキツイ。まあ、儲からない。それでも、取り上げられている5組の脱サラ農民たちのことばは、充実感に満ちている。

〈彼らを取材してわかったのは、農業は職業ではないということ。職業だと考えたら、年収や労働条件のことを考えてしまう。農業は、職業ではなく生活なのだ〉

 なるほどなぁと思うのだが、人生はおカネだけじゃないという境地に達するには、サラリーマン体験は欠かせないことだという。

 そこそこの収入は得られても、ストレスを抱えたり、やりがいに欠ける仕事を体験してきたからこそ、つつましくとも発見のあるいまの暮らしがいいと言えるものらしい。

 だからといって、大げさな何かがあるというのでもない。たとえば、洋服屋を辞めて京都府の農家に入り婿した小泉伸悟さんは、

〈畑仕事をやっていて一番嬉しいのは、芽が出てくる時期。春先に種をまくとまだ寒くてなかなか芽が出ないんですよ。「あれ、ここ何植えたっけ」とか「アカンかったかなあ」と思っていると、ある日突然ひょっこり芽が出ていたりする。これがすごく嬉しいんですわ〉

 小泉さんは、農業歴14年。モヒカン頭で、一見して農民らしくはない。

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