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「小さい男の子が、真ん中でもじもじ股間をおさえながら、歌っているのがいい」

「かもめ児童合唱団」【前編】

2009年9月17日(木)

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【このコラムについて】

 ルポライターの朝山さんとつきあいはじめて、かれこれ10年になります。電話で雑談をすると、僕は朝山さんに「最近、誰を追いかけているんですか?」って、つい聞いてしまう。朝山さんが追いかける対象は、7割ぐらいの確率で、一般的にはあまり知られていない人物なんです。

 でも、朝山さんのアンテナに引っかかる人物やグループは、どこか変わっている。どの分野であっても、定石を外しているのだけど、かといって個性をあけっぴろげにしている感じでもない。剛速球のストレートでもなければ、魔球のような変化球でもない。

 そうそう、簡単に「AかBか」に割り切れないものにこそ、朝山アンテナは反応するのです。この割り切れない人物やグループに宿る魅力の中に、いま「私たちの欲しいもの」が眠っているんじゃないでしょうか(僕はそれを個人的に「第3のシアワセ」と名付けています)。しばらくの間、朝山さんと一緒に、私たちの欲しいものはなんなのかを探しに、東奔西走してみようと思います。(編集者サイトー)

 いま、だれを追いかけているの?

 そう聞かれるのは、挨拶のようなものだとはわかっている。フリーのライターではあるが、事件や政治の裏側を探ったりするでもないわたしは、半年から1年くらいかけて一人の人物を取材するのを仕事にしている。しかし、最近は悠長に取材をするのもむずかしく、開店休業のような日々が続いている。そして、問われれば、「三崎にある、小さな児童合唱団が、面白くてね」と答えている。

1枚目のCD「「城ヶ島の雨/あなたが美しいのは」販促用のチラシ

 たいてい、へぇーという顔をされる。「児童合唱団」と、イイトシのおっさんとのつながりが読めないのだろう。

 「城ヶ島のある三崎の……」というと、相手の表情から、なんとなく地理を思い浮かべているのがわかる。

 「下は3歳くらいから、小学生までの10人くらいの合唱団で」と早口でいったあと、すこし間があいてしまう。

 よくある合唱団とは違うのだということを説明しないと、追いかける理由が聞き手に届かない。先日も、手際よく説明しようとして、相手の興味が失せていくのが見てとれた。

「うまい」「へた」を超越した面白さがある

 無名の子供たちである。秀でた才能を感じたというのでもない。ハンディキャップにも屈せず頑張っているというわけでもない。ただ、子供たちが歌っているのを目にすると、ササクレかけたこころがおだやかになってくるのだ。

 もともと合唱というものに興味のない人間だった。均一に声が揃った歌声は美しいとは思うが、だからどうなの。根っからひねくれ屋なのだ。しかし、この合唱団はなんとも「ふぞろい」。そこに、うまいとか下手とかを超越した面白さがある。

 わたしの友人が、さらに友人へと、かもめ合唱団のCDをプレゼントしたという。その際、こんな説明をしたらしい。「小さい男の子が、真ん中でもじもじ股間をおさえながら、歌っているのがいい」。

 不思議なことに「もじもじ」で、友人の友人はピンとくるものがあったという。伝聞だが、友人の友人の家には3匹のネコがいて、CDをかけると耳をピンとたてたりしながら聴き入っているという。

 ハレの発表会の舞台上で、もじもじしているのは格好よくないし、先生からやめなさいと直されるのが、ふつうだろう。が、この合唱団では、それが受け容れられている。たしかに彼らを見ていると、わたしも緊張してへんな動作をしていた子供のころをつい思い出してしまう。歌そのものとはズレてしまうが、そんな記憶をくすぐるあたりが、数ある児童合唱団との相違点かもしれない。

自意識が薄い「ふぞろい」の魅力

 そして、もうひとつ。最大の魅力は、子供たちの自意識の薄さである。

 自意識がないわけではない。子供なりの自意識は、彼ら彼女らにも存在している。しかし、たとえばアイドルを目指す子供たちが発散する、あのうんざりするような自意識はない。ひとに聴かせるために歌う活動をしながら、その状態を維持するというのは稀な出来事だと思う。

 おそらく、もじもじクンは、あと2年くらいして、いまの自分のビデオを見ると恥ずかしがるのだろう。だから、もじもじはいましかない「期間限定」でもあるだろう。

 生産者の名前を記した不ぞろいな野菜が見直される時代。人間の「ふぞろい」を魅力にしている。これは、そんな合唱団をめぐるレポートだ。

「バスを仕立てて、児童合唱団を観に行く日帰りツアーを計画しているんだけど」

 知人の音楽プロデューサー、佐藤剛さんから声をかけられたのは、昨年の秋のことだ。

 佐藤さんは、THE BOOMなどのプロデュースで、音楽業界では名が知られている人物。その日、別件の打ちあわせを終え、それじゃメシでもと、場所を変えて数人でテーブルを囲んだ。

 彼のリュックのカバンにはいつもいろんなものが詰め込まれている。雑談のさなか、佐藤さんは「そうだ」とカバンをごそごそとし、紙を一枚取り出した。「かもめ児童合唱団」のカラフルな文字で書かれた、CDの宣伝チラシだった。

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