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「伝える」ために必要なのは「伝わらない」体験~『コミュニケーション力を引き出す』
平田 オリザ・蓮行著(評:朝山 実)

PHP新書、740円(税別)

2009年9月14日(月)

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評者の読了時間5時間00分

コミュニケーション力を引き出す──演劇ワークショップのすすめ』 平田 オリザ・蓮行著、PHP新書、740円(税別)

 ある映画館でのことだ。よそでは見られないプログラムが魅力なのだが、そこのスタッフにイライラさせられて、贔屓にしたいぶん腹立たしくてしょうがない。

 というのも、小さな劇場なので、上映時間が近づくと、階段伝いにチケットを求める列と、開場を待つ列が混雑してしまう。その日も、スタッフが「こちらに並んでください」と誘導すればすむ話で、チケットの売り子以外の人手が足りないわけじゃなかった。

 しかし、声をかけるべきか細げな男性スタッフは、ボソボソ。開場間際になるほど、客は増え、どこに並べばいいのよと右往左往する。それでも、売店担当らしいそのスタッフは持ち場を離れようとはしないし、あろうことか背を向けてシランプリ。たまりかねてお客さん同士で、「切符を買ったひとはこっちですよ!」と声を響かせていた。

 プログラムはいいんだ。だけど、スタッフにがっかり。シャイというには、ほどがある。声をだそうよ、声を。

〈「伝えたい」という気持ちは「伝わらない」という体験からしか出てこない〉

 気分を変えて。平田オリザさんの言葉です。

 平田さんは、劇団の主宰者で演出家。鴻上尚史さんと並んで、早くから演劇を教育に役立てようと取り組んできた人だ。

 今の子供たちは、「ケーキ」といわなくても、お母さんがケーキを出してくれる。恵まれすぎた環境だと、伝える能力が欠如すると平田さんは危ぶんでいる。

 「コミュニケーション力」の低下が、子供ばかりか大人の社会においても歪みを生んでいるというのはいうまでもないことだが、ではどうしたらいいのか。

 平田さんがいうには、子供たちを障害者施設や高齢者施設に連れていって、「伝わらない」体験教育させるのがいい。とはいえ、たいがい予算や人員の問題もあってムリと反対されるのは目に見えている。そこで代替案としてあげるのが、演劇だ。

お題は「うまくいかない企画会議」

 たしかに、学校教育や社員研修に演劇を取り入れるところが近ごろ増えてきている。

 演劇というと趣味人が観るもの、フリーターの人たちがやるものと距離をとられがちだが、本書は「こんふうにビジネスにも役立つんですよ」とプレゼンテーションする本だ。

 若手の演劇人・蓮行さんと、平田オリザさんの共著となっているが、基調となる平田さんのパートについても、蓮行さんが聞き書きしてまとめていることからして、どちらかというと蓮行さんの単著にちかい。

 実際に、どんなふうに演劇が役立つのか。

 蓮行さんは、企業を対象にしたワークショプを行っており、「K社を変えた劇的セミナー」と題された章では、独特の発声練習に始まり、参加者たちが芝居を完成させるまでの二日間を小説仕立てで綴っている。

 演劇とは無縁のビジネスマンたちを真剣にさせようというのだから、意表をつく工夫が必要なことはわかる。お手本として、蓮行さんの仲間の劇団員たちが披露するのは、新商品の企画会議の様子を切り取ったもの。

 缶コーヒーにたこやきを入れたらどうか。

 冷静に考えれば、一笑に付される企画だが、見本の寸劇は、そんなもの売れるかといいながら、だんだん会議は具体化してゆくという筋立てだ。

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