「カラダを言葉で科学する」

「ずば抜けた点なし」でもトップ評価

ビジネスに活かせる“若田光一流儀”〜JAXA有人宇宙技術部・有人宇宙技術開発グループ長・山口孝夫氏(後編)

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2009年9月17日(木)

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前編から読む)

 若田光一さんは日本人としてとなる国際宇宙ステーションでの長期滞在を行った。同じ宇宙航空研究開発機構(JAXA)の一員として宇宙飛行士たちの支援を地上で行う山口孝夫さんは、若田さんのことを「変化を楽しみ、挑戦を続ける人」と話す。予定を上回る4か月半というミッションで明らかになったのは、心身にストレスを与えない物事の捉え方だった。

 前向きさやコミュニケーション能力の高さは、宇宙で働く宇宙飛行士だけでなく、地球で働くビジネスマンにとっても欠かせない資質。それらを身につけるために必要な着眼点について心理学が専門の山口さんに引き続きうかがった。

山口孝夫(やまぐち・たかお)

1957年4月生まれ。神奈川県横浜市出身。日本大学大学院文学研究科卒業。宇宙開発事業団の時代から国際宇宙ステーション計画に従事。現在、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の有人宇宙技術部・有人宇宙技術開発グループ長を務め、宇宙飛行士の募集と選抜、宇宙飛行士の訓練、そして次世代宇宙服の研究も行っている。

――前編では、若田さんの「まず相手を誉める」コミュニケーションについて言及されていました。相手をまず肯定することの効果は、どこにあるでしょう?

山口:誉めることで相手と敵対関係にならないで済みますし、話を進める上での障害がなくなります。もっとも、たんなるお世辞で行えることではありませんが。

――ビジネス書では、相手を誉めることで交渉をリードしたり、プロジェクトを遂行したりするといったノウハウが散見されますね。

山口:人は相手をやりこめて、納得させて、こちらの言う通りにさせたがります。けれど、心にもないことを言って相手を誉めさえすれば、自分の欲求をのんでくれるかといえば、そんな単純な話でもないでしょう。

――でも、若田さんの誉め方は、相手の心に響くという話でしたね。

山口:若田さんの場合は、両親や友達からの影響が大きいのだと思います。人の心に訴える力というのは、本を読めば、ある程度は身につくものではあるでしょう。でも、本当に体に染み付くのは、遊びや喧嘩を通じてだと思います。そういう経験の中で、瞬間のひらめきや「おもしろそうだ、やってみよう」という気持ちが育まれたのだと思います。

チームの大敵は「馴れる」こと

――ひらめきや好奇心を育むプログラムはつくれますか?

山口:ある程度はトレーニングできると思います。

 宇宙飛行士の訓練では「スペースフライト・リソース・マネジメント」というものがあります。チームとして機能するため、どう人に働きかけ、意思決定し、リーダーシップを働かせるかといったことを学びます。

 リーダーシップといっても、ただぐいぐい引っ張るのではありません。相手が意見を言える環境をつくりあげることも重要です。

――具体的には、どういう訓練が行われているのですか?

山口:宇宙飛行士訓練の初期段階では、役割を変えて訓練を行います。「今日のあなたはコマンダー(船長)です」といったように、リーダーになったり、部下になったり、チームの飛行士らが役を分担します。そして宇宙飛行のシミュレーションをする。

 シミュレーション後、「あのときの発言は、部下にプレッシャーを与えてしまう」とか「あの場面ではもっとリーダーシップを発揮して部下を引っ張るべき」「あのときの発言で、部下として提案しやすい状況になった」などと、ディスカッションします。

 その後、宇宙に一緒にいくチームが決まると、コマンダーなどの役割は固定されます。宇宙飛行士はこれまで学んだ「スペースフライト・リソース・マネジメント」の知識を活かして、コマンダーは、リーダーとしてチームを率いることはもちろん、部下が仕事がしやすい環境を整えます。

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著者プロフィール

尹雄大(ゆん・うんで)

ライター。1970年、神戸生まれ。「AERA」や「Number」などで執筆。〈考える高校生のためのサイト mammotv〉でインタビュアーを務める。著書に『FLOW 韓氏意拳の哲学』(冬弓舎)



このコラムについて

カラダを言葉で科学する

自分そのものともいえる「カラダ」とどう付き合っていけば快適な仕事生活を送れるのだろうか。様々な専門領域で活躍している研究者・エキスパートに、「ビジネスの日常にプラスとなるカラダの知恵」を授かるコラム。仕事のスキルアップはカラダを知ることから。

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