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とある新聞社で聞いた「能天気さを嘆く」話

『資本論』をいま読むと何か役に立つのか? 池上彰×的場昭弘【前編】

  • 的場 昭弘,池上 彰

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2009年9月18日(金)

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 フリー編集者の斎藤と申します。このたび私は、的場昭弘先生と一緒に『とっさのマルクス』という本を作らせてもらいました。

 企画のアイデアが浮かんだのは昨年の夏ごろ。マルクスの原典をひもとくと、現代社会を射抜く刺激的な名言がたくさんある。それらを集めて、1冊の本として編みたいと思ったことがきっかけでした。

 しかしいざ始めてみると、すぐに「壁」が立ちはだかりました。
 マルクスの言葉はたしかにカッコいい。グッとくる。
 でもその多くはとても難解で、よくある名言のようにすんなりと頭に入ってこない。

 うーん、困った。そこで的場先生にお願いして、名言にコメントを付けてもらい、できるだけマルクスの言葉を噛み砕こうと工夫しました。

面白いけれど難解なマルクスをどう噛み砕こうか

 そうやってできあがった『とっさのマルクス』ですが、ほぼ同時期に、池上彰さんの『高校生からわかる「資本論」』が発売され、手に取ってみると、これがとてもわかりやすい。実際に高校生を前にして『資本論』のエッセンスをレクチャーしたものをまとめただけに、つまずきやすい箇所は絶妙な具体例を引いて、懇切丁寧に解説してくれる。「さすが、週刊こどもニュースのお父さん!」と感嘆いたしました。

 的場先生も、マルクスを一般の人びとにわかる言葉で届けることに力を注いできた方です。池上さんは言わずと知れたニュース解説の達人。このお二方であれば、マルクスをテーマに、面白い話が聞けるのでは、と思い、今回対談をしていただく運びとなりました。

 昨年から今年にかけて、マルクスや『資本論』の入門書が続々と発刊されています。その背景には、世界同時不況があることはまちがいありません。うなぎのぼりの失業率、使い捨てといっていいような派遣切り、所得格差の拡大、親から子へと受け継いでしまう貧困連鎖……。金融危機以前からも浮上していた負の問題は、さらに悪化の一途をたどっています。

 そんな状況で、マルクスを読むことの効用は何なのか、そしてなぜいまマルクスなのか。お二人のマルクス談義をどうぞお楽しみください。

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マルクス読者の世代交代が起こっている

池上 的場先生はずっとマルクスを研究されていたんですよね。しばらくは、冬の時代だったんじゃないかと思うんですけど。

的場 いや、まだ冬の時代ですよ。

池上 あれ、そうですか。

的場 ちょうど今から10年前、1999年ですよね。平成不況にさしかかった時代にマルクス関連の本って少し売れたんです。アエラムックの『マルクスがわかる』も30000部刷って、重版しましたし。ですから景気が悪くなるとマルクスが呼び出されるんですが、そのときも一過性のものでした。

 さて今回はどうなるか。私自身もたくさん書いているから、人のことは言えないのですけど、ちょっと過剰生産気味かなと。

池上 すみません、新規参入いたしまして。

的場 いえいえ、狭いところで満員電車になってしまって(笑)。

 【プロフィール】

池上 彰(いけがみ・あきら)
1950年長野県生まれ。慶応義塾大学卒業後、1973年NHK入局。1994年よりNHK「週刊こどもニュース」でお父さん役として出演。2005年3月にNHKを退社し、現在はフリージャーナリストとして活躍。著書に『わかりやすく〈伝える〉技術』(講談社現代新書)、『高校生からわかる「資本論」』(集英社)、『14歳からの世界金融危機。』(マガジンハウス)など多数。

的場昭弘(まとば・あきひろ)
1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て、現在、神奈川大学経済学部教授。経済学博士。著書に『とっさのマルクス』(幻冬舎)、『もうひとつの世界がやってくる』(世界書院)、『超訳「資本論」』(祥伝社新書、全3巻)など多数。

池上 読者層も変わってないんでしょうか。

的場 そこは変化があります。『超訳「資本論」』の売り上げデータを見ると、20代男子がボリューム層なんです。

池上 へぇー。

的場 30代の女性の割合もふつうの新書に比べて高い。これらの世代は、以前でしたら、ほとんどマルクスなんて見向きもしなかった層です。若い人たちのあいだで、「世の中、このままでいいんだろうか」という不安が、急速に高まっていることの反映かもしれません。

池上 これまでは私たちの世代が買いましたね。

的場 そうなんです。ただ今回は、中高年世代はむしろ敬遠しているような印象もあります。自分の生活防衛に必死で、社会のことを考えるヒマがないのかもしれません。中高年にかぎらず、景気が悪くなり過ぎると、今度は保守化するんですよ。

池上 ああ、なるほど。

不況が深刻になると、実はマルクスは読まれなくなる

的場 だからさじ加減なんですよね。そこそこ景気が悪いと、他人事としてマルクスに関心を持ちますけど、さらに悪化すれば自分事になると。

池上 マルクスどころじゃないと。

的場 そうですね。共同体精神というのは少し余裕があるとき出るもので、一種の貴族趣味ですよね。本当にきつくなると、自分だけ助かればいいという形になってきますから。そろそろそのモードに近づいているように思えて、これはまずいと。失業率もどんどん高まっていますし。

池上 過去のマルクス主義運動を見ると、極貧の日々の生活に苦しんでいる人が活動家になるのではなく、ちょっとゆとりのあるインテリゲンツィアが活動家になる。そんなことともちょっと相通じるものがありますね。

的場 マルクス自体がそうですよね。マルクスはお坊ちゃまで、奥さんも貴族ですし、どちらかというと昔の中産階級でした。

池上 いざとなればエンゲルスが助けてくれたし。遊ぶ金もエンゲルスが出してくれた(笑)。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長