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勝間和代も香山リカも、助けちゃくれない~『しがみつかない生き方』
香山 リカ著(評:朝山 実)

幻冬舎新書、740円(税別)

2009年9月18日(金)

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評者の読了時間4時間30分

しがみつかない生き方──「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』 香山 リカ著、幻冬舎新書、740円(税別)

 友人が電話口でぷんぷんしている。

 派遣会社の登録会に足を運んだそうだ。寿退社後、バツイチとなった彼女は数年ぶりの社会復帰と、リクルートスーツをバッチシ着込んで面接を受けたものの、様子がヘンなんだという。

 個人情報に関するアンケートをいっぱい書かされた上に、「○○さん、専門スキルや資格を有していると有利なんですよ」と受講をすすめられる。

 スキルアップのための講習は、やけに細かく、次々と受講しないといけないようになっていて、しかも一コマがバイトの給料の何日分にも相当する。担当者は斡旋に熱心で、仕事を欲するこちらの希望なんてまるで聞いてない。

「受講を断ったからか、求人の連絡もなしのつぶて。シビレを切らして問い合わせたら、担当から折り返し電話させますといったきり、もう一週間よ。どう思う?」

 延々と彼女の話は続くのだが、その派遣会社は、どうやら資格商法へと稼ぎ方を切り替えつつあるらしい。

 さて、めちゃ売れているそうだ、この本。

「〈勝間和代〉を目指さない。」

 オビのこの一言で、手にしたという人は多いという。6刷の新しいほうのオビは、「『ふつうの幸せ』が最大の幸福」という、なんのインパクトもないものに変更されているが。

 そういえば、数日前のことだが、「カツマさん、垢抜けてきたよねぇ」と喫茶店で女性たちが話題にしていた。主婦ともOLとも断じがたいいでたちの彼女たちが口々にする、ドン小西ふうのファッションチェックには、前はイケテないグループにいたのにねぇというビミョーなトゲが感じられた。

 初版のオビコピーそのままの一章が、最終章。香山さんが、ベストセラーとなった勝間さんの『断る力』に、噛み付いている。

「断る」ほど仕事のある人がどれだけいるか

 勝間さんは、仕事は取捨選択し、ときには毅然と「断る」決断をしないといけないとハッパをかける。それが自身を高めるとの論旨に対して、香山さんは、ごもっともと認めながらも、レースにエントリーさえされない人たちがいることへの想像力の欠如を指摘する。「自慢かい」と軽くツッコミを入れることも忘れていない。

〈いまの世の中、殺到する依頼の処理に困る人と、依頼がないことで不安になる人と、いったいどちらが多いのだろうか〉

 もちろん、香山さんは、多数のほうに自分を重ねている。さらに、

〈人々が本当に必要としているのは、“誰からも依頼がない”といったときに自信を喪失したり自暴自棄になったりせずに、静かに孤独や絶望に「耐える力」のほうだと言えるのではないだろうか〉

 勝間さんは「勝ち組」。わたしなんて著書は多いがベストセラーもないし、訪れる患者も少ないし、子供もいないし、未婚だし……と、ぶつぶつつぶやく香山さん。言わなくてもいいのに、己の弱みを全開にしてしまっている。はっきりいって、かっこよくはない。よくはないが、この気弱さかげんは、勝間さんに象徴されるポジティブシンキングに疑問を感じはじめた読者の心をくすぐるわけだ。

 うすうす気付いても、一度目指した勝間和代という山を、途中で下山するのは容易ではない。努力が足りないのではない。わたしが悪いんじゃない。登りきれない理由を見極めて、すっきりしたい。香山さんは、そんな「カツマー」たちの救いとなろうとする。

〈それにそもそも、本当にマスコミに登場している成功者のような人生を、すべての人が歩む必要があるのだろうか。さらには、成功者たちは、本当に雑誌やテレビが報じているようなすばらしい人生、悩みなき生活を送っているのだろうか。そのあたりも考えてみる必要があるだろう〉

 近ごろ「旬の人」たちを追いかけるドキュメタリー番組「情熱大陸」を、お笑いの人たちがパロディにするのをよく見かけるようになったのも、「そのあたり」に関係した現象だと思う。みんな、いいかげん、疲れてきているのだ。がんばれがんばれ「夢をあきらめるな」の合唱に。

 本書で、「しがみつついてはいけない」対象としてあげられているのは、「恋愛」「つらい過去の記憶」、「夢」や「仕事」、「子ども」に「お金」に「わたしが生まれた意味」探し。「勝間和代」の名前が加わらなければ、めずらしくもないラインナップだ。

 ただ、ひとつ、面白いエピソードがあった。

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