「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

2009年9月28日(月)

ハトが大風呂敷から舞い上がる

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 「トゥエンティファイブパーセント……バイ・トゥエンティ・トゥエンティ」

 と、鳩山首相は言っていた。
 なるほど。
 2020年までに25パーセント。驚くべき数字だ。
 
 が、テレビ画面で繰り返し再生される鳩山スピーチの動画を眺めながら、私は

「どうして20パーセントにしなかったのだろう」

 と思っていた。
 だって、「トゥエンティ・パーセント・バイ・トゥエンティ・トゥエンティ」の方が語呂が良いから。
 だろ?

 20% by2020――これなら世界中の善男善女の皆さんが、3秒で暗記できる。と、ハトヤマ・スピーチの印象度は30パーセントアップ。日本のイメージも3割向上だ。

 経団連の反発を見ても明らかな通り、25パーセントは、かなり無茶な数字だ。
 いったいどこに根拠があるのか、意味不明な目標値だと言っても良い。
 その意味では、5%ぐらい割り引いたとしても、十分にインパクトはあった。

「おお、20パーセント!」
「なんと、2020までに20とは」

 世界は十分びっくりしてくれたはずなのだ。

 20パーセントなら、反対派の理解も得やすかった。

「まあ、語呂が良いからな」
「20の三並びで、アラシだし」

 いや、語呂みたいなことで国の大方針を決める態度は、軽薄のそしりを免れ得ない。それはわかっている。

 でも、デカいプロジェクトほどシンプルなキャッチフレーズで説明されるべきだ、という考え方もある。

 なんとなれば、国家的なプロジェクトや国民的な合意には、なにより「わかりやすさ」が不可欠で、そのためには、語呂の良さが最重要だからだ。

 以前、このコーナーで取り上げた「地デジカ」などは、その意味で、成功例のひとつだと思う。

「地デジ化だから地デジカ」

 一度聞いたら到底忘れることは不可能。異様なばかりの脳内定着力だ。2011年7月までに地デジ化を完了させるという方針が適切であるのかどうかはともかく、鹿は走り出している。街は鹿だらけ。国家的なプロジェクトには、そういう闇雲な推進力が必要だ。

 最近の例では、ビートルズのリマスター盤CDの発売日が、モロに語呂頼りだった。

 発売日は09年09月09日。しかも世界一斉リリース。9の三並び。ちなみに根拠は、「ジョンレノンのラッキーナンバーが9だったことにちなんだ」ということになっている。

 いずれにしても、三十数年間ファンが待望し続けたリマスター盤である以上、普通の日に発売するわけにはいかぬ。であるから、わかりやすい目印の付いた、それらしい記念日が模索された。そういうことなのだと思う。

 で、ジョン・レノン没後二十周年だとか、ビートルズ結成五十周年記念日だとか、ポール・マッカートニーの六十四歳の誕生日だとか、いくつか候補が(たぶん)あがった中で、最も世間に対して訴求力があって、なおかつ発売のタイミングとして好適な日付が選ばれる運びになったのである。

 で、選ばれたのが、090909。なんと印象鮮烈な日付であることだろう。少なくとも私は手もなくひっかかった。で、半年前から待つハメになった。大成功。ファンほどひっかかりやすい人間はいない。またの名をカモ。特技は鵜呑み。財布には羽根が生えている。

 失敗例もある。
 今から二十数年前、日立製作所がまだパソコンを作っていた頃の話だ。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。


このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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