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夢や都合や「やらせ」をよそに、すいすい飛んでいくかもめたち。

「かもめ児童合唱団」【後編】

2009年10月1日(木)

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 月に一度、三崎漁港の海産物センター「うらり」の屋内広場で、かもめ児童合唱団の定期コンサートが行われるようになって、2年になる。マグロを目当てにやってきた観光客が、子供たちの元気な歌声に、足を止める。そんな光景が見られようになった発端は、06年12月。三崎漁港の水中観光船「にじいろさかな号」に、合唱団を指導する小島晃子さんが乗ったことからだった。

「お客さんが5、6人しか乗っていなくて。船底の窓から、魚を見れるのは面白いんだけど。そのときは、冬でしょう。寒いし、寂しいしで、『このお船の歌を作ったらどうですか? 乗ったら明るくなるような歌がいいですよ』と、わたし、お誘い頂いた会社の元専務さんに言ったんですよ」

 と、小島さんは振り返る。

「せんせ、それいいね。誰か作る人いませんか?」

 専務が乗ってきた。小島さんは、いつも児童合唱団の手助けをしてくれている青年・市川学知さんの顔を思い浮かべ、「自分でバンドとかやって、歌も作れる人がいますよ」と、答えた。

 予想外なことに、話はとんとん拍子。その場の勢いから、市川さんに作詞作曲をしてもらってできたのが、船のテーマソング「にじいろさかなGO」。勢いで、合唱団の子供たちが歌うシングルCDまで作ることになった。

「CDといっても、そんなリッパなものじゃなくて、10万円くらいの予算ですから」

月に1度、にじいろさかな号の船上で合唱

NHK、姿は映れど、声は流れず

 船で、歌を流してみると反響があった。話を聞きつけたNHKの横浜支局から、子供たちの練習風景を撮影したいという申し出があった。

「先生、どうして小さな子たちと大きい子たちと、一緒に練習するんですか?」

 取材のクルーから、質問を受けた。年齢の揃った子供たちが合唱する風景に親しんでいると、三歳児と小学生とをグループ分けせずに、練習していることが奇異に見えるのだ。

かもめ児童合唱団を束ねる小島晃子先生

「もう何年もそうですから」

 小島さんは、当たり前のように答えた。ジーッと顔を見返され、はじめて自分のやっていることは変わったことなんだと気づいたという。

 二度目の取材を受けたのは、同じくNHKだった。「童謡の街」を特集したテレビ番組をつくるので子供たちを映したい、という申し出があった。そのときも、スタッフは「先生、こんな合唱団はめずらしいですよねぇ」と、何度も口にして帰っていった。

 唖然としたのは、放映を目にしたときだ。直後に保護者から、「先生、あれはなんですか!バカにしてますよ」とお叱りを受けたという。

 番組では、子供たちが海岸で遊んでいる映像が流れた。しかし、歌声は、有名なNHK東京児童合唱団のものが使われた。

 さらに、その1年後。またまたNHKだった。こんどは「かもめの水兵さんをやってください」と言ってきた。そして……。

「ぜんぶ、歌っているのは東京児童合唱団ですよ」と小島さんは、ハハハと口をおさえる。

「映像だけは、『かもめ児童合唱団』と入れてある。どう思います? 三崎の子供たちは元気があって面白い。しかし、テレビで全国にお流しするような歌声ではないと、テレビ局の人たちは判断されたんでしょう。失礼しちゃうわね」

 小島さんは、よく笑う。このときも、怒っているようでもあり、愉しんでいるようにもみえた。

 一回ならまだしも、三回まで協力しては期待を裏切られ、お母さん方からは「先生!」と怒られる。損な役回りに、「私が呼んだわけじゃないのにねぇ」と笑ってすませているあたり、小島さんのくよくよ悩んだりしない、太っ腹なキャラクターがうかがえる。

音楽プロデューサーの「なんじゃ、これは!?」

「かもめ児童合唱団のCDを出しませんか? 子どもたちがこの先、どっちに向いていくのかわからないんだけど、この瞬間にしかできないことを残してみませんか?」

 昨年の春、三崎に住む音楽プロデューサーの藤沢宏光さんから切り出されたとき、「子供の合唱団の歌をCDにするなんてバカじゃないの?」と小島さんは、家族の大反対を受けたと笑う。子供たちのお母さん方に話をしても、突然ふってわいた話に事態がのみこめてはいなかった。

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