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47. ジンクスは「物語」から生まれ、占いは「一般論」から生まれる。

  • 千野 帽子

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2009年9月30日(水)

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 日直のボウシータです。今週は長野県飯田市から、相変わらず「わか(った気にな)る」の話を続けてお送りします。

 前回まで、「物語」の形をしているものは「わか(った気にな)り」やすい、という話をしてきた。前回はとくに、ジェラール・ジュネットとロラン・バルトが書いたものを参考にしつつ、「物語」的な認知の一特徴を指摘した。

 すなわち、私たちは世界を「物語」的に認知するときに、「前後関係」を「因果関係」と混同してしまいがちである、という話だった。人間にはf1のあとにf2が起こったら、ついf1のゆえにf2が起こったというふうに考えてしまう癖があるのだ。

 私たちは縁起担ぎなどの場で、こういうことをしょっちゅうやっている。

 江夏豊が重要な役割を果たすベストセラー『博士の愛した数式』の作者・小川洋子は、親の代からの阪神タイガースファンだ。少女期の家族団欒の思い出を、小川さんはつぎのように回想している。

例えば、正座している時に田淵が逆転ホームランを打ったりすると、彼〔小川さんの弟さん〕はその運が逃げないようにずっと正座している。ピンチになると、「さっき田淵がホームラン打った時の姿勢になって!」と、みんなに命令する。トイレに立つ時は、試合の状況を見て弟に許可を得る必要がある。〔「家族団欒の図」『妖精が舞い下りる夜』所収、角川文庫〕

 また、我が家の約束事として、希望的予測を口に出してはいけない、というのがあった。例えば二点差で負けていて、ランナーが二人出てバッター田淵、という場面なら、誰でも期待することはただ一つだ。でもそれを口に出してはいけない。言ってしまったら最後、もうツキが逃げてしまう。と、弟は信じていた。ところが、ビールを飲んでほろ酔いの父は、つい口を滑らせてしまうのだ。
「ここで一発出たら逆転じゃ(岡山弁)」
その直後、田淵が凡退でもしようものなら、弟は本気になって、
「お父さんがそんなこと言うからじゃ(岡山弁)」
と怒りまくることになる。〔「私の阪神カレンダー」同上〕

私は特定球団のファンではないし、けっして縁起担ぎをするほうでもないが、それでも小川さんの弟さんの祈るような気持ちは、わかってしまうのだ。

博士の愛した数式』小川洋子 著、新潮文庫、460円(税込)
妖精が舞い下りる夜』小川洋子 著、角川文庫、540円(税込)

コメント10件コメント/レビュー

「どうして我々はこのような性向を持つのか?それは進化の過程で『物語』を紡ぎ出すことが生存に有利だったから」という物語にはまってしまいました。 ><(2009/10/08)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「どうして我々はこのような性向を持つのか?それは進化の過程で『物語』を紡ぎ出すことが生存に有利だったから」という物語にはまってしまいました。 ><(2009/10/08)

いつも楽しく読んでいます。「ヒーラー」や「自己啓発」を信じてしまう人は私の周りでも後をたたず、そのような人にこれは因果関係を捏造しているだけなの!と言ってみたところで、人間関係が崩壊するだけだというむなしさを感じています。(2009/10/05)

 はじめてコメントします。最初の方は出席していたのですがその後サボり、わかるシリーズになってまた出席しているいい加減な生徒です。しかも最初に出席していた頃、帽子さんを著作名から勝手に女性だと思いこんで読んでいました。想像(妄想)が逞しいので帽子さんは小さなベレー帽かぶり早口で喋るイメージで、そんな女性の語りでコラムの文章を頭に入れておりました。その後ネットで帽子さんの画像を調べたら男性でビックリ!それからは勝手に落ち着いた男性の語り文章は頭に入ってきます(帽子さんはもしかしたらとても高い声かもしれませんが…)。 わかるシリーズを読んでいて、言葉(言語)自体に「わかる(つもり)」が内在されているのではないかと私は思い始めています。例えば認識に障碍がある人に一匹の犬を見せ、これが「犬」であると説明したとします。そして別の犬を見せてこれは何か?と尋ねたら、その人は別の犬を「犬」とは認識できないと思います。それは違うものだからです。でも私はそれを当然「犬」と認識して、その他のことも「犬」と同じような認識を前提に生活している。そして、「犬」を認識できない人をまるでおかしな人や可哀想な人として扱ってしまっている。しかし、認識の鈍感性から考えれば、私の方が障害があるといってもよいかもしれません。しかしこの鈍感性がなければ、帽子さんの文章も全く読むことができません(そんなことしたら成功者って誰で、どんな状態なんだ!!!と発狂してしまいます)。「わかる(つもり)」って難しい問題ですね。 (2009/10/02)

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