親愛なる読者諸兄。この度は大変失礼をいたしました。
前回(「男だったら、死ぬ前に一度は乗るべきだ! 」)のGT-R試乗記でさんざん気分を盛り上げておいて、ムダなブランクを開けてしまいました。こうした電子媒体はスピードこそが命。素早い執筆、迅速な掲載こそが本来の在るべき姿であるのにこの体たらく。いや実はGT-Rの毒気に当たってしまい、試乗が終わった途端に数日間寝込んでしまいまして……なワケないですね。天気が良かったのでついついゴルフに出掛けたり、マツダ主催のロードスターレースに出たりして遊び暮らしているうちに日が経ってしまったのが実態でございます。
さてさて、今回の“走りながら考える”はいよいよGT-Rの開発者、奇才・水野和敏氏の登場であります。前回、「こんなクルマが日本でできたのか!?」と驚いたわけですが、その背景には「こんな開発者が日本のメーカーにいたのか!」「こんな開発方法を許すメーカー(というか経営陣)が日本にあったのか!!」という、さらなる」驚きが待っていたわけです。皆様にお待ち頂いた価値は十二分にある、と自負しています。
水野氏と言えば、全戦全勝向かうところ敵無しで日本のレースシーンを席捲した男。そんな彼が平成の黒船カルロス・ゴーン氏の勅令を受けて開発したのが今回の(初めてスカイラインの冠が取れた)ニッサンGT-R。水野氏は何を思い、何を目指してGT-Rを作ったのか。GT-Rはこれからどこへ向かうのか。「今までどのメディアにも話したことがない」、と御大自らが仰った“特別な話”もテンコ盛りのお徳用詰め合わせパックである。
しかし、しかしである。余りにも“特別な話”に過ぎて、とてもここでは書くことの出来ない話が多いのもまた事実である。インタビューは西海岸のギャングスタ・ラップの如く“ピー音”のオンパレード。不適切発言で松竹芸能から無期限謹慎処分を喰らった北野誠氏の「誠のサイキック青年団」を文字にするのと同じくらいに神経を使う仕事と相成った。
どれくらいかというと、聞いている我々のほうが「あの……、水野さん。そんなこと言っていいんですか?」と逆に心配してしまうくらいだったのだ。すると水野氏、「良いんだよ。構やしない。だってホントのことだもん」と事も無げに仰る(立ち会って頂いた広報山口嬢が、その間眉一つ動かさずに泰然と構えておられたのもまた印象的だった)。一つ聞けば、そこから話がどんどん膨らんで、100倍くらいになってドカンと返ってくる。我々はただボーゼンと口を開けて講談を聞いていたような、そんな雰囲気。
「じゃああれか、我々もその水野さんとやらの言いたい放題をこれから聞かされるわけか」と思った諸兄、ある意味その通りである。ジャーナリストとか評論家っぽくとかの小賢しいカッコは一切ナシ。取材陣が氏の話しっぷりに思いっきり喰われてしまった様子を、はずかしげもなくお見せしてしまおうと思う。
では水野劇場第一幕。とくとご覧あれ。
(編注:なお、最終ページには10月2日オープンの「屋上会議室」へのご案内もあります。合わせてご覧下さいませ)
* * *
インタビューは厚木の山奥に忽然と現れる秘密基地、NTC(日産テクニカルセンター)で行われた。厳重な監視体制の正門で受付を済ませると、山をくり抜いたトンネルを抜けてNTCに至る。モダンな建物には別の受付があり、そこで来意を告げると、程なく広報の女性が降りて来る。ICカードで管理されたゲートを抜け、会議室へ向かう。すると部屋の入り口で、偶然、別の会議が終わったばかりの水野氏と鉢合わせた。
編集Y:あ、水野さん始めまして。この度はよろしくお願いします。こちらが今回インタビューを担当するフェルディナント・ヤマグチさん。こちらがカメラマンで、私は日経BPから来ました山中と申しま……
水野(以下水):いよう、カメラマン。プロのカメラマンだね。プロって言うのは何だか分かるかい?
カメラマンO:……え? あの、写真を上手に撮るっていうか……

水:プロってのはさ、元がダメな物でも上手く見せちゃうこと。だから今日は頼むよ。カッコ良く撮ってちょうだい。ヤマグチさん。お手柔らかに頼むよ。お手柔らかにしないと、俺もう途中で帰っちゃうよ。今日は大磯のとき(*)と違うからね。
(*)実は私、水野氏とは昨年大磯プリンスホテルで開催されたGT-Rの試乗会の折りに、非公式でじっくりとお話しさせて頂いたことがある。「週刊SPA!」編集部の面々と訪れ、拙著『恋愛は投資である
』をネタに恋バナで盛り上がった。
フェルディナント(以下F):は、こちらこそ宜しくお願いします。この度は貴重なお時間を頂きまして誠にありがとうございます。事前にメールでご説明させて頂いたように、GT-Rの開発に係わる水野さんの……
水:ちょっとちょっと。ヘンだよヤマグチさん。言葉が固くてさ、ぜんぜんらしくない。
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