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行動経済学の本質、それは「にんげんだもの」にあった!

リチャード・セイラー米シカゴ大学教授が語る新著と「相田みつを」

2009年10月6日(火)

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 行動経済学研究の第一人者であるリチャード・セイラー米シカゴ大学ブース経営大学院特別招聘教授が、現在米オバマ大統領の法律顧問を務める法学者キャス・サンスティーン米シカゴ大学法科大学院教授との共著『Nudge』の翻訳本、『実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択』を出版した。

 日本でも『セイラー教授の行動経済学入門(原題:The Winner's Curse)』の著者として知られている。伝統的な経済学で想定する、常に合理的で最適な選択をする「人」について「人類ではない、言わばイーコン類だ」とバッサリ斬り捨てる。

 来日したセイラー教授に、政策における行動経済学の考え方を生かした制度設計のあり方と従来型のあり方との違いや、人が陥りやすい「自信過剰」を取り除くコツなどについて聞いた。(聞き手は日経ビジネス記者、広野彩子)

リチャード・セイラー
1945年米ニュージャージー州生まれ。1974年米ロチェスター大学で博士号取得(Ph.D)。米コーネル大学、カナダのブリティッシュコロンビア大学、米マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院などを経て95年から現職。行動経済学の第一人者として知られ、行動経済学の全米経済研究所(NBER)におけるプロジェクトの共同ディレクターをロバート・シラー米エール大学教授と共に務める。翻訳著作に『セイラー教授の行動経済学入門』がある。(写真:都築雅人、以下同)

―― 今回、来日されて、書家・詩人である故・相田みつをさんの言葉にいたく感動され、ファンになられたそうですね。

セイラー 日本に来て、すぐ相田みつを美術館に行ってみたのです。もちろん初めての経験でした。彼の残した書の言葉は実に素晴らしく、心を打たれました。印象に残ったのは、“しあわせはいつもじぶんのこころがきめる”というフレーズと、“にんげんだもの”です。行動経済学に通じるものがあります。

 相田さんがご存命だったら、きっと次の共著者になってもらいました。本当ですよ。感動して、思わず「相田みつをTシャツ」まで買ってしまいました。相田さんの人に対する洞察は、伝統的な経済学とは全く違う発想です。今後は、私もこの「にんげんだもの」をモットーにしようと思います。講演でもスライドで彼の言葉を引用させてもらいました。

「相田みつをさんは行動経済学者だったに違いない」

―― そこまで熱心なファンだとは思いませんでした。相田みつをさんの言葉のどのような点が“行動経済学的”とお感じになったのですか。

セイラー 展示されていた書の言葉を見て、相田みつをさんは行動経済学者だったに違いない、とさえ思いましたよ。

 伝統的な経済学では、人は合理的で、常に最適な選択をすると仮定して理論を構築してきました。経済学に登場する「人」は、常に感情に振り回されず、とても抑制が効いて判断を間違えず、飲みすぎて二日酔いになることもない。でも、行動経済学が考える「人」は違います。感情に振り回されることもあるし、しょっちゅう判断を間違える。時には飲みすぎて二日酔いになる。人間には「心」があるのですから、仕方ありません。まさに「にんげんだもの」ですよね。

 だから、伝統的な経済学が仮定する「人」は恐らく、人類ではないのですよ。合理的で、頭が切れて、常に「効用」を「最大化」できる「イーコン(Econ)類」とでも言うべき、「人類」以外の別の生き物なのです。相田みつをさんは、行動経済学が想定する「人類」を、実にうまく表現しているのです。

―― その「イーコン類」と人類の違いを明確にして、行動経済学について分かりやすく書かれた近著の原題は『Nudge(ナッジ)』です。直訳すると「ひじで軽くこづく」といったニュアンスだと思いますが、具体的にはどんなことを表現されたかったのでしょうか。

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「行動経済学の本質、それは「にんげんだもの」にあった!」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授