「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

2009年10月8日(木)

「説明できる商品」では、世界なんて狙えない!

第13回:日産 GT-R【開発者編】その2

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(前回「日産発世界行き、ノンストップ『水野劇場』開幕!!」から読む)

 クルマよりも面白い、ミスターGT-R水野和敏氏。インタビュー開始当初こそ、氏の迫力に圧倒されるばかりだったが、時間が経ち徐々にその“話っぷり”に慣れてくると、氏が決して勢いに任せているのではなく、我々の反応を冷静に観察しながらお話しされているのが分かってくる。

 ご自身がアピールしておくべき部分からは決して脱線せず、その上でどう話せば相手が食い付くのか、どのタイミングで何を言えば場が盛り上がるのか。水野氏は入力情報をつぶさに解析し、ピピッと計算してベストな回答を瞬時に出力してしまうのだ。電子制御トルクスプリット4WDシステム、ATTESA E-TSの如き俊敏な応答性。こういう人は間違いなく麻雀が強い。これがもしインタビューでなく麻雀だったら……。我々は間違いなくカモにされ、身ぐるみ剥がされパンツ一丁で厚木の寒空の下に放り出されていたハズだ。

 では、もう半チャン……じゃなくてインタビューの続きに入ろう。

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フェルディナント(以下F):アラブの王族がGT-Rを100台くらいまとめ買いしたというウワサを聞いたことがあります。あれは本当なんですか?

水野(以下 水):100台じゃなくて400台ね。ウワサも何も、正式な販売です。ロイヤルファミリー向けの特別仕様車。もちろん向こうからのオーダーがあったから特別仕様を入れたんです。今のタイミングで中東に評価されて入れるというのはものすごく大きな意味がある。

F:といいますと。

水:今後クルマの販売は、アメリカ・中国という大量消費型の文化圏と、中東・ヨーロッパ・日本の、省エネとエコロジーを軸にした恒久経済圏の二つに別れると思う。アメリカと中国なんてコーヒーは紙コップで飲めればいいやという使い捨ての文化。そういうアメリカ的な消費構造がもはや行き詰まって来ているのは、誰の目にも明らか・・・じゃないかもしれないけど、すくなくとも僕の目には明らかです。

F:えっ、でも、このビル(NTC:ニッサンテクニカルセンター)にも入っていますよね、(ピー)が。

水:そう。俺はそれが気に・・・あ、コレ書かないでね(笑)会社に叱られちゃうから(スミマセン水野さん……ついポロっと書いちゃいました……)。

F:それにしても、アメリカと中国を一緒にすると言うのは……。

水:消費に対するメンタリティは一緒です。

F:う〜む……。

「消費財」は米中で。「恒久財」は日・欧・中東で

水:だからGT-Rも販売の中心はヨーロッパに置いているわけです。スペックV(GT-Rのハイスペックバージョン:お値段1575万円!)は欧州とアラブには出すけどアメリカには輸出しない。必要ありませんから。

F:でも出したらそれなりに売れないですか。アメリカにも正式輸入される前から並行輸入で買っていたGT-Rマニアが結構いますから。

水:うん。でも売る気が無いんです。あのね、ヤマグチさんだから結構ホンネで言ってるんだぜ、俺。今までジャーナリストにはこういう話をしたことがないんだから(笑)。

F:大丈夫。僕はジャーナリストじゃありませんから(笑)。

水:それなら安心だ(笑)。じゃ、その理由を話しましょうか。今までの、使い捨てというか、従来の大量消費型のクルマね。例えば「6年たったら査定ゼロです」とか、「10年たったら廃車です」というスタイルの商品は、これからもアメリカと中国でどんどん生産・輸入されるでしょうね。でもGT-Rが目指している姿は“エンドレス”。消費財じゃなくて「恒久財」です。恒久財の市場は、となれば、やっぱり歴史のあるヨーロッパとアラブ圏でしょう。

F:アメリカ、中国じゃないんですか。

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著者プロフィール

フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチ 47歳です。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。


このコラムについて

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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