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故郷を捨てなかった人生の『みのたけの春』
~男子の本懐って何だろう

  • 浅沼 ヒロシ

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2009年10月14日(水)

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みのたけの春』 志水辰夫著、集英社、1800円(税抜き)

 浅田次郎原作、滝田洋二郎監督の「壬生義士伝」という映画をご存知だろうか。

 中井貴一主演で2003年に公開されたあとテレビ放映もされているので、ご覧になった方も多いと思う。

 幕末の京都動乱に飛び込んだ南部藩出身の下級武士が主人公である。

 物語の後半、傷ついた主人公吉村貫一郎(中井貴一)が盛岡藩の蔵屋敷に逃げ込んでくる場面で、蔵屋敷差配役を演じた三宅裕司は、藩に累がおよぶことを恐れてかつての親友に切腹を命じた。

 訳あって動乱に飛び込んだ本人もつらいが、国許の人間もまた辛い。立場は違えど時代の激流に流された男たちの悲劇を描ききった作品である。

 歴史小説の中で幕末ものの人気は高く、幕末の京に上って運命に翻弄された志士たちの物語は多い。「壬生義士伝」の吉村貫一郎しかり、司馬遼太郎の描く「人斬り以蔵」しかり。

 だが時代の風に逆らうように、敢えて京に上る道を選ばなかった者を描いた小説は少ない。強いて挙げれば、島崎藤村の「夜明け前」くらいのものである。

国許に残るという選択

 本書は国許に残った側から幕末の動乱を見据えた物語である。

 舞台は、京の都から30里離れた但馬地方。主人公の清吉は、但馬の中心地である貞岡から更に奥地に入った西山村という集落で病気がちの母と暮らしている郷土(下級武士)である。

 世の中は騒然としている。

〈江戸や京都から伝えられてくる昨今の話は、血なまぐさい、殺伐としたものばかりだった。政事という名のまつりごとに、だれもが目を吊りあげ、剣を握って参加しはじめたのだ。論議百出はよいとしても、論を戦わせてなお相手が承伏しないとみると、力ずくで取りのぞく性急な決着が当たり前になってしまった。天誅という名の、闇討ちの横行だ。他人の考えを認めようとしないこれほど偏狭な時代は、かつてなかったろうといわれるまでになったのだ〉

 片田舎の貞岡にも義挙の噂が伝わってくる。

 1863年8月、尊皇攘夷派浪士の天誅組が大和国の五条代官所を襲撃。それまでの幕領地を朝廷領にすると宣言する事件(天誅組の変)が起こる。

 この政変で京を追われた志士がいったん長州へ落ちのびたあと、今度は「生野の変」が発生する。〈長州に落ちのびたかれらが攘夷派公卿や家中の尊皇浪士と手を結び、捲土重来を期して京へ攻めあがろうとしたもの〉で、組織された農兵隊には貞岡出身者も加わっていた。

 貞岡には田舎に不似合いな学者がいて、三省庵という学問所を主催していた。佐久間象山と並び称された秀才との呼び声が高く、噂を聞きつけて遠く姫路城下からやってくる聴講生もいるほどの人物だ。

 主人公の清吉は、この三省庵に学ぶ物静かな青年である。

 周りが浮き足立っても、決して妄動したりしない。それは、〈自分を抑えられることが、自分の人となりだと信じていた。人になんと言われようと、これで通して行くつもり〉という性格的な理由もあったが、病気がちの母を一人で看病しなければならないという家庭の事情もあった。

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三品 和広 神戸大学教授