「著者に聞く」

『県庁おもてなし課』は高知を変えるか?

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2009年10月15日(木)

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 累計125万部を突破した『図書館戦争』シリーズ、自衛隊と未知の物体の接触を描いた自衛隊三部作(『塩の街』『空の中』「『海の底』)、『フリーター、家を買う。』『三匹のおっさん』『レインツリーの国』『阪急電車』などで知られる小説家、有川浩さん。社会性を帯びた独自のSF世界、「ベタ甘」な恋愛ストーリーを織り込んだ作風、弾むような軽快な筆致――。彼女の作品には、ページをめくるごとに引き込まれる魔力がある。

 その有川さん、9月1日から高知新聞などの地方紙で自身初の新聞連載を始めた(配信は高知新聞のほか、岩手日報、山梨日日新聞、南日本新聞)。タイトルは「県庁おもてなし課」。高知県庁に実在する「おもてなし課」を舞台に、高知県の観光売り出しに奔走する課員の姿を描いた作品だ。

 高知県出身の有川さんは「売れる作家の1人」と出版業界で評価されている売れっ子作家。その彼女がなぜ、地方県庁を舞台にした小説を描こうと考えたのか。今回の「県庁おもてなし課」の狙いや故郷にかける思いを、ネタバレにならない範囲で聞いた。

(聞き手 日経ビジネス オンライン、篠原匡)

―― 連載開始から1カ月以上がたちました。かなりの反響のようですね。

有川浩氏(写真:宮嶋康彦、以下同)
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有川 おかげさまで(笑)。9月半ばに、高知新聞社のロビーでサイン会を開かせていただいたんですけど、150人ほどの方が来てくださって。即売会で用意した300冊のサイン本もほぼ完売させていただきました。この時は県庁の職員の方も来てくださいましたね。「読んでいますよ」って。

―― 有川さんは過去に、図書館戦争シリーズや自衛隊三部作など、ミリタリー色の強いSF作品を世に出してきました。今回、なぜ高知県庁のおもてなし課をテーマに小説を書こうと思われたのか、その経緯を最初に教えていただけますか。

ギッタギタにしてあげる

有川 直接の出会いは、今から2年ほど前に、高知県の観光特使のご依頼を受けたことですね。この時に、おもてなし課の存在を知りました。

―― 存在を知った時はどう思われました?

有川 「おもてなし課」とは面白い名前だな、と。それで、私で役に立つのなら、という感じだったんですけど、観光特使の仕事の中身がよくわからなくて、「観光特使の仕事は何ですか」と聞いたんですよ。そうしたら、「観光特使の名刺を会った人ごとに渡してください」と担当の方がおっしゃって・・・。

 ただ、私、そんなに外を出歩く方でもないですし、一人ひとり名刺を配っても大して効果が上がらない気がして。そこで「高知県を広報するのであれば、私はこういう仕事をしていますので、おもてなし課のあなた方をネタに小説を書くということが一番協力できることだと思いますが、いかがでしょうか。その代わり、あなた方のことをギタギタにしますよ」と申し上げたところ、「望むところです」とおっしゃるので、「じゃあ、やらせていただきましょう」と。

 その後、小説を書き始めたということを出版社に言ったら、地方新聞でやってみませんか、という話になり、地方新聞に新聞連載を配信している会社さんに連絡を取ってくれて、今回、高知新聞さんや山梨日日新聞さん、岩手日報さん、続いて南日本新聞さんとお仕事をさせていただけることになりました。

 やっぱり新聞連載は老若男女誰もが見ますから。自分にとっても読者層を広げるいい機会になりますし、面白い場をいただいたなと思っています。

―― 現在進行中の小説では、県庁の民間感覚のなさをこれでもか、という具合に書いていらっしゃいます。観光特使の依頼の時もそんな感じだったんですか。

有川 かなり立ち回りが遅いというか、世間一般の時間感覚や機微、間合いがわかっていない感じでしたね。吉門と掛水のやりとりとして小説でもそのまま書いていますが、観光特使の依頼があってから1カ月、まったく連絡がありませんでした。

 普通、1カ月も音沙汰がなければ、あの話は流れたのかな、ということになりますよね。ちょうどこの頃、新聞や雑誌の取材が立て込んでいて、観光特使の名刺があれば、だいぶ広報もできたのに(笑)。

 やりとりをしていたのは2年ほど前ですが、正直なところ、おもてなし課さんと話していてイライラした部分はありました。ただ、イライラしつつも、その片方で、「作家として」と言ったらちょっと口幅ったいですけど、このゴタゴタは物語にしたらだいぶ面白くなると思いまして。

―― それが、小説のはじめのところに現れた、というわけですね。

有川 そうですね。

―― 高知県は有川さんの生まれ故郷。観光特使を受けるに当たって、せっかくいい資源があるのに、それを観光に活かすことができていない高知県に対するじれったさのようなものもあったのでしょうか。

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著者プロフィール

篠原 匡(しのはら・ただし)

昭和50年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、日経BP社に入社。以後、主に「日経ビジネス」の記者として活動している。趣味は競艇と出張、庭いじり。著書に『腹八分の資本主義』(新潮社)、『おまんのモノサシ持ちや』(日本経済新聞出版社)がある。

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