「毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド」

50. あなたは「世界に一つだけの花」主義者ですか?

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2009年10月21日(水)

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 日直のチノボーシカです。

 今年の小説出版界は、発行部数を見れば村上春樹ひとり勝ちのようなありさまだ。ただ新作がベストセラーであるだけでなく、内外の文芸ジャーナリズムがこの作家を「大家」として遇していることはわかる。

ランボー全詩集』ランボー 著、宇佐美斉 翻訳、ちくま文庫、1155円(税込)

 しかしそのいっぽうで、文学の歴史には、現役文学者として活躍中はそれほど話題にならなかった書き手が、引退後もしくは死後に株が急上昇し、大文学者として祀り上げられた、というケースも多い。『地獄の季節』(『ランボー全詩集』所収)の著者で、若くして詩作の筆を折ったフランスの詩人ランボーは典型的な例だ。

 日本では宮澤賢治がこの枠。いまでこそなかば神格化されているが、生前は詩集一冊と童話集一冊を出した、ちょっと変わった地方文学者、くらいの位置づけだったようだ。

 こういうばあい、よく言われるのが、

「宮澤賢治は生まれるのが早すぎた」

といったようなこと。あるいは、

「作家の同時代人の目は流行によって眩まされているが、歴史によってノイズが洗い流され、後世の人間には『真価』が見える」

などといったことを言う人も多い。

 ほんとうにそうなのだろうか?

*   *   *

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著者プロフィール

千野 帽子(ちの ぼうし)

パリ第4大学博士課程修了。京都在住の勤め人・俳人。2004年より休日のみ文筆業。著書に、「東京新聞」連載をまとめた『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』(河出書房新社)、「野性時代」連載をまとめた『読まず嫌い。』(角川書店)、読書漫筆集『文學少女の友』(青土社)。「ミステリマガジン」「ジャーロ」にて連載、また「東京新聞」「讀賣新聞」「SPUR」「Figaro japon」「BRUTUS」「HanakoWEST」「yomyom」「週刊文春」「文藝」「文學界」「すばる」「ユリイカ」「真夜中」「小説トリッパー」「早稲田文学」「ダ・ヴィンチ」「週刊読書人」「別冊宝島」などに寄稿。



このコラムについて

毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド

この連載は、「働く大人」の読者の疲れを癒し、リフレッシュして勤労意欲を高めるのに向いた文学作品のガイド、では断じてない。そうではなく、こちらが文学の世界に単身潜入して、大人の読者に向けてレポートするものである。ここで取り上げるのは、働くということにまつわる、個別の奇妙さ、ヘンテコさ、そこから立ち上がってくる疑問をうじうじと、ひとつひとつ拾っていく、そんな文学や漫画。私たちが毎日そんなことをしていれば、仕事が立ち行かなくなるから、代りに文学がそれをやってくれている。腸内細菌のようなものだが、腸内細菌と違って、なにかの役に立つという保証がないのが文学だったり漫画だったりするのである。そういうものを紹介する連載だ。だから、仕事中にこっそり読んでほしい。

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