「毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド」

51. コマーシャリズムと私の好み、ほんとうに無関係?

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2009年10月28日(水)

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 日直のチノボーシカです。

 前回、「俺か世間か」問題について書いた。前回の更新のあと、知人から電話がかかってきた。仮にその名を某氏とする。

奴「帽子か」

私「おう、某氏か」

奴「NBOnlineのお前の連載の、今回の更新な」

私「うん」

奴「大事な要素が欠けてるぞ」

私「なんだ」

奴「商業主義、という要素だ。作品の評価や人気に、商業主義とかそういう、社会の外的条件がかかわってくるケースが、けっこう多いだろ」

 私はどっと疲れて、いつもの上から目線で某氏に言った。

私「当たり前の話だと思ったから、書かなかっただけなんだけど。社会の外的条件が関与しない作品評価なんて、あると思ってんの?」

*   *   *

 「俺か世間か」問題とは、なんとなく発言力を持ってそうな他人(「世間」「流行」「権威筋」「通」など)と「俺個人」とが、特定のコンテンツ(なんでもいいが、この連載のばあい、おもに文学作品)の好悪・評価で割れてしまうという、日常茶飯の問題である。

こゝろ』夏目漱石 著、角川文庫、340円(税込)

 当然だが、「俺か世間か」問題が発生するたびに、「なんとなく発言力を持ってそうな他人」がナニモノであるかは、変化する。

 あなたが、

「国語の授業で『こゝろ』を読んだら、辛気臭いわ後味悪いわ、もう勘弁してほしかった」

という記憶をお持ちなら、「なんとなく発言力を持ってそうな他人」とは「教科書」「学習指導要領」などだ。

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著者プロフィール

千野 帽子(ちの ぼうし)

パリ第4大学博士課程修了。京都在住の勤め人・俳人。2004年より休日のみ文筆業。著書に、「東京新聞」連載をまとめた『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』(河出書房新社)、「野性時代」連載をまとめた『読まず嫌い。』(角川書店)、読書漫筆集『文學少女の友』(青土社)。「ミステリマガジン」「ジャーロ」にて連載、また「東京新聞」「讀賣新聞」「SPUR」「Figaro japon」「BRUTUS」「HanakoWEST」「yomyom」「週刊文春」「文藝」「文學界」「すばる」「ユリイカ」「真夜中」「小説トリッパー」「早稲田文学」「ダ・ヴィンチ」「週刊読書人」「別冊宝島」などに寄稿。



このコラムについて

毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド

この連載は、「働く大人」の読者の疲れを癒し、リフレッシュして勤労意欲を高めるのに向いた文学作品のガイド、では断じてない。そうではなく、こちらが文学の世界に単身潜入して、大人の読者に向けてレポートするものである。ここで取り上げるのは、働くということにまつわる、個別の奇妙さ、ヘンテコさ、そこから立ち上がってくる疑問をうじうじと、ひとつひとつ拾っていく、そんな文学や漫画。私たちが毎日そんなことをしていれば、仕事が立ち行かなくなるから、代りに文学がそれをやってくれている。腸内細菌のようなものだが、腸内細菌と違って、なにかの役に立つという保証がないのが文学だったり漫画だったりするのである。そういうものを紹介する連載だ。だから、仕事中にこっそり読んでほしい。

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