「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明」

シューカツは是非、上から目線で

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2009年11月2日(月)

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 花巻東高校のエースピッチャー、菊池雄星君は、埼玉西武ライオンズがドラフト一位指名することになった。

 めでたい。

 ん? ライオンズファンなのか、と?
 違います。

 ライオンズは好きな球団のひとつではあるが、特段に心をこめて応援しているわけではない。

 というよりも、私はプロ野球に関して、特定のチームのファンであるみたいな見方はしていない。ずっと以前、阪神タイガースが江夏&田淵を廃棄して以来、特定球団を応援することからは撤退したのだ。

 もっとも、江川投手がジャイアンツで投げていた当時は、中六日ぐらいのローテーションで巨人ファンをやっていた。が、そのわかりにくい立場も、あの投手の不可解な引退を機に放棄した。冗談ではない。なーにが禁断のツボだか。

 現在は、だから、どこのチームに対しても特別な感情は抱いていない。
 それとは別に、私は、パ・リーグを応援している。リーグとして、だ。

 で、ドラフト会議では、毎年、有望選手の指名権をパシフィック・リーグの球団が獲得することを願っている。それも、かなり強烈に、だ。

 なぜなのかは、自分でもよくわからない。
 おそらく、バランスを取ろうとする気持ちが働いているのだと思う。

 バランスといっても、私自身のバランスではない。リーグのバランス。球界のバランスである。

 なぜ、一観戦者であるオダジマが、「日本プロ野球界の健全な発展」みたいなことに心を砕かなければならないのか。それは謎だ。でも、私は、もはやそういう見方でしか野球を見ることができない。

 つまり、「もっとパ・リーグを盛り上げないといけない」と、私は、コミッショナーみたいな立場で野球を見ているのである。

 偉そうな態度であると言われればその通り。
 尊大な視点だ。
 が、私は、いつの頃からなのか、野球に対して、上からモノを見る視線で観察するようになってしまっているのだ。これは自分でもどうしようもない。

 だから、この10年ほど、注目選手のほとんど全員がパリーグに来ていることには、若干責任を感じている。
 私の念力がそうさせているとまでは言わない。が、ともあれ、結果は、私が願望した通りになっている。で、ちょっと身のひきしまる思いがするのですね。天地創造を終えて一服入れている神様みたいな感じで。なんとも偉そうなことに。

 個々の選手についてはともかく、チームに関しては、個人的な感情で応援するような勝手なことはしない。
 そういう段階はすでに卒業している……と自分ではそう思っている。
 したがって、今年のクライマックスシリーズでは、私は、不本意ながら、巨人軍に肩入れしていた。

「今年の状況を鑑みるに、巨人が勝たないと球界のために良くない」

 と、そう思ったからだ。
 情状的には、中日の方が好きだし、落合監督には個人的な強いシンパシーを感じている。なのに、それでも私は巨人軍の勝利を期待していたのである。なんという不思議な、そして、なんと偉そうな観戦態度。

 偉そうと言えば、サッカーについてもそうだ。私はほとんどJFA会長の視点でピッチを概観している。

 ただ一点、浦和レッズのゲームだけは、浦和サポとして応援させてもらっているのだが、この件に関しては、「不公平で申し訳ない」という気持ちを抱いている。何様なんだ? オレは。
 
 自分ながら不可解なのは、ナビスコカップの実施状況についてのダブルスタンダードだ。
 私は、自分が何を言っているのかよくわからなくなる時がある。

 ついでに一言。
 当コラムについて、「何を言いたいのかよくわからない」というご意見を毎回いただくのだが、実は、私自身、自分が何を言いたいのかよくわからずに書いているケースが時々ある。

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著者プロフィール

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

小田嶋 隆

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、小学校事務員見習い、ラジオ局ADなどを経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。近著に『人はなぜ学歴にこだわるのか』(光文社知恵の森文庫)、『イン・ヒズ・オウン・サイト』(朝日新聞社)、『9条どうでしょう』(共著、毎日新聞社)、『テレビ標本箱』(中公新書ラクレ)、『サッカーの上の雲』(駒草出版)『1984年のビーンボール』(駒草出版)などがある。 ミシマ社のウェブサイトで「小田嶋隆のコラム道」も連載開始。



このコラムについて

小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明

「ピース・オブ・ケイク(a piece of cake)」は、英語のイディオムで、「ケーキの一片」、転じて「たやすいこと」「取るに足らない出来事」「チョロい仕事」ぐらいを意味している(らしい)。当欄は、世間に転がっている言葉を拾い上げて、かぶりつく試みだ。ケーキを食べるみたいに無思慮に、だ。で、咀嚼嚥下消化排泄のうえ栄養になれば上出来、食中毒で倒れるのも、まあ人生の勉強、と、基本的には前のめりの姿勢で臨む所存です。よろしくお願いします。

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