(前回「試乗編」から読む)
“飛ぶ鳥を落とす勢い”というのは、きっとこういうことを言うのでしょう。
今年の5月18日にトヨタが満を持してリリースした3代目プリウス。発売以来半年近くが経過した今もなお、トヨタのレコードを週毎に塗り替える疾風怒濤の販売実績を叩き出しています。そして「受賞車は売れない」なる不名誉な噂すら囁かれる日本カー・オブ・ザ・イヤーも、行きがけの駄賃よろしくサクっと受賞、余裕の笑顔で嫌なジンクスを覆してしまいました。まさに“向かうところ敵無し”の状態であります。
今回の「走りながら考える」は、そんな時代の寵児プリウスの開発責任者、大塚明彦氏にお話を伺います。
名実共に“日本一”のクルマを開発された大塚氏とはどんな方なのか。氏は何を考え、何を目指してプリウスを作ったのか。プリウスの開発は、ある意味でトヨタの将来をも左右しかねない、企業にとっても非常に重要なミッションです。このクルマを水晶玉に見立ててトヨタの未来を見ることもできる。トヨタの社運を任されるような人なのだもの、きっとガチガチの堅物で冗談の通じ無いタイプ。キッチリと分けた7:3頭に黒縁メガネをかけ、その奥には妥協を許さない冷ややかなカイゼンの目が光る。ネクタイの結び目はデカく、Yシャツの下にはランニングとかも着ていそう……。私は大塚氏にお目に掛かるまで、勝手にこんなイメージを抱いていました。冗談が通じないとやりにくいよなぁ……。しかし、そんな心配は杞憂に過ぎませんでした。
「いや〜、どうもどうも」。こう言って会議室に入ってきた大塚氏は、明るく楽しく皆様と同じようにフツーにクルマが大好きな方だったのです。プリウス大塚氏のロングインタビュー。とくとご覧あれ。
* * *
実際のインタビューの進み方とは前後してしまうのだが、大塚氏の“人となり”を御理解いただくために、まずは氏がどんなクルマを乗り継いで来られたか、をご紹介しよう。
フェルディナント(以下F):ところで大塚さんは、いまどんなクルマに乗っていらっしゃるんですか?
大塚(以下大):え……あぁ、私はアルファです。はい。
F:ああ、アルファード。ミニバンですか。
大:そうじゃなくて、アルファロメオ……。
「アルファ」はアルファードじゃなくてミラノのほうだった
F:えぇ? ヨソの会社、イタリアはミラノ産のクルマ。いいんですかそんなことして。
大:大丈夫です。ウチは結構ガイシャ乗りが多いですよ。
F:意外だなぁ……。プリウス工場出荷壱号車にでも乗っておられるのかと思った。

大:いや、もちろんプリウスは買いますよ。自分の会社生活の記念でもあるし。でもお客様をうんとお待たせしているのに、社員が先に乗っちゃマズいでしょう。カスタマーファーストです。これは私だけでなく、全社員の間で徹底していることです。
F:でも相当待つことになるわけですよね。
大:ええ。自分が開発に携わったクルマで愛着がありますし。やはり一番いいと思っているので、もうほかのトヨタ車は買わんだろうなというくらいの気持ちです(笑)。
F:(うわ、何やこのヒト・・・)大塚さんは過去にどんなクルマを?
大:入社して一年くらいして、セリカを買いました。
F:大塚さんの年回りからすると、ホイチョイの感動巨編映画、「私をスキーに連れてって」に出てきたヤツですね。ゲレンデの中でも平気でバキバキ走るクルマ(笑)
大:そうですそうです(笑)。あの映画に出てきたモデルです。もちろん新入社員でお金なんか無いから、GT-FOURじゃない普通のやつ。しかもなぜかオートマを。やっぱりセリカにはオートマってあまり合わなくて1年半で売っちゃって、次に買ったのが、BMWの320i。これはマニュアル車を買いました。当時この形だけ正規輸入でマニュアルがあったんです。とても気に入っていたのですけど、何年かしてヨーロッパへ転勤になったので、泣く泣く後輩にそれを売って、帰国したらまたそいつから買い戻して、トータルで10何年も乗りました。ありゃ良いクルマだった。
F:お好きですねぇ。
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