「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

2009年11月6日(金)

プリウスのお値段はこうして決まった

第17回:トヨタ プリウス【開発者編】その1

1/5ページ

印刷ページ

(前回「試乗編」から読む)

 “飛ぶ鳥を落とす勢い”というのは、きっとこういうことを言うのでしょう。

 今年の5月18日にトヨタが満を持してリリースした3代目プリウス。発売以来半年近くが経過した今もなお、トヨタのレコードを週毎に塗り替える疾風怒濤の販売実績を叩き出しています。そして「受賞車は売れない」なる不名誉な噂すら囁かれる日本カー・オブ・ザ・イヤーも、行きがけの駄賃よろしくサクっと受賞、余裕の笑顔で嫌なジンクスを覆してしまいました。まさに“向かうところ敵無し”の状態であります。

画像のクリックで拡大表示

 今回の「走りながら考える」は、そんな時代の寵児プリウスの開発責任者、大塚明彦氏にお話を伺います。

 名実共に“日本一”のクルマを開発された大塚氏とはどんな方なのか。氏は何を考え、何を目指してプリウスを作ったのか。プリウスの開発は、ある意味でトヨタの将来をも左右しかねない、企業にとっても非常に重要なミッションです。このクルマを水晶玉に見立ててトヨタの未来を見ることもできる。トヨタの社運を任されるような人なのだもの、きっとガチガチの堅物で冗談の通じ無いタイプ。キッチリと分けた7:3頭に黒縁メガネをかけ、その奥には妥協を許さない冷ややかなカイゼンの目が光る。ネクタイの結び目はデカく、Yシャツの下にはランニングとかも着ていそう……。私は大塚氏にお目に掛かるまで、勝手にこんなイメージを抱いていました。冗談が通じないとやりにくいよなぁ……。しかし、そんな心配は杞憂に過ぎませんでした。

 「いや〜、どうもどうも」。こう言って会議室に入ってきた大塚氏は、明るく楽しく皆様と同じようにフツーにクルマが大好きな方だったのです。プリウス大塚氏のロングインタビュー。とくとご覧あれ。

*   *   *

 実際のインタビューの進み方とは前後してしまうのだが、大塚氏の“人となり”を御理解いただくために、まずは氏がどんなクルマを乗り継いで来られたか、をご紹介しよう。

フェルディナント(以下F):ところで大塚さんは、いまどんなクルマに乗っていらっしゃるんですか?

大塚(以下大):え……あぁ、私はアルファです。はい。

F:ああ、アルファード。ミニバンですか。

大:そうじゃなくて、アルファロメオ……。

「アルファ」はアルファードじゃなくてミラノのほうだった

F:えぇ? ヨソの会社、イタリアはミラノ産のクルマ。いいんですかそんなことして。

大:大丈夫です。ウチは結構ガイシャ乗りが多いですよ。

F:意外だなぁ……。プリウス工場出荷壱号車にでも乗っておられるのかと思った。

大塚明彦氏(写真:大槻 純一)

大:いや、もちろんプリウスは買いますよ。自分の会社生活の記念でもあるし。でもお客様をうんとお待たせしているのに、社員が先に乗っちゃマズいでしょう。カスタマーファーストです。これは私だけでなく、全社員の間で徹底していることです。

F:でも相当待つことになるわけですよね。

大:ええ。自分が開発に携わったクルマで愛着がありますし。やはり一番いいと思っているので、もうほかのトヨタ車は買わんだろうなというくらいの気持ちです(笑)。

F:(うわ、何やこのヒト・・・)大塚さんは過去にどんなクルマを?

大:入社して一年くらいして、セリカを買いました。

F:大塚さんの年回りからすると、ホイチョイの感動巨編映画、「私をスキーに連れてって」に出てきたヤツですね。ゲレンデの中でも平気でバキバキ走るクルマ(笑)

大:そうですそうです(笑)。あの映画に出てきたモデルです。もちろん新入社員でお金なんか無いから、GT-FOURじゃない普通のやつ。しかもなぜかオートマを。やっぱりセリカにはオートマってあまり合わなくて1年半で売っちゃって、次に買ったのが、BMWの320i。これはマニュアル車を買いました。当時この形だけ正規輸入でマニュアルがあったんです。とても気に入っていたのですけど、何年かしてヨーロッパへ転勤になったので、泣く泣く後輩にそれを売って、帰国したらまたそいつから買い戻して、トータルで10何年も乗りました。ありゃ良いクルマだった。

F:お好きですねぇ。

次ページ以降は「日経ビジネスオンライン会員」(無料)の方および「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみお読みいただけます。ご登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。






Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)


Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント16 件(コメントを読む)
トラックバック

こちらで記事について議論しています

著者プロフィール

フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチ 47歳です。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。


このコラムについて

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

⇒ 記事一覧

ページトップへ日経ビジネスオンライントップページへ

記事を探す

  • 全文検索
  • コラム名で探す
  • 記事タイトルで探す

編集部よりお知らせ

日経ビジネスからのご案内