「毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド」

52. 「おもしろいこと」の大半を知らないまま死んでいくことに、少しは焦ろう。

バックナンバー

2009年11月11日(水)

1/4ページ

印刷ページ

 日直のチノボーシカです。

 先週はお休みしちゃってごめんなさい。この連載を始めて1年と1か月、初のお休みをいただくことにした。本業がちょっと忙しくて…なんて言い訳するほうがみっともなかったですね。

*   *   *

 私は今年の9月、生まれて初めて馬という生き物に乗った。長野県は飯田にある乗馬クラブでのことだ。

 元来私は、なにごとにつけても億劫がりで引っ込み思案である。なにか新しいことを始めるにさいして心理的障壁の高い、頭の硬い人間である。要するに無趣味な人間である。

 しかもスポーツ。私は人生でいちばんハマったスポーツが水泳というインドア人だから、ますます気が乗らなかった。

 だから、周囲の乗馬経験者から「乗馬って楽しいから、きみもやったらいいのに」と言われても、「いや、めんどくさいし、だいいち奴らは自転車やバイクと違って自分の意志を持ってるから怖いし」などといって、さんざん逃げてきたのである。

 それがどういう風の吹き回しで馬に乗ってみる気になったのかは、いまとなってはまったく思い出せないのだが、とにかく乗ってみてよかった、といまは思っている。

密やかな教育 〈やおい・ボーイズラブ〉前史』石田美紀 著、洛北出版、2730円(税込)

 去年は、『密やかな教育 〈やおい・ボーイズラブ〉前史』(洛北出版)の著者で映画研究者の石田美紀さんの案内で、生まれて初めて宝塚歌劇団の公演を観に行き、『マリポーサの花』に出ていた音月桂さんという男役に一瞬ハマりそうなった。

 だいたい私は俳句だって、何度も勧められて逃げ回った末にハマったし、あと、私のカラオケ好きを知っている友人はこれを言うと一様に意外な顔をするが、カラオケだって嫌いな時期が長かった。学生時代の趣味だったバンドだって芝居だってきっかけは、手が足りないから手伝えと言われて渋々始めたようなものだ。

 フットワークの重さではクルーザー級だ。『読まず嫌い。』という題の本を出しているのも伊達ではない。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)、「日経ビジネス購読者限定サービス」の会員の方のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


関連記事

Keyword(クリックするとそのキーワードで記事検索をします)

Feedback

  • コメントする
  • 皆様の評価を見る
内容は…
この記事は…
コメント6 件(コメントを読む)
トラックバック
著者プロフィール

千野 帽子(ちの ぼうし)

パリ第4大学博士課程修了。京都在住の勤め人・俳人。2004年より休日のみ文筆業。著書に、「東京新聞」連載をまとめた『文藝ガーリッシュ 素敵な本に選ばれたくて。』『世界小娘文學全集 文藝ガーリッシュ舶来篇』(河出書房新社)、「野性時代」連載をまとめた『読まず嫌い。』(角川書店)、読書漫筆集『文學少女の友』(青土社)。「ミステリマガジン」「ジャーロ」にて連載、また「東京新聞」「讀賣新聞」「SPUR」「Figaro japon」「BRUTUS」「HanakoWEST」「yomyom」「週刊文春」「文藝」「文學界」「すばる」「ユリイカ」「真夜中」「小説トリッパー」「早稲田文学」「ダ・ヴィンチ」「週刊読書人」「別冊宝島」などに寄稿。



このコラムについて

毎日が日直。「働く大人」の文学ガイド

この連載は、「働く大人」の読者の疲れを癒し、リフレッシュして勤労意欲を高めるのに向いた文学作品のガイド、では断じてない。そうではなく、こちらが文学の世界に単身潜入して、大人の読者に向けてレポートするものである。ここで取り上げるのは、働くということにまつわる、個別の奇妙さ、ヘンテコさ、そこから立ち上がってくる疑問をうじうじと、ひとつひとつ拾っていく、そんな文学や漫画。私たちが毎日そんなことをしていれば、仕事が立ち行かなくなるから、代りに文学がそれをやってくれている。腸内細菌のようなものだが、腸内細菌と違って、なにかの役に立つという保証がないのが文学だったり漫画だったりするのである。そういうものを紹介する連載だ。だから、仕事中にこっそり読んでほしい。

⇒ 記事一覧

記事を探す

読みましたか〜読者注目の記事

  • いま、歩き出す未来への道 復興ニッポン