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蓮舫議員と語り合いたい「もったいない」の意味

2009年11月16日(月)

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 「事業仕分け」の映像は、なんだかものすごい。

 ニュース番組の編集方針が、印象的な場面を連続再生する形式を踏んでいるということもあるのだろうが、それにしても強烈だ。

 特に、各局のニュース番組が繰り返し紹介していたカット(蓮舫議員が「国立女性教育会館」の理事長さんを問い詰める一幕)は、アメリカの法廷ドラマ(←ただし低予算)みたいだった。

 が、その場面を活字で再現しようとすると、うまくいかない。 
 
「民間の利用はありますか?」
「あります」
「稼働率は?」
「私の話も聞いてください。一方的にただ質問に答えろというのは心外です」

 ……と、文字にしてしまうとこれだけになる。
 迫力を欠いている。
 なんだか牧歌的なやりとりであるようにさえ読める。
 
 というのも、私がテレビの録画から聞き取ったこの字面からは、あのやりとりのエッセンスがほとんどすべて抜け落ちてしまっているからだ。

 具体的に、映像の言葉とテキストの文字では、どこが違っているのだろうか。
 以下、テキスト化できなかった要素を具体的に列挙してみる。

1. 蓮舫議員の声の「張り」:あのトーンは「ひざまずいて私の靴をお舐め!」の声だ。ああいう声の人間に問い詰められると、普通の人間はそれだけで心が折れる。新入社員の3割ぐらいは、たぶん泣く。

2. 対話の間:「あります」の語尾がまだ発声し終わらないうちに、「稼働率は?」と、次の質問が畳みかけられている。このおっかぶせるタイミングでの問いかけは、質問者が回答者の返答を聴いていないことを意味している。つまり、両者のやりとりは「対話」であるよりは「尋問」であり、それ以前にいじめに近いということだ。あるいは、この事業仕分けというイベントの主旨は一種の公開処刑であるのかもしれない。

3. 発言後の蓮舫議員の表情:関西の人たちが言う、いわゆる「どや顔」だと思う。「どうだ。恐れ入ったか?」というキメの表情。たとえば、印籠を出す時の格さんの表情。遠山金四郎の桜吹雪一件落着顔。土下座で受け止めるほかに対応のしようがない。歌舞伎の大見得にも通じる一種の勝利宣言なのだと思う。

4. 仕草:蓮舫議員は、ボディーアクションの大きい語り手でもある。左右対称に動くことの多い両手と、左右に回転する首は、着ぐるみの中の役者の演技に似ている。「猿の惑星」のコーネリアスの会話法がまさにそれだった。手話というより体話。言葉を後押しする肉体言語。これらのアクションは、議員の言葉に言語化不能なニュアンスを付加している。

5. 歯:ツブの揃った過剰に白い歯並び。差し歯であろうか。谷崎潤一郎が「陰翳礼賛」の中で「便所のタイルみたいな」と形容した、一点のカゲリもないアメリカンビューティーのこれ見よがしの歯。口ごもることを嫌い、言いよどむことを恥辱と考える人々による、正面からの直言。その舌鋒を支える城壁としての前歯。

 こういう対象を目の前にすると、つくづく活字の無力を思い知らされる。
 あの蓮舫議員のたたずまいは、絶対に文字では伝わらない。「筆舌に尽くしがたい」というやつだ。ペンには舌があるばかり。歯もなければ唾も飛ばない。舐めることはできても咀嚼はできない。唾棄も。

 とはいえ、事業仕分けの狙いは非常にはっきりしている。
 不必要な事業を仕分けして、それらを縮小・廃止する。
 でもって、無駄な出費を抑え、不要な作業を駆逐し、蛇足を切除し、トマソンの首を切り、屋上屋を爆破する。
 
 素晴らしい。
 個人的には、大賛成だ。
 

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「蓮舫議員と語り合いたい「もったいない」の意味」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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松﨑 曉 良品計画社長