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弱者をアレするには、目印が必要ですよね

2009年11月30日(月)

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 自民党の谷垣禎一総裁の実務復帰は、ほとんどまったくニュースにならなかった。

 もしかしてこれは、「武士のなさけ」というやつで、ご本人にとって恥に属するなりゆきは、あまり大々的に報じないということなのであろうか。

 いや、メディアの人間にそんな温情が宿っているとは思えない。

 谷垣氏関連の報道量が少ないのは、単に記者が興味を抱いていないからだ。

 というよりも、より端的に申し上げるなら、新聞およびテレビの中の人たちは、谷垣さんには需要が無いと判断したのだ。ニュースバリューが無い、と。自民党の総裁なのに。

 むごい話だ。

 世間は相変わらず「仕分け」に夢中だ。仕込んで仕掛けて仕切って仕組めば仕事が仕上がって仕合わせだ、と、仕手の側の人々は、嬉々として作業を遂行している。やられる側にとって仕打ち、ないしは仕置きである同じ作業を、だ。あるいは、われわれは自民党と官僚たち、いわゆる親方日の丸が、かつてわれわれ弱者に対してなしたことへの、復讐をしているのかもしれない。

 谷垣さんの件については、復帰以前に、彼が休養するに至った事情自体、あまり大きな記事になっていない。
 黙殺。
 存在の耐え難い軽さ。
 野に下るということの意味を、自民党の関係者はあらためてかみしめていることだろう。
 野ざらしを心に風のしむ身かな 芭蕉。こんな感じだろうか。

 個人的には、谷垣さんには頑張ってほしいと思っている。
 なぜというに、彼は、自転車族という、どこからどう見てもカネもチカラもない圧力団体の利益代表をつとめてくれている奇特な政治家だからだ。まあ、利権はゼロでもイメージアップにはなるという計算があるのかもしれないが。

 念のために経緯を振り返っておく。
 記事は産経新聞に載ったものが一番詳しかった。以下、引用する。

《自民党の谷垣禎一総裁(64)が15日、サイクリング中に転倒し、顔を数針縫うけがを負った。谷垣氏は政界屈指の自転車愛好者。総裁就任後の選挙応援や地方行脚でも、自転車にまたがり支持を訴えていたが、今回は得意種目で思わぬつまずきを見せた格好だ。
 党本部によると、同日午前9時20分ごろ、東京都昭島市拝島の多摩川遊歩道で、自転車に乗っていた谷垣氏が、対向してきた自転車の男性と接触した。相手の男性にはけがはなかったという。(後略)》

 意外だったのは、事故の現場とされている多摩川沿いの道路が「遊歩道」と表記されていたことだ。

「遊歩道? 多摩川サイクリングロードじゃないのか?」

 私はそう思っていた。あの道は「多摩サイ」である、と。自転車愛好家は誰もがそう呼んでおり、関連ブログでも「多摩サイ」と表記するのが通例となっているからだ。というよりも、正直に申し上げて、私は「多摩サイ」以外の呼び方があることを知らなかった。

 が、調べてみると「多摩サイ」は俗称で、あれは公式には「サイクリングロード」ではない。

 多摩川沿いのあの道路は、いくつかの自治体をまたがっており、その主体ごとに扱いが微妙に違っている。いずれにしても、公式な形で「サイクリングロード」と定義している自治体は無い。

 なんということだろう。
 さらに検索してみると、ここはどうも地雷だったようで、面倒な議論が沸騰している。

「遊歩道なんだから自転車は遠慮しろよ」
「っていうか、一列横隊で自転車と走っているジョガーとかあり得ないわけだが」
「道のセンターを走るランナーは、前のめりで死にたいのだろうか」
「後ろ歩き健康法の人たちってどうしてバックミラーつけてないわけ? バカなの? 死ぬの?」
「5メートルのロングリードで犬連れてるヤツとか信じられない」
「しかも犬同士ワンワン言わせて笑ってるし」
「とにかく自転車が減速するのが前提。夜間全速走行のロード乗りとか、殺人未遂だぞ」

 荒れている。
 嫌煙VS喫煙、原発推進VS反原発ほどではないが、それでも、一見して二度と近づきたくないと思える程度には荒んだ空気を醸している。冗談じゃない。こんな議論にまきこまれてたまるものか。

 自転車乗りと河川敷野球人の対立もなかなか根深い。

「試合中だからと立て札を立てて、道路を封鎖している野球チームがあります。信じられません」
「しかも用具運搬を理由に自動車を乗り入れてるし」
「野球豚はどうしてあんなにわがもの顔なんだ?」
「一方、外野を疾走する自転車が邪魔なのも事実」
「あんなものが走ってたんじゃ、ファールボールも追えない。ってことは、試合にならない。だから封鎖する。当然じゃないか」
「河川敷道路はグラウンドの一部じゃないぞ」
「逆だよ。河川敷の道路はグラウンドや草っ原やバーベキュー場にアプローチするための導入路なのであって、元来自転車が疾走するための移動用の道路ではない」
「第一バイクが乗り入れ禁止になっている時点で、高速走行が歓迎されてないことぐらいは悟るべき」

 調べれば調べるほど問題が出て来る。とてもじゃないが整理しきれない。
 かように、自転車の周辺には交通をめぐる様々な問題が集約されている。

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「弱者をアレするには、目印が必要ですよね」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師