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地下鉄の中で気がついた。『コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』
~哀しみにさえ人は救われ癒される

  • 澁川 祐子

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2009年12月2日(水)

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コスモスの影にはいつも誰かが隠れている』 藤原新也著、東京書籍、1600円(税抜き)

 初夏に一通の手紙が届いた。差出人は中高時代の友人。彼女とはもう10年近く会っていない。この10年というもの彼女は病を患い、住んでいる町からほとんど出ていない。会わなくなってからも細々と年賀状のやりとりだけは続いていたが、それもここ数年は途絶えてしまっていた。

 手紙には「確か誕生日だったよね」と書いてあった。アタリだ。よく覚えていたなあ。私は深夜の台所でひとり、昔と変わらぬ彼女の筆跡をみつめながら胸の奥がぐうっと熱くなるのを感じた。

 人生を語るには、まだ早すぎる。それでも10代や20代の頃には考えつきもしなかった「時の流れ」を感じることがある。時の流れは、ときどき澱んでは記憶の底に埋もれていた人物や出来事をふっとよみがえらせたり、思わぬ方向にそれては予期せぬ出会いをもたらしたりする。

藤原新也が「普通」を描いた理由

 本書は、そんな人と人との邂逅と別れ――たとえ一瞬であっても、頭の片隅にこびりついて離れない記憶の欠片を編んだものだ。地下鉄に置かれるフリーペーパー『メトロミニッツ』で6年にわたって続けられた連載71編のうち、厳選された13編と新たに加えられた1編が収められている。

 著者は、あとがきに〈私の長い人生の中で出会った出来事や普通の人々の物語を書いた〉と語り、「普通」をことさらに強調している。

 1972年、写真と文章による『インド放浪』でデビュー。その後も世界各地を巡りながら、写真家、作家、画家として世の中を鋭く切り取ってきた。社会の枠組みに縛られず自由に生きてきた著者に対して、読者の大半は毎日地下鉄に揺られて通勤する、ごく「普通」の勤め人たちだ。そんな顔の見えない不特定多数に向け、何を書くべきか迷い続けていたと著者は吐露する。

 「普通の人々」を描こうと決めたのは、本書にも収録されている「カハタレバナ」を書いたことがきっかけだった。連載を始めてから2年以上も経って書かれたこの物語は、著者の予想をはるかにうわまわる反響を呼ぶ。

 「カハタレバナ」は、春と秋の彼岸に欠かさず亡き母の墓参りをしている友人の話だ。

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