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どうせオレらは亀田にメロメロなのさ。

2009年12月7日(月)

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 私たちは亀田のボクシングが大好きで、内藤のキャラクターを愛している。
 でもって、TBSの演出と、作り声のナレーションが大好きで、その彼らが作ったびしょびしょのプロットに身も心もメロメロなのだ。
 もう一度言おう。そう。オレらは亀田にメロメロだ。
 内藤にもメロメロ。
 そうだとも、大嫌いな言葉だけれども、あえて繰り返し発音しよう、メロメロであると。

 わたくしども日本人は、亀田三兄弟のあのうさんくさいファイトスタイルと、赤新聞ライクな小芝居と、オヤジがらみの人情物語が大好きなのだ。生焼けのお好み焼きみたいにぐちゃぐちゃなエピソードの数々が、だ。で、カメラ目線の作り方から、挑発的な口のきき方から、グローブの中に入っている詰め物に至るまでのすべての要素に夢中なのだ。だから、私ども平成の良民常民は、ナイターを見限り、Jリーグを見捨て、サムライブルーのゲームをさえ見放しているにもかかわらず、亀田のファイトだけは、毎度必ず見ることにしている。9連続防衛中の偉大なチャンピオン、長谷川穂積の試合には一瞥も与えていないのに、だ。

 私は、タカをくくっていた。
 世紀の一戦になるだろうとはまったく考えていなかった。
 
 なぜなら、この試合は、対戦相手を注意深く選ぶことで無敗の戦績を築いてきた若い挑戦者と、選手生活の晩年に至ってバラエティー露出を急激に増やしたチャンピオンによる、興行的意図ばかりが目立つ、紙芝居じみたマッチメイクだったからだ。
 
 しかも若い挑戦者には疑惑の判定がつきまとい、反則の過去があり、過剰宣伝の臭みが横溢し、迎え撃つベテランには衰えが顕在化していた。チャンプは指名試合を逃げ、中国からやってきた無名のランク外選手に不覚のダウンを喫し、苦しい防衛を繰り返し、試合の度に流血していた。

 噴飯ものだったのは今回の試合だけではない。懐疑派のボクシングファンは当初から亀田に対しては辛辣だった。
 
 亀田一家が生まれ故郷の大阪から東京に拠点を移した(←これも「逃亡」「夜逃げ」「TBSによる取り込み」と言われた)時にも、古くからのファンはこの騒々しい一家に罵声を浴びせ続けた。
 
 たとえば「葛飾に来たのは《勝つしか》ないからや」という亀田陣営のアナウンスは、その日のうちに「葛飾区内」→「勝つ資格無い」というふうにまぜっ返されてネット掲示板に大量投稿された。
 
 かように、亀田物件に関するプロパガンダは、一事が万事、アンチ亀田一派によるネガティブキャンペーンの材料になった。浪速の逃犬、と、この異名にはすでに4年の歴史がある。逃げる犬。背中には甲羅。あられもない亀田の逃げ足。

 でも、揶揄であれ憎しみであれ嘲笑であれ、無視よりはマシというのがプロのスタンスだ。

 亀田大本営発の宣伝工作に対して、巨大な量のアンチ亀田テキストが配信されたことは、結果として、亀田マターをさらに巨大な一大メディアイベントに格上げさせた――と、そういうふうに考えないと、今回の高視聴率は説明がつかない。

 結局、亀田陣営が持ち出してくるインチキくさいあれこれについて、反発し反論し反応し反撃している時点で、われわれは彼らの戦略にハマっていたということなのだな。空打ちのジャブに合わせて左右のフックを振り回す愚直なファイターみたいな具合に。うむ。くやしい。
 
 知名度さえあれば、その知名度の中味が何であれ(つまり軽蔑や冷笑であっても)、数字は取れる。
 なんとなれば、視聴率は、支持率ではないからだ。
 
 人気投票でさえない。
 あれは、アイキャッチだ。野次馬の頭数。数字のゲームに過ぎない。
 
 とすれば、青空よりは竜巻が、清流よりは洪水が、生きている美人よりは全裸死体が注目を集める。それがショー・ビジネスの世界の正義だ。

コメント34件コメント/レビュー

いつも楽しく拝読しております。文中のS&Gの詞のうちAnd he carries the reminders of every glove that laid him down or cut him 'til he cried out in his anger and his shameの訳ですが、私は大意「雨のようなパンチを浴び、倒され傷つけられる彼は、見る者に何かを思い出させる。怒りと恥辱の中で彼が叫ぶその時まで」という意味だと勝手に解釈してます(carry reminder は、知ると言うより知らしめるという語感だと感じたので)「こんなのヤだ故郷に帰りたい」と言いつつ都会に留まり続ける矛盾した彼が金のためにやってる仕事が、よりによって矛盾だらけのボクシングで、それを見る観客の心も大いに矛盾を孕んでいる。なんて勝手にまとめちゃダメですねすみません・・・(2009/12/14)

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「どうせオレらは亀田にメロメロなのさ。」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

いつも楽しく拝読しております。文中のS&Gの詞のうちAnd he carries the reminders of every glove that laid him down or cut him 'til he cried out in his anger and his shameの訳ですが、私は大意「雨のようなパンチを浴び、倒され傷つけられる彼は、見る者に何かを思い出させる。怒りと恥辱の中で彼が叫ぶその時まで」という意味だと勝手に解釈してます(carry reminder は、知ると言うより知らしめるという語感だと感じたので)「こんなのヤだ故郷に帰りたい」と言いつつ都会に留まり続ける矛盾した彼が金のためにやってる仕事が、よりによって矛盾だらけのボクシングで、それを見る観客の心も大いに矛盾を孕んでいる。なんて勝手にまとめちゃダメですねすみません・・・(2009/12/14)

>あるいは、多くの視聴者は、(中略)それでも最終回だけは知りたい、みたいなものであろうか。  その通り。今まで亀田も内藤も試合を見たことなかったが、見たこと無いものを論じるのはおかしいので、最終回くらいはボクシングそのものを見てやろうと。で、結論は出た。内藤はもはや王者にふさわしい力を持っていない。亀田は、今後、防衛戦をクリアできるかで評価する。話題に踊らされた大衆と蔑視するコメントがあるが、実際のモノを見ずに上から目線で論評するほうが滑稽だと思う。 ドキュメンタリー?結論出たのだからもういいよ。そんな感じ。10%も視聴率とれたのに驚いたが、月曜のその時間帯で他に人気番組がない中での数字なので、そんなもんかなというところ。(2009/12/11)

亀田家関連を批判するのも、興味を持つのも、褒めるのも、すべて仕掛人の手のうちである。無視が一番。視聴率が高くても、単に興味本位。見た人も1週間たてば忘れるよ。それでよい。(2009/12/10)

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