「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

宴席で譲り合う貴方、軽自動車に優しくしてますか?

第22回:スズキ ワゴンR【試乗編】

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2009年12月11日(金)

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 すっかり寒くなって参りました。熱〜く燗をした日本酒が恋しくなる季節でございます。

 通の方からすると、良い日本酒を燗してしまうなどは言語道断、人肌程度のぬる燗が一等旨いのだとお叱りを受けてしまいそうですが、やはり寒いときは熱燗に限ります。

 寒くなるのと同時に忘年会がボチボチと始まりまして、連日連夜の宴会が続きます。

「おっ、ヤマグチさん、お待ちしておりましたよ。相変わらず顔色が良いですなぁハハハハハ。いや今年もお世話になりました。ささ、奥のお席へドーゾ。え? 私が奥へ? 何をおっしゃいますやら。ヤマグチさんが奥、オク。そっちですよほら。お招きしたのはウチなんですから。ご遠慮なさらずにホント」

 こちらとしても目上の方を下座に置く訳にはいきませんから、必死で抵抗します。

「いえいえそんな。私のような若輩者が奥へ座ったらバチが当たります。オクダさんこそ奥のお席へ。あ痛たたたた。肩を押さないで下さい。いや実は自転車で転んで脱臼してしまいましてね。いやお恥ずかしい……。話せば長いのですが、ともかく肩はダメです」

 急所の肩をやられたのには参りましたが、私としても簡単に引き下がるワケにはいきません。ヤマグチさんこそ、いえいえオクダさんこそ。こんな感じで“上座譲り”の不毛な攻防戦が延々と繰り広げられます。

読者諸兄からは格別のご心配いただき恐縮至極です。肩鎖関節の手術は無事に終了し、スーパードクターのお陰でこんな感じになりました。骨に打ち込んだステイプルで人工靱帯が固定されています
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 この時期のこうした光景は、私の回りだけではなく日本各地で見られることでしょう。“オヤジ臭い”と笑い飛ばすことは簡単ですが、この譲り合いの精神こそが、我が国伝統の文化。日本人の美徳なのではありますまいか。そう、譲り合いの精神です。私たちは、宴席ではシツコイほどに譲り合う。

 なのに、しかしひとたびステアリングを握り道路へ出て走り出すと、日本人はなぜかくも“譲らなく”なるのでしょう。宴席では慇懃無礼と言えるほどに腰が低いオクダ氏も、路上に出れば人格が豹変して、頑として道を譲らぬ傲慢ドライバーに変身するのでしょうか。
 ・・・特に軽自動車に対しては。

 今回の試乗記は、スズキが産んだ軽自動車界の革命児、「ワゴンR」であります。

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 「トールワゴン」というコロンブスの卵的発想でデビューしたのが今から16年前の1993年。以来着々とモデルチェンジを重ね、現行モデルは当代取って4代目。ダイハツのムーブ、ホンダのライフ、三菱のトッポ……と多くのフォロアーを産み、ひとつの確固たるカテゴリーを造り上げました。

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 何しろこのワゴンR、三代目プリウスが登場するまで、長らく“日本で一番売れていたクルマ”のタイトルを欲しいままにしてきたスズキの代表選手です。悪かろう筈がありません。後部座席を倒せば大きな荷物をポンと放り込むことができ、席を起こせば大人4人が十分に寛いで乗車することができます。軽自動車の排気量は最大値660ccと規制があるため、エンジンはバイク並みの小振りなものがチョコンと搭載されているのですが、ターボチャージャーで武装されているので、これまた信じられないほどのパワーを絞り出します。

 高速道路では100km/hの巡航なんて楽々で(リミッターは130km/h)、料金所から本線への合流も、何らストレス無く、サッと行うことが出来ます。それでいて車体が小さいから取り回しが良い。狭い道でのすれ違いも楽々です。さらに軽いから燃費性能にも優れています。高速と下道がほぼ半々の走行で、(燃費のことを一切考えず、好きなように乗り回して)およそリッター15km。これならハイブリッドなど必要無いじゃんという感じです。オマケに税金も安く保険も安い、と来るのですから、これはもう非の打ち所がありません。自動車業界のミスターパーフェクト。アーネスト・ホーストの様なクルマであります。

 しかし。しかしですよ皆様。
 幹線道路を走ると何とも酷い目に遭うのですよ。

 前回のコラム冒頭で書いた、「今回ばかりは我が国が歪な階層社会であることをイヤと言うほど思い知らされました。」というアノ部分。今回はそこをつまびらかにいたしましょう。

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フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチです。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。



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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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