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月に1万8000台、「地方の国民車」はこうして生まれた

第23回:スズキ ワゴンR【開発者編】その1

2009年12月18日(金)

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 来週はクリスマスだというのに、ちっとも寒くなりませんね。

 私はスキーが大好きで、雪便りを聞くともういても立ってもいられなくなるのですが、地球温暖化の影響なのか、今年は一向に雪が降ってきません。国内のスキー場はどこも絶望的な状況で、開場の安全祈願に呼ばれた神主さんが、少しも雪の着いていない原っぱのような無惨なゲレンデで、半ばヤケクソ気味に大麻(タイマじゃないですよ、オオヌサと読みます。あのシャカシャカした紙のついた棒です)を振り回していたりします。

 スキーに行くには雪道を走る必要がある(この状況では大して心配いらないのですが……)。雪道に強いのは何と言っても4輪駆動車です。とりわけ軽のヨンクは圧倒的に強い。

 今まであまり気を付けて見ていなかったのですが、見渡してみると各社の軽自動車にはヨンクの設定が実に多い。多い、というか、ほとんど全ての車種にヨンクが設定されています。これは普通乗用車には見られない、いかにも特異なラインナップです。

 何か特別な事情でもあるのでしょうか。軽自動車は日本で産まれ、日本で育まれた、非常に特殊なカテゴリーのクルマです(韓国にも「軽車」“キョンチャ”と呼ばれる似たようなカテゴリーがあるのですが、何せあちらは排気量が1000ccとかなり規格が違います。あ、クルマにご興味のない方に付け加えますと、軽自動車すなわち黄色ナンバーのエンジンは660ccです)。

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「軽」はニッポンの国民芸かも

 小さなエンジンに小さなボディ。ガチガチに制約された条件の中、それでも必要にして十分なパワーとスペースを、創意と工夫と努力と根性で捻り出してしまう。必要なものをギュッと凝縮した、自動車版幕の内弁当とも言える、世界に誇るべき我が国の至宝。“軽”を通してこそ見えてくる、日本人の底力、日本人のものづくり精神があります。

 では軽のナンバーワンたるワゴンRを造っているのは、一体どんな方なのでしょう。
 趣味は箱庭造りで、好物は幕の内弁当。なのかも知れません。

 お話を伺ったのは、ワゴンRの開発責任者である松井時男さん。二輪(バイク)が大好きで、二輪の設計を志望してスズキに入社したにも関わらず、「入社以来四輪しかやったことがありません」と仰る、私と同い年のチーフエンジニア。

 さあさあそれでは参りましょう。フォルクスワーゲンと組んで、世界制覇を虎視眈々と狙う悪の軍団ショッカー……じゃなくて浜松の雄スズキ。
 看板娘であるワゴンRの開発責任者、松井時男氏のお出ましです。

*   *   *

フェルディナント(以下、F):始めまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくおねがいします。

松井(以下、松):あ、どうも始めまして……あのぉ、あなたがフェルディナントさん……ですか?

F:はぁ、私がフェルディナントですけど……何か?

「ネクタイ締めてくるなんて、予想外でした」

松:何というか、文章からくるイメージと違うので……何かもっとこう、フザけた感じの人かと思っていました。

F:な……。のっけからそんな。それはあの、「SPA!」の記事とかを読まれたからでしょうか?

松:日経ビジネスオンラインです。

F:ええ? 私、この連載が自分の中では一番堅い文体で書いているんですけど。

松:ちゃんとしたスーツも着ているし。ジーンズとか、もっとラフな恰好でいらっしゃるのかと思っていました。

F:あのですね、私も松井さんと同じ勤め人。カタギのサラリーマンなんですよ。

 なぜかここで同行した取材陣から一斉にヤジが飛ぶ。

「あんたのどこがカタギなんですか(笑)」
「そうそう、どっから見てもその辺のゴロツキですよ」
「ほら、ボロが出ないうちにさっさとインタビューを進めて下さい」

 ……わかりましたよ。ボロが出ないうちにね……。
 ちくしょう日経BPめ。この会社は著者のことをもう少し大事にするべきだ。

画像のクリックで拡大表示

F:まず伺いたいのは、あの“ハイト系軽ワゴン”というコンセプト。それまでにも屋根が高い軽自動車は存在していました。でもワゴンRは何かが違っていた。だからこそあれほど売れてきた。あのコンセプトはどうやって産み出されたのですか?

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「月に1万8000台、「地方の国民車」はこうして生まれた」の著者

フェル

フェル(ふぇるでぃなんと・やまぐち)

コラムニスト

堅気のリーマン稼業の傍ら、細々と物書きの真似事をしております。最近は講演やらテレビ・ラジオへの出演も増えてきました。いったい本業は何なのか自分でもよく分からなくなっています。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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