来週はクリスマスだというのに、ちっとも寒くなりませんね。
私はスキーが大好きで、雪便りを聞くともういても立ってもいられなくなるのですが、地球温暖化の影響なのか、今年は一向に雪が降ってきません。国内のスキー場はどこも絶望的な状況で、開場の安全祈願に呼ばれた神主さんが、少しも雪の着いていない原っぱのような無惨なゲレンデで、半ばヤケクソ気味に大麻(タイマじゃないですよ、オオヌサと読みます。あのシャカシャカした紙のついた棒です)を振り回していたりします。
スキーに行くには雪道を走る必要がある(この状況では大して心配いらないのですが……)。雪道に強いのは何と言っても4輪駆動車です。とりわけ軽のヨンクは圧倒的に強い。
今まであまり気を付けて見ていなかったのですが、見渡してみると各社の軽自動車にはヨンクの設定が実に多い。多い、というか、ほとんど全ての車種にヨンクが設定されています。これは普通乗用車には見られない、いかにも特異なラインナップです。
何か特別な事情でもあるのでしょうか。軽自動車は日本で産まれ、日本で育まれた、非常に特殊なカテゴリーのクルマです(韓国にも「軽車」“キョンチャ”と呼ばれる似たようなカテゴリーがあるのですが、何せあちらは排気量が1000ccとかなり規格が違います。あ、クルマにご興味のない方に付け加えますと、軽自動車すなわち黄色ナンバーのエンジンは660ccです)。
「軽」はニッポンの国民芸かも
小さなエンジンに小さなボディ。ガチガチに制約された条件の中、それでも必要にして十分なパワーとスペースを、創意と工夫と努力と根性で捻り出してしまう。必要なものをギュッと凝縮した、自動車版幕の内弁当とも言える、世界に誇るべき我が国の至宝。“軽”を通してこそ見えてくる、日本人の底力、日本人のものづくり精神があります。
では軽のナンバーワンたるワゴンRを造っているのは、一体どんな方なのでしょう。
趣味は箱庭造りで、好物は幕の内弁当。なのかも知れません。
お話を伺ったのは、ワゴンRの開発責任者である松井時男さん。二輪(バイク)が大好きで、二輪の設計を志望してスズキに入社したにも関わらず、「入社以来四輪しかやったことがありません」と仰る、私と同い年のチーフエンジニア。
さあさあそれでは参りましょう。フォルクスワーゲンと組んで、世界制覇を虎視眈々と狙う悪の軍団ショッカー……じゃなくて浜松の雄スズキ。
看板娘であるワゴンRの開発責任者、松井時男氏のお出ましです。
* * *
フェルディナント(以下、F):始めまして。フェルディナント・ヤマグチと申します。今日はよろしくおねがいします。
松井(以下、松):あ、どうも始めまして……あのぉ、あなたがフェルディナントさん……ですか?
F:はぁ、私がフェルディナントですけど……何か?
「ネクタイ締めてくるなんて、予想外でした」
松:何というか、文章からくるイメージと違うので……何かもっとこう、フザけた感じの人かと思っていました。
F:な……。のっけからそんな。それはあの、「SPA!」の記事とかを読まれたからでしょうか?
松:日経ビジネスオンラインです。
F:ええ? 私、この連載が自分の中では一番堅い文体で書いているんですけど。
松:ちゃんとしたスーツも着ているし。ジーンズとか、もっとラフな恰好でいらっしゃるのかと思っていました。
F:あのですね、私も松井さんと同じ勤め人。カタギのサラリーマンなんですよ。
なぜかここで同行した取材陣から一斉にヤジが飛ぶ。
「あんたのどこがカタギなんですか(笑)」
「そうそう、どっから見てもその辺のゴロツキですよ」
「ほら、ボロが出ないうちにさっさとインタビューを進めて下さい」
……わかりましたよ。ボロが出ないうちにね……。
ちくしょう日経BPめ。この会社は著者のことをもう少し大事にするべきだ。
F:まず伺いたいのは、あの“ハイト系軽ワゴン”というコンセプト。それまでにも屋根が高い軽自動車は存在していました。でもワゴンRは何かが違っていた。だからこそあれほど売れてきた。あのコンセプトはどうやって産み出されたのですか?
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