「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

「カネがないから仕方ない」なんて泣き言、ハママツでは許されません

第24回:スズキ ワゴンR【開発者編】その2

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2009年12月25日(金)

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(前回「月に1万8000台、「地方の国民車」はこうして生まれた」から読む)

 どうやらガソリンは安くならないようです。

 選挙前までは、「マニフェストを守れなければ下野する」とまで宣っていた鳩山総理ですが、結局ガソリンに対する暫定税率は変わらずで、(正確に言うと、暫定税率は廃止されましたが、何か別の名前の変な税金が同額課されるようです)要は「カネが無いからしょうがないだろ」と言うことです。

 何かアレですね。結婚前まで散々良いことを並べておいて、いざ結婚してみたら何も公約を実行しない口先男の手口を見るようです。

「ねえあなた、夏休みは毎年ハワイに連れて行ってくれるんじゃなかったの?」
「カネがないからしょうがないだろ」。
「いつまで私の部屋に居るのよ。早く広いところに引っ越しましょう」
「カネがないからしょうがないだろ」。
「結婚記念日には思い出のレストランでディナーを……」
「カネがないからしょうがないだろ」……。

 国のトップである総理大臣の約束があまりに軽いモノですから、我が国を代表する大企業の提携話も、総理をダシに煙に巻かれることになる訳です。

 このたび独フォルクスワーゲンとの包括的資本・業務提携の発表をされたスズキの鈴木修会長は、11月の中間決算発表会見時には、VW社との提携を全面否定しておられました。そして先日の提携発表記者会見では、

「会っただけで(交渉を)やっているとは言えない。日本では、首相が解散権を行使する時はウソをついてもいいことになっている。それと一緒だ」

 とおっしゃいました。

 提携という企業の重要事項を、事前にわざわざマスコミに言う必要はもちろんありません。首相が平気でウソ吐くんだもん。俺らだってこれくらいの煙幕は張るわな、という鈴木氏一流のウィットに富んだマスコミ操縦術なのでしょう。

 さて、その鈴木修会長が社長に返り咲いたスズキの看板娘ワゴンR。開発者松井氏へのインタビューの続きを始めましょう。「カネがないから仕方ない」なんてフヌケタ言いぐさは、鈴木会長も、軽自動車の開発者も許さない、許されないことがわかります。

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フェルディナント(以下、F):ワゴンRは今や日本を代表する軽自動車の代名詞であり、またスズキの利益を牽引する看板娘でもあります。先ほどはパドルシフトをスズキで初採用されたと伺いましたが、このクルマ専用に使っている、特別な技術とか特別な素材とか、そういうものは有りますか?

松井(以下、松):有りません。

F:ボディに特別な鉄板とか、ワゴンRだけのエンジンとか、そのようなモノって無いんですか?

松:無いですね。そんなことしたら原価が高くなっちゃうもの。ウチはコストの縛りが大きいんです。

F:そうか。なるべく部品の共通化を図って、コストダウンしなければいけない。

松:そうです。とにかく「新しい部品は起こすな!」と、会長(鈴木修会長兼最高経営責任者)にもかねがね言われているもので(笑)。

F:会長キター!(笑)。部品や技術はアリモノを使えと。

アリモノを使え! そこにこそコストとやりがいの両立が

ワゴンR 開発責任者、松井時男氏

松:そうそう。アリモノを使えと。何でアリモノかと言うと、それは今まで何十年も技術が蓄積されていて、品質も保証されているからです。特に機能部品なんかはそうで、我々もよほどの理由がない限り、新しくは造りません。それでも意匠部品など、流行廃りがあるのは時代に合わせて変えていきますが、見えない部分の機能部品は、もうとにかくアリモノを使えと。だから償却に関しても、それはもの凄い台数で出来るようにしています。

F:エンジニアからすると、どうなんですかそれは。

松:やり甲斐がありますよ。工夫のし甲斐がある。ここは前のヤツをそのまま使えるなとか、こっちはラパンに持っていこうとか……パズルをするみたいに。よほどの理由がない限り変えられないから、どうしても変えたいときは自分でうんと勉強するようになるし。

F:なるほど。ところで鈴木会長は何で社長に戻られたのですか。

松:ほい広報さん、公式回答を(笑)

ここで松井氏は、同席されていた広報部の池田氏に答弁を託す。

広報 池田氏:お答えいたします。リーマンショック以降、会社を取り巻く経済環境は非常に厳しい状態にあります。そうした状況下、社員がこれぐらいの頑張りを続けていれば、これくらい会社は伸びるだろう、と勘違いをしている人も少なくないということを会長は非常に危惧しておりまして。ここに来て急にガタっと会社の業績が厳しくなったので、その責任を取る、火中の栗を拾う思いでもう一度社長職に戻る。そういった決意の表れでございます。

F:なるほどなるほど。少し前だとユニクロの柳井さんがそうだし、最近だと日本板硝子の藤本さんもそう。スズキに限らず、業界で“勝ち組”と目されている企業のトップが続々と復帰しているのですが、これは非常に興味深い現象ですね。

池:いえウチは勝ち組だなんてそんな……

F:明確に勝ち組ですよ。だって自動車でこの時期に利益が出ているんだもの。

編集Y:しかしスズキにユニクロ、日本板硝子。すごい三題噺ですね。

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フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチです。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。



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フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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