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保護者がつくる「ゆるくて楽しい学校」

2010年2月19日(金)

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 縁あって半年間、ニュージーランド南島のクライストチャーチ市に住み、子どもたちを地元の公立小学校に通わせた。

 実験国家として名をはせるニュージーランドだから、学校制度も非常にユニークだ。
 キーワードは、ガバナンスとマネジメント。

 90年代なかば以来、コーポレートガバナンスという言葉が日本でもよく語られるようになったけれど、まさに同じ意味での「ガバナンス」と、それと対になる「マネジメント」の概念が、ニュージーランドの学校では鍵となるコンセプトとして定着している。

 といっても、この時点で、ぼくがこのことを力説しても、読者には意味不明に違いない。
 多少、回り道をすることになるけれど、順を追って説明しよう。

 なにはともあれ、ニュージーランドの学校についてある程度は知っていただかないと話が進めにくいので、まずは子どもたちの「学校生活」の素描から。

 

学校生活は「ゆるくて、楽しげ」

 子どもたちが通ったセントマーチンズ小学校は、クライストチャーチ市内南側の丘陵地帯にある。名前からはキリスト教系の学校を想像されがちだが、たまたま地名が「聖マタイ」なだけで、ごく普通の公立校だ。

セントマーチンズ小学校のキャラハン校長と。まだ40代だが、10年以上の校長キャリアを持つ学校マネジメントのスペシャリスト。

 有名な大聖堂のある市街地から直線距離で5キロほど、車で10分もかからない。ほんの少し中心地から離れるだけで、環境はずいぶんのんびりした田舎の雰囲気になる。往来する車の数は少ないし、商業施設よりも住宅の方がはるかに多い。

 そんな中、学校は丘陵のふもとに建っている。小学校とはいえ、1年生から6年生までのプライマリースクール(日本の小学5年生くらいまでに相当)と、7年生、8年生からなるインターミディエイトスクール(中間校、日本の小学6年生と中学1年生に相当)が併設される「フルプライマリースクール」だ。「フル」ではないプライマリースクールもあるのだが、本稿での表記は「小学校」で統一し、区別する必要がある時だけ言及する。

 さて、ニュージーランドの小学校は、就学年齢が日本よりも1歳早いため、日本で3年生だった娘は4年生、6年生だった息子は7年生として受け入れられた。

 セントマーチンズ小学校の児童数は600人弱。日本で言えば中規模校だろうか。たまたま、子どもたちが日本で通っていたのと同じ人数で、その意味では子どもたちも、親としても、違和感がなかった。

 ほかのニュージーランドの学校と同様に、2月から始まる4学期制を取っており、ぼくの子どもたちは2009年7月、3学期の始業日に転入した。

 一日の流れはこんなふう。

 8時30分 各教室が開く 
 8時50分 授業がスタート 
 9時50分から10時 小休み時間 
 11時から11時25分 中休み時間 
 12時30分から13時25分 昼休み 
 15時 授業終わり 
 

 学校案内に書いてあったものをそのまま引き写した。
 ここから分かるのは、日本に比べてかなり学校での学習時間が短い、ということくらいか。

 では、実際のとこ、どうよ。
 日本と比べると、どうちがう?
 子どもたちに聞いてみると、以下のような回答があった。

 
時間割もないし、教科書もない(授業内容はその日によって担任が柔軟に変更する)。
1時間の中でも、やることがコロコロ変わるから飽きない。英語が分かれば、もっと楽しいはず(教師たちは飽きさせないように、とても努力しているようだ)。
クラスの人数が少ない。20人と少しくらい。また、3ー4年生、7ー8年生というふうに、2学年の子が同居する複式学級が多い。
休み時間には、持参したおやつを食べてもいい(いわゆるモーニング・ティーの時間。朝食と昼食の間にも軽食を取る)。
授業の邪魔にならなければ、別のことをしていても怒られないことが多い(これは本当はいけないのだと思うが……)。
授業中に急にいなくなる子がいる(生徒会役員やら、先住民族マオリの文化を学ぶグループの子らだとのちに判明)。
自分の机以外は掃除をしなくてもいい(専門の清掃員が夜、掃除する)。
楽しいイベントが多い(授業で習ったダンスや歌の発表会だけなく、生徒会主催のショーウィークだとか、「変な髪で学校に来る日」とか、「サンダルとサングラスをつけて学校に来る日」とか、「バケツで育てたジャガイモコンテスト」、などが目白押し)。

 いろいろな要素が混在しているけれど、概して非常に「ゆるく、楽しげ」といえる。
 子どもたちは英語が不自由なので、算数や音楽、美術や体育など以外では、授業についていけるはずものないのだが、こういう締め付けのゆるさの恩恵もあって、なんとか楽しく過ごしたようだ。

 一方、親にとっての違いはというと……まずは、給食がないこと!
 日本にいると、給食があるのが当たり前に感じてしまうけれど、あれはかつて、日本の社会が全体的に非常に貧しく、「欠食児童」などという言葉が普通に使われた時期に実現し、定着した仕組みなのだろう。こっちでは、そういう発想すらない。

 というわけで、親は、毎日、弁当を持たせなければならず、やや面倒だ。もっとも、日本の学校や幼稚園などで、弁当をつくらなければならない際によく聞かれる「弁当は親の愛情表現!」という風潮はないから、それほど重圧を感じないのが救い。場合によってはフルーツだけで済ませる親もいるようで、ぼくもパンに目玉焼きとハムとピクルスを挟んだものを持たせてよしとした。

 間食も許されているわけだし、本格的な食事は家ですればよい。それにしても、日本の給食というのは、安価であることやら、栄養のバランスやら、様々なことを考え合わせても大変ありがたいものだなあと改めて感じた。

コメント26件コメント/レビュー

楽しく読ませていただきました。『協力者が足りなければ、イベントは見送り』というのは、協力できない事情のある者にとって、精神的にとても楽なシステムだと思います。また、『労力の割には「ほぼ無給」の学校理事会メンバーにも、定員以上の立候補が出て、選挙で争われた上で決まっていく。』のも、眩しいほど青い芝生です。つづきを楽しみにしております!(2010/02/25)

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「保護者がつくる「ゆるくて楽しい学校」」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

楽しく読ませていただきました。『協力者が足りなければ、イベントは見送り』というのは、協力できない事情のある者にとって、精神的にとても楽なシステムだと思います。また、『労力の割には「ほぼ無給」の学校理事会メンバーにも、定員以上の立候補が出て、選挙で争われた上で決まっていく。』のも、眩しいほど青い芝生です。つづきを楽しみにしております!(2010/02/25)

かねてよりの川端ファンですが、最近は教育関係のノンフィクションが多いのですね。保護者が学校のガバナンスを掌握するなんて確かに想像もつきません。連載、とても楽しみです。(2010/02/23)

なにはともあれ、楽しかったです。教育についての閉塞感。よその国の事例を知ることで、打破するための刺激になればいいなあ。この著者の著作は、イルカやクジラからみのものを読んでおり、信頼してます。とても楽しみです。(2010/02/22)

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