「超ビジネス書レビュー」

手強い顧客に効果てきめん『新 傾聴ボランティアのすすめ』
〜最後のホンネを聴くまで口を閉ざせ

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2010年2月10日(水)

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新 傾聴ボランティアのすすめ――聴くことでできる社会貢献』 ホールファミリーケア協会編、三省堂、1600円(税抜き)

「ケイチョー?」

 50代の経営者がそのコトバを言った時は気にならなかったが、20代の営業マンが口にした時は思わず聞き返した。「傾聴」なる耳慣れないキーワード。最近、取材現場でしばしば耳にする。

 要は、人の話をきちんと聞けってこと。そんなことは百も承知している。

 しかし、実際は……。部下や同僚が話しているのに、途中で口出しして話の骨を折ったり、勝手な思い込みをしたり、分かったフリしたり。

 確かに、聞いてばかりじゃストレスがたまる。それに、ビジネスマンの価値は、アウトプット量に比例する。常にアピールしなきゃ、人に負けてしまう。

 その気持ちは分かる。ただ本書を読むと、そうした考えが身勝手なものに思えてくる。

会話は優越感ゲームではない

 認知症患者などの話し相手となる「傾聴ボランティア」を養成するNPOが明かしたコミュニケーション・スキルは、ありふれた形式のものに見えて、実は細部まで神経の行き届いた戦略的な手法である。

 何しろ、介護施設の人が「その人、話さない人だから、(関わっても)無駄ですよ」とサジを投げる認知症高齢者に対して傾聴ボランティアがケアすると、その高齢者は堰を切ったように、子供の頃の思い出やまだ仕事をしていた時の話などをし始める。そんな“奇跡”もよく起きるというのだから。

〈傾聴とは、単に相手のいうことを受け止めて聴くだけではなく、話し相手がさらに多くのことを話せるように、そして多く話すことによって、自分なりに、悩んでいることについて考え方の整理が付くように支援することです〉

 コーチングにも通じる傾聴という姿勢。「聞く」ではなく、「聴く」。「聴」という漢字は「耳」「目」「口」から成る。つまり、五感をフルに使い脳みそで「きく」ことができるか、がポイントらしい。

 こちらが聴いているつもりでも、それがテキトーな対応であれば、相手は「聴いてもらってない」と判断する。それは相手が認知症高齢者だけでなく、顧客や取引先であっても変わらない。

〈私たちは、普段「聴く」ことを意識しないで、他の人と会話をしています。そして、気がつくと、相手に対する批判、助言、果ては、自分自身の価値観の押し付けまでやっています〉

 まずは、知らずのうちに相手より優越的な立場に立とうとする悪癖を直す。そんな深層心理を見つめる行為が、傾聴のスタート地点となるのだ。

 だが、基礎の基礎として「できる限り自分の口を閉ざせ」と言われると困る。それは、あまたある「聞き方」本などが必ず指摘するフレーズであり、耳にタコだからだが、本書には思わずハッとさせられた。納得できる理由付けがきちんとあったのだ。

〈日本人の話の話し方の特徴として、話したいこと、本音は最後に出てくると言われています〉

 認知症患者もビジネスマンもそうした「話の展開」は類似している。ちょっと辛抱したら、相手は最後にいいネタを提供してくれるかもしれない。思うに、仕事の合間などの雑談時は特に、この「ちょっと辛抱」が有効なのではないか。

「来月、福島の芦ノ牧温泉へ行くんだよねーー」

 例えば、人がこんな話を始めた時の正しい返答はどちらか?

A:「ああ、芦ノ牧温泉なら私、先月ドライブ旅行で寄りました。一番大きな○○ホテルへ泊まって……」

B:「芦ノ牧は私も行ったことがあります。◯◯さんはどんなコースで行くのですか?」

 相手の話を寸断するだけでなく、自慢話を延々続けたAに対して、あれこれ話したいのを我慢して、短い質問で返したB(しかも同時に複数のことを尋ねない)。こちらのほうが結果的に話はふくらむ。

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著者プロフィール

大塚常好(おおつか・ときよし)

フリーライター。ビジネス誌を中心に、人物取材、実況ルポ、現象レポートなどの記事を手がけている。



このコラムについて

超ビジネス書レビュー

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