2月3日〜14日。国立新美術館で第13回文化庁メディア芸術祭(主催:文化庁、国立新美術館、CG-ARTS協会)が開催されました。メディア芸術の創造とその発展を図ることを目的に、アート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門などが設けられ、年に一度、各部門で大賞と優秀賞が選定されます(第13回文化庁メディア芸術祭の公式サイトはこちらをどうぞ)。
過去にも「ゼルダの伝説 時のオカリナ」(1988年)、「ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち」(2000年)や、「大神」(2006年)、「Wii Sports」(2007年)などが、エンターテインメント部門(2000年以前はデジタルアート部門)の大賞を受賞するなど、テレビゲームと関連が深い芸術祭なのです。そして今年は、とりわけゲーム業界からの注目を集めることとなりました。
功労賞という名の賞が用意され、任天堂の宮本茂氏が受賞したからです。
当コラムをお読みのみなさんには、宮本氏についての説明は不要ですよね? 「マリオ」や「ゼルダ」の作者であり、いまなおWiiとニンテンドーDSで「Wii Sports」などの世界的ヒット作を作り続けている、世界中のゲームファンの尊敬を集めるゲームクリエイター。2009年の12月にも「New スーパーマリオブラザーズ Wii」を発売し、瞬く間に全世界で1000万本のヒットを記録するなど、いまなお世界のトップクリエイターであり続けている人物です。
「できのいいゲーム」を作るだけじゃダメ
そして2月5日。第13回文化庁メディア芸術祭の功労者シンポジウムの場で、宮本茂氏はさまざまな発言をしました。
過去の作品についてのエピソードや、これからクリエイターを目指す若者たちへのメッセージなどもとても興味深いのですが、それらの中でも、昨今のゲームビジネスを読み解くにあたっての大事な言葉がありましたので、紹介しておきましょう。
「できのいいものは、作れるようになった」
「だから、いまは面白いものを作らなくちゃいけない」
これまでに積み重ねたノウハウを使えば、ゲームが好きな人を満足させる「できのいいゲーム」は作れるようになった。しかし、それはゲームを知らない人にとってはどうなのか? それらの人にとって「面白いゲーム」なのかどうか?
事実、ゲーム雑誌でパーフェクトの評価をとっても、売れないゲームは出ていきている。だから、数年前から、わたしたちは「できのいいゲームではなく、より面白いものを作らなくちゃいけない」と思うようになった――と宮本氏は語ったのです。
いまにして思えば、この意識変化が、ゲームの歴史そのものを変える転換点になったのでしょう。
タッチするだけで楽しめるニンテンドーDS、そしてリモコンを振って楽しめるWii。それに対応した「面白いソフト」を産み出したことにより。これまでゲームを知らなかった人が新規ユーザーとなり、結果として全世界のゲームビジネスが拡大したのは、みなさまもご存じのとおりです。
そんな宮本氏は、いまは自身が「DSパブリックスペース利用」と呼ぶ、さまざまなシステムに取り組んでいるとのこと。これは、さまざまな場でゲーム機を利用する「面白い仕組み」を作っているのだと考えるといいでしょう。ニンテンドーDSを利用した「美術館での音声ガイド」の仕組みや、生徒が持つニンテンドーDSを介して情報をやりとりする「教室システム」などが用意されているようです。
ビデオゲームの社会受容性を変えていく
ここからわかるのは、任天堂は、いまなおゲームを知らない人たちにとっての「おもしろいもの」をつくりだすことに、まだまだ積極的に取り込んでいるということ。同じ姿勢はこの1週間ほど前の1月29日に任天堂の第3四半期決算説明会の場で、社長の岩田聡氏から発せられている言葉からも、明快に読みとることができます。
この会で岩田氏は「娯楽の社会受容性」と名づけたグラフを提示しました。
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