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「あきらめないで」と言ってくれる人を自分から捜そう

映画「マイマイ新子と千年の魔法」片渕須直監督・2

  • 渡辺由美子

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2010年2月18日(木)

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―― 「マイマイ新子~」の中で、とても印象に残ったのが「明日はどうなるんじゃろう」という新子のセリフでした。子どもらしい楽しい日々を過ごしていた新子が、自分たちではどうにもならない現実に直面して、初めて「明日」が「昨日と同じ幸せな日」なのかわからなくなった、という感覚を味わったという。今、多くの人が、同じ気持ちを味わっていますよね。

片渕 たしかに今は希望が見えにくい時代なんだと思います。

 ただ、実のところ、いつだって、明日がどうなるかなんてわからなかったはずですよね。それは昔も今も変わらないはずで。昔のほうが自分が望んだ環境には遠い暮らしをしていたようにも思えるけれど、今より絶望感がより大きかったかというと、そんなの、一概には決め付けられないですよね。いつの時代にあっても、「今」はその時々を生きる人の「今」なのであって。

―― 確かに。昔より暮らしや環境は格段に良くなったという違いはありますが。

片渕 いつだって足りないように感じてしまうのが、希望を持つ心、なんじゃないでしょうか。よく「仕方ない」なんて言葉を口にしたくなってしまうんですが、越えられない現実は、何を持って越えられないと思うのか。ひょっとしたら、「仕方がないと思う自分の気持ち」が一番大きい要因なのかもしれないと思うんですが。

●作品紹介●

ゆったりとした自然に囲まれた山口県防府市・国衙(こくが)。
平安の昔、この地は「周防の国」と呼ばれ、国衙遺跡や当時の地名をいまもとどめている。この物語の主人公は、この町の旧家に住み、青麦畑を遊び場に過ごす小学3年生の少女・新子だ。おでこにマイマイ(つむじ)を持つ彼女は、おじいちゃんから聞かされた千年前のこの町の姿や、そこに生きた人々の様子に、いつも想いを馳せている。
彼女は“想う力”を存分に羽ばたかせ、さまざまな空想に胸をふくらます女の子であり、だからこそ平安時代の小さなお姫様のやんちゃな生活までも、まるで目の前の光景のようにいきいきと思い起こすことができるのだ。そんなある日、東京から転校生・貴伊子がやってきた。

公式ホームページより引用・編集)

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―― 「明日が信じられない」理由は、社会状況の落ち込みよりも、自分の心の落ち込みのほうが大きいのかもしれない。

片渕 仕方がないという言葉で、自分の明日をあきらめてしまう。それではなにか悔しいから、そんなの乗り越えていきたいと思おう。

 そういう事がすごく大事だと思うから、僕は、「自分の明日をあきらめない」映画を作りたかったし、人様にも届けたかったわけで。

「あきらめるな」と言ってくれる「他人」

片渕 「マイマイ新子~」の物語の中で、新子たちは、明日を信じるための約束をします。

 かわいがっていた金魚のひづるを失って悲しんでいる新子たちに、タツヨシという少年が、あきらめるな、明日みんなで探そう、そうしたら奇跡が起きるかもしれないと。そんな無謀なことをいって立ち上がらせる。そういうタツヨシ自身、金魚がみつかるかどうか、実際のところはわからない。けれども子どもたちは、タツヨシの「明日はみんなで笑おうやぁ」という言葉や思いを飲み込んで、「明日の約束」を交わす。

―― それは監督がおっしゃっていた、心がいったん子どもの頃に戻っても、大人である現実の自分をもう一度生きようと思えるのは、「いつでも子どもの頃に戻れるんだ」と信じられる“約束”があるからだというお話に通じますね。

片渕 ああ、そうかもしれないですね。

 明日に希望を抱いた瞬間にその人が一番きらきらしてたんだとしたら、それが損なわれたときに真っ先に思い出さなきゃいけないのは、それがいかにきらきらしていたのか、その姿なのかもしれません。

―― 日本でも、高度経済成長期のような「成長が信じられた時代」がありました。けれど、その輝きは失ってしまった。失ったものを思い返すのは、悲しいことのように思います。いっそ封印してしまったほうが楽になりそうですが。

片渕須直(かたぶち・すなお)
1960年大阪生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。宮崎駿監督が参加した日伊合作のTVアニメーション・シリーズ「名探偵ホームズ」で、脚本、演出補。89年の宮崎駿監督作品「魔女の宅急便」でも演出補を務める。96年の世界名作劇場「名犬ラッシー」では監督。2001年、劇場アニメ作品「アリーテ姫」では監督・脚本。同年にゲーム作品「エースコンバット04 シャッタードスカイ」にムービーパート監督・脚本として参加。06年のTVアニメ・シリーズ「BLACK LAGOON」では監督・シリーズ構成・脚本を担当。その他、数々のアニメーション作品に携わる。

片渕 一瞬はそれで楽になれるかもしれない。ですが、心にフタをしてあきらめたら、永久に手が届かないきらきらになってしまう。かたや、「こんな状況だから仕方がない」と、事を為す前からあきらめてしまう。あるいは、子どもの頃のきらめきは失われた、今の自分はあの頃とは断絶してしまった、という気分のまま生きる。どこか繋がってるのかもしれません。

―― なるほど。では、きらきらした明日を取り戻すためにはどうすれば良いと。

片渕 一人で仕方ないとあきらめてしまう前に、もっと「仲間」を見つけるべきなのかなあ、そう思います。

 映画の中の新子は、ある時、大人たちの世界の厳しい現実に直面します。そのとき彼女は、もう空想の中で遊んだり奇跡を信じたりするのはやめる、と言い出してしまう。きらきらした夢を封印したその時点で、彼女は「明日」をあきらめようとしてしまっている。

 だけど、そこで貴伊子という親友が、あきらめちゃだめだよと言ってくれる。

 貴伊子はそれまで、新子の遊びのあとをついていくような子だったのに、新子が明日をあきらめそうになったとき、初めて自分の意思を明確に持って、あきらめちゃだめだと言う。初めて自分の意思を明確に持って。彼女は、新子のきらきらしていた部分を、自分の心に抱き続けていたかったから。

 前にも僕は、「アリーテ姫」という映画を作ったんですが、そのときは、「絶対に諦めないお姫さまの物語。彼女は何をあきらめないかって? それは自分自身のことを」と、そんなお話なのだと自分で決めてかかりました。外界に待つ挫折ですらうらやましい、そうとすら思ってしまう閉塞的な状況にありつつ、でも、自分のことを自分で解決したいと願う、そんな意志を持った少女を登場させたかったんです。自分自身を力づけてくれるのは、そうしたものだと思ったので。

 「マイマイ新子~」では、主人公を新子と貴伊子の二人にしました。一人があきらめそうになったとき、あきらめちゃだめだと言ってくれる仲間、「他者」がいる、という話にしたんですね。

―― 今作では、なぜ、他者を意識されたのですか。

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