「川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記」

日本の1/4の時間で、普通の父母たちが学校を動かす

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2010年2月26日(金)

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 ニュージーランドの学校には、「学校理事会」(Board of Trustee)なるものがあって、学校経営のガバナンスを行う。

 ガバナンスというからには、マネジャー(校長)に実務を一任しながらも、学校が適切に経営されるよう監督し、最終的な責任を負っている。

 具体的な責務は、国家教育指針(national education guideline)に明記されている。
 まず学校なのだから、学力の増進が重視される。

・生徒の学力向上のためにふさわしい環境を整え、適切なカリキュラムを用意し、常に自己評価し、改善すること。

 より具体的には、asTTLeやICASやNCEAといったテスト(それぞれ性質は違うが、いずれも自校生徒の学力の相対的位置づけを知りうる)など第三者による客観的な評価を参考に、学校における学習のよいところ悪いところを同定し、設定した目標に向かうために戦略を立て、常にモニタリングし、軌道修正していくこと。

これぞほんとの「取締役」。教員人事に大きな権限

 さらに、学校理事会は、学習の場である学校の様々な面で責任を持つ。
 列挙すると──

・学校施設についての責任。施設に破損箇所があれば補修するし、古くなれば更新する。そして、生徒が使うに際しての安全面に問題があれば、対処する。特にプールの安全管理などは、日本と同じで一大関心事となる。もちろん、これらに実際に対処するのは学校のマネジメント側だが、学校理事会はそれを常に適切であるよう監督する。

・校長の任用と評価、そして、教職員の人事にも責任を持つ。毎年、教員は入れ替わるから、新しい教員を選ぶのはひとつの大きな仕事だ。理事会メンバーは面接にも出席する。
一方、校長は日本とは違い、10年以上の長期にわたって在任するのが普通だから、いざ、校長が変わる時には、学校理事会は「今後の10年」を左右する、非常に大きな責任を持って新校長選びにのぞむ。

学校理事会は、校長・教職員の雇用者なので、通常の会社の雇用者と同様に、「従業員」の労働環境に責任を持つ。
学校の予算管理、財務に責任を持つ。
国の教育省、学校共同体(スクールコミュニティ、つまり保護者共同体)への報告義務を持つ。

 などなど。
 これは、学校を「企業」に、学力の増進を「収益」に置き換えれば、そのままコーポレートガバナンスに読み替えられる部分が多いのではないだろうか。

素人の父母がなぜ「学校」を「経営」できるのだ?

 学校理事会のメンバーは、主として選挙で選ばれた保護者代表だ。そこに校長や教職員代表が加わり、ハイスクール(日本の中学2年から高校に相当)の場合、生徒代表が加わることもある。

ボードミーティングで配られた資料。その日のアジェンダが一覧になっている。
画像のクリックで拡大表示

 日本では自治体の教育委員会が行う仕事を、個々の学校単位で保護者がしているわけで、この制度を知った時には本当に驚いた。公立ではなく「保護者立校」ではないか、と真剣に思う。

 けれど、日本の中央集権的で、階層的に組織化されたやり方に馴染んでしまっているぼくには、なぜ、そんなことが可能なのかよく分からない。

 国が決めた大枠にニュージーランドナショナルカリキュラムがあるとはいっても、指導要領はない。従って、学校独自に国の要求を満たす独自のカリキュラムを開発しなければならない。

 指導要領も検定教科書も完備した日本の公立学校の場合、そもそも自由度が少ないわけだが、独自に決められる部分については、自治体ごとの教育委員会事務局が作った素案を教育委員会で議論し採択するという形式を取る。民間から任用された教育委員は、おおむね、ガバナンスと呼んでよい仕事をしているわけだ。しかし、よほどのことがない限り、事務局側が用意した案を追認して終わると、ぼくは理解している。

 では、ニュージーランドの学校理事会はどうなのか。誰かが素案を用意して、それを保護者代表である理事会メンバーが追認するスタイルなのだろうか。

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著者プロフィール

川端 裕人(かわばた・ひろと)

川端 裕人 作家。1964年生まれ。11歳の息子、9歳の娘とともに、2009年7月から2010年1月までニュージーランドに長期滞在。著書に『PTA再活用論』(中公新書)、『バカ親、バカ教師にもほどがある』(PHP新書、聞き手川端裕人、著者藤原和博)などのノンフィクション作品、『算数宇宙の冒険』(実業之日本社)、『(1)嵐の中の動物園 三日月小学校理科部物語』(角川つばさ文庫)などのフィクション作品がある。



このコラムについて

川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記

保護者への義務なし、強制なし、罰則なし、それでも選挙になるくらい学校運営への協力者が現れる−−? 実験国家ニュージーランドではそんな教育システムが現実にある。参加者がモラルを保ち、自主的に協力する、運営者にとっては夢のような「ゆるくて、ゆるがない」コミュニティ。いったいどうして出来上がったのか。現地に半年間在住し、保護者として実際に学校のガバナンスに関わった著者が根ほり葉ほり探ってきた「明日の学校」の姿から、「明日のガバナンス・マネジメント・コミュニティ」が見えてくる。

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