「フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える」

貴兄のお子様、家のクルマの名前知ってます?

第31回:マツダ ロードスター【試乗編】

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2010年2月25日(木)

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 みなさまごきげんよう。フェルディナント・ヤマグチでございます。

 どのような書き方をするにせよ、“批判記事”を物するのは実に難しいものです。前回ディーラーのマイナス部分を表現するに際して、私の直感的なインプレッションだけでなく、7年連続輸入車ナンバーワンという、“客観的な高評価”をも併せ挙げた上で、私個人の超近視眼的な例を「極めて希な“外れクジ”」、なる言い回しで記述しました。つまり、「評判がいいクルマほど、作る側も売る側も細心の注意が必要なのでは」と言いたかった。件のクルマは掛け値無しに素晴らしい。これは間違いがない。しかし残念ながら、私の意図とは外れた解釈をなさる読者の方も多かったようです。ネットで「結局ヤマグチさんは、最後に落とす事が目的で持ち上げたんですね、けなすために誉めたんだ」という趣旨の書き込みを見たときは、さすがに腕を組み、「う〜む」と唸りました。

 物を書く上での大原則があります。こちらの意図は一切際関係が無い。読者諸兄に「どう受けとめられたか」、が全てである、というものです。クルマをお借りして記事を書くに当たり、マイナスが強調して印象付けられてしまえば、取材に応じて下さった方も堪らないでしょう。意図したことが思い通りに伝わらないのは、自らの筆力不足以外の何物でもありません。ただただ恥じ入るばかりであります。

 何人かの方にご指摘いただいたように、批判の一方通行はフェアではありません。先様に反論がおありであれば、謹んで拝聴しなければいけないし、またそれを正確に皆様にお届けする必要がある。いつなりとお待ちしていることを、申し添えさせて頂きます。インターネットメディアの特性を最大限に活用し、インタラクティブでオープンな議論が出来れば、それこそが“フェア”というものでしょう。

 この度はたくさんのご意見を頂戴し感謝感激であります。「よく言った!」とお褒め頂いたものから、「死ねバカこの野郎チョーシに乗んな!」というお叱りまで、全てのご意見を有り難く拝聴いたしました。読者諸兄からいただく叱咤激励こそが当欄のパワーの源泉であります。今後ともご指導ご鞭撻の程、伏してお願い申し上げます。

*   *   *

 さてさて、今週からお伝えするのはマツダのロードスター。

 フロントエンジン・リアドライブという伝統的なレイアウトに、オープンボディ2シーターという何とも思い切りの良いスタイルを採用した、極めて趣味性の高いクルマです。21年前にデビューしたときは、マツダの社内からさえ「こんなクルマが売れるのかよ」と疑いの目で見られていましたが、その後のサクセストーリーはご存じの通り。日米欧で売れに売れ、BMWのZ3、フィアットのバルケッタ、メルセデスのSLK……と多くのフォロアーを産んだ、日本車には珍しい、正に世界の流行を自ら作り出した、エポックメイキングとも言えるクルマです。

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特に話題もありませんが、好きなので取り上げます

 ところで何で今頃ロードスター? ニューモデルでも出たんだっけ? と訝しく思われる方も居られましょう。いえ、新しいモデルは出ていません。5年前にモデルチェンジをし、その翌年にパワーリトラクタブルハードトップ(RHT)が追加設定されて……そのままです。一昨年にマイナーチェンジが施されましたが、それも内外装やエンジンマネジメントを少々。それと触媒に手を加えた程度で、文字通りの“マイナー”チェンジ。ではなぜ今頃ロードスターなのか。

 それはこのクルマが本欄で追及している「クルマの楽しさ」を、商品化して売ることに成功した、日本車として類い希なる存在だからです。これは是非とも取り上げたい。しかし何も新しい話題がない時期にフィーチャーしても良いものでしょうか。担当Y氏に恐る恐る相談してみると、「ああ、いいっスよ。乗りたいクルマに乗って下さい。僕も乗ってみたいし」と男気の二つ返事。そうした背景から(背景ってほどでもないですが……)今回は広島のマツダが産んだ世界の名車、ロードスター。まずは試乗記からお送りします。楽しんでつかあさい。

*   *   *

 最近の若いモンはまったくなっていない。

 今春から高校に進学するウチの豚児もそうだ。クルマにまったく興味を示さない。いくつかのクルマ雑誌に連載を持つお陰で、拙宅には入れ替わり立ち替わり様々な試乗車がやってくる。だが彼はどんなクルマが来ても、文字通り“見向きもしない”のだ。朝起きたら家のガレージに威風堂々の巨大なSUVが停まっていたり、流れるようなボディラインのスポーツカーが停まっていたりしたら、普通は「わースゲー。これ何て言うクルマ?」と大騒ぎしないだろうか。最近彼がクルマに関してコメントを述べたのは、アウディQ7のオーディオくらいのもので(バング&オルフセン製のサウンドシステムが装着されていた)、エンジンを掛けると、ダッシュボード上にニューっとツィーターがせり出してくるギミックに手を叩いて大喜びした。おい喜ぶところはそこじゃないだろう。クルマはどうなんだ。

 彼の友人達もまた同断で、何人か連れ立って家に遊びに来ても、誰も興味を示さない。
「こんちはっス」
「やあいらっしゃい。見ただろあのクルマ。BMWのZ4」
「……はぁ……凄いスね」
「凄いスねって君たちさ。あれを見て何も思わんのか?」
「速そうですね」
「前が長いスね」
「ウチのクルマと同じかなぁ。同じマークが付いてるから」
「や、君のお父さんはBMWに?」
「……良く分かんないスけど……多分」

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フェルディナント・ヤマグチ

フェルディナント・ヤマグチです。皆様と同じようにビジネスの最前線で仕事をする傍ら、アチコチの雑誌で連載を持っています。つまりクルマ業界に接してはいますが、本業ではない。首まで浸かっていない故、かえってギョーカイのシガラミや仕来りを超越して、好き勝手なことを書き倒すことが出来る微妙且つナイスなポジションに立っています。もちろん皆様と同じように昔からクルマが大好きで、学生時代はかなり無理をして懸命にクルマを購入したクチでして、一番最初に買ったのは、初代RX-7でした。最後は青山墓地の前で追突され大破してしまいましたが、あれは良いクルマでした。本業はかなり堅い会社で管理職を務めるリーマン稼業なものですから、顔出しNG&ペンネームで失礼いたします。や、そう警戒なさらないで下さい。決して怪しい者ではございませんので。



このコラムについて

フェルディナント・ヤマグチの走りながら考える

 この度、故有りましてこの日経ビジネスオンライン上で、クルマについて皆様と一緒に考えていくナビゲーター役を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いします。
 なに、“考える”と言ってもそれほど大袈裟なことではありません。クルマはこれからどうなって行くのか。現在売り出されているクルマは何を考え、何を目指して開発されたのか。実際にクルマに乗り、開発者に会ってお話を伺い、販売現場からの声にも耳を傾ける……。ビジネスはビジネスとして事実をしっかりと捉まえた上で、もうちょっとこう明るく楽しくクルマを味わって行こう、というのがこの「走りながら考える」の企画意図です。

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