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「大きな物語の喪失」を「知らんがな、そんなの!」で飛び越えろ

「劇場版 交響詩篇エウレカセブン」京田知己監督・2

  • 渡辺由美子

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2010年3月12日(金)

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 劇場版「エウレカセブン」の作中で、「神話」と、その筋書き通りに物事を進めようとやっきになる人々の姿を描いた京田監督。

 今の世の中は、情報が大量に届くために、何が「正しい物語」なのかがわからない、だから価値観を委ねられるような大きな物語が求められている、それこそが「時代の欲望」なのではないか、というお話をうかがいました。

●作品について●

 西暦2009年、南極大陸で謎の生命体イマージュが発見された。宇宙より飛来したといわれるイマージュは、地球の侵略を開始。以降、人類を統べる人民中央政府はイマージュ攻略のための研究と、殲滅のための戦闘をおよそ半世紀にわたり展開することとなった。西暦2054年、人民解放軍のホランド・ノヴァクが指揮する戦闘母艦・月光号は、イマージュに攻撃される基地から、最重要機密を確保する作戦を実施する。少年兵レントン・サーストンは、パートナーのニルヴァーシュを駆って基地に潜入。そこに幽閉されていた少女・エウレカと再会する。(※「交響詩篇エウレカセブンポケットが虹でいっぱい」公式パンフレットより引用、編集。リンクはhttp://www.eureka-prj.net/#)映画はテアトル系映画館で、モーニング&レイトショーを中心に全国6館で封切られるが、全ての劇場で初日初回満席スタート、動員好調により、6月には16館に増やしての拡大上映が決定した。観客動員7万人、興行収入1億円、ソフトはDVD・BDなどの合計で8万2000枚を突破した。

(c)2009 BONES/Project EUREKA MOVIE

―― 監督のご意見では、誰かのコピーであるかどうかを考えるのはやめたほうがいい、「生きているだけで自分が作ったオリジナルレコードの神話になる」ということでしたが……。世間の「情報」を追わずに、自分だけの物語を作るというのはリスキーな気もします。筋書きを追わない、筋書き通りにいかないストレスに、私たちは耐えられるのかどうか。

京田 知己(きょうだ・ともき)
1970年1月22日生まれ。大阪府出身。武蔵野美術大学造形学部映像学科卒。グラフィックデザイナーを経てアニメ演出家。2003年、劇場版「ラーゼフォン 多元変奏曲」で監督デビュー。2005年にTV版「交響詩篇エウレカセブン」、2009年、劇場版「交響詩篇エウレカセブンポケットが虹でいっぱい」で監督を務める(写真:星山 善一、以下同)

京田 僕は物語作りを仕事にしているために特にそのように思うのかも知れませんが、人生って、思い通りになることが重要なんじゃなくて、思い通りにならないことで起こるコンフリクション(衝突)のほうが面白いと思ってしまうんですよ。それが「人間ドラマ」だと思いますし。

 ドラマの中では、いろいろな出会いがあって、別れがあって、その全体が、当人のイニシエーションになっている。実際に僕たちが生きているときだって、そうですよね。いろいろな状況下で、自分が知っている情報を自分なりに解釈して、自分はどういうふうな方向性で生きていくのかという意思を決めて動いている。そんな個人と個人が出会うことによって、コンフリクトが起こる。

 別に僕たちは、「世界の状況がこうだからこうあるべきだ」という形で動いているわけじゃないですよね。

―― そうなのかもしれません。けれど、社会の状況がこうだからこうしなきゃいけない、という思考に私たちは行きがちですし、これが正解だというものが得られない分、ひたすら情報を求めて、その結果「何が正しいんだろう」と惑う。

京田 それはそうですし、それを否定するつもりもありません。だいいち他人の情報がまったく気にならない人なんて、世の中ではごく少数派です。もちろん僕もそうです。

「大きな物語」を必要としている人たちの対極には「知らんがな」がある

京田 だからこそ、劇場版「エウレカ」でやってみようと思ったんです。「神話」という「情報」を必要としている人たちと、神話を必要としてない人を出して、対立軸に置いてみたらアクチュアルな面白い構造が出来るんじゃないかと。

―― 神話を必要としてない人?

京田 主人公のレントンとヒロインのエウレカは、「情報」というものに、本質的に興味がないんです。

 大人たちは神話通りに動かないと世界は滅びると言っているんだけど、それに従うとレントンはエウレカを失うことになる。レントンはエウレカを守りたい、エウレカは自分の命が短くなっても、レントンのいるこの世界で生きることのほうを選ぶ。「情報」に興味がないというより、必要としていないんです。

 「神話」? そんなばかばかしいシナリオなんて知らんがな、という感じで(笑)。

―― 「知らんがな」ですか(笑)。情報に左右されない人、ということですか。

京田 左右されないというよりも、惑わされないというか、自分たちの感情の発露をしばりつける「情報」自体に興味がない。むしろ憎悪しているんです。だから当然、そいつらは理にかなったことをやってくれないんですよ。

 「情報なんか知らんがな」という人の行動は、「神話としてはこういうシナリオなんだから」という人にはまったく分からないですよね。だから周囲は翻弄される。何であいつはあんなに理屈に合わないことをするんだと、いらいらばかり募る。

 そういう衝突って、もちろん実社会にも起こっているだろうし、僕はその「知らんがな」という人たちの方が、世界を変えるんじゃないのかな、と思っているんですよ。

―― 「情報なんて知らんがな」という人が世界を変える、というのは面白いですね。勢いがあって。ラストのほうには、レントンたちの行動に突き動かされた“シナリオ側の人間”から「あなたの夢に乗っからせてもらうわ」という台詞も出てきました。

京田 現実の社会では、なかなか感情だけで動くことは難しいですよね。

 ただ、もしも人が極限状態に置かれたなら、それをストレートに出すことが出来るのではないかと考えて、今回の劇場版の舞台設定を作りました。人が極限状態に置かれたなら、結果として人間は、感情だけで動く場面が絶対に出てくると思ったんです。

 極限状態になったらどうするかなんて、今の日本の実社会で生きていくときにはあまり考えなくてもいいことですよね。逆に言えば、感情的にならなくても生きていけるというぐらい、日本って幸せなわけで。アニメーションなら、架空の極限状態を描いても、ある程度リアリティを持って見てもらえるのではと。

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