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「明日の学校」は、経済危機によって生まれた

2010年3月19日(金)

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 ニュージーランドには、日本とは違った学校文化がある。
 国が違えば文化が違うのは当然で、それは善し悪しを超えている。

 しかし、今、日本の社会が教育をめぐって、とりわけ保護者と学校の関係、つまり学校共同体のあり方において、閉塞感を抱かざるを得ないような状況にあるとしたら、「よその事情」をのぞきみてみる価値は十分にある。これまで現地の人々と議論してきたことの背景には、常にそのような問題意識があった。

 異文化を体験することで、自分たちが「これしかない」と思い込んでいる部分に、意外な対案があったり、アレンジして活用できるアイデアが得られる可能性も常にあるし、少なくとも「視野が広がる」効果は期待できる。「実験国家」として名高いニュージーランドの教育であれば、なおのこと。

 ここで改めて整理を試みると──ぼくがみたニュージーランドの教育と学校共同体のあり方は、まず最初の印象として「非常にゆるい」ものだった。
 授業もリラックスムードなのは述べた通りだし、保護者と学校をめぐる学校共同体において、保護者はなにも強制されず、しかし、「門戸は常に開いている」のだ。日本のPTAのように「任意だけれど全員参加」などという不可思議で曖昧な領域は存在しない。

「わりと熱心」にかかわる親は60人くらい

 保護者が学校にかかわるやり方の中で、まず基本となるのは個人面談だ。

 自分の子どもの学習について、家庭と学校の連携をはかること。セントマーチンズ小学校では、年に3回行われ、保護者と担任が話し合う。日本のような保護者会はないので、これが唯一の学校や担任との直接的なつながり、という親もかなりいる。

保護者と子どもたちがダンスを踊っている。このように、保護者がかかわるイベントは多い。

 これに加えて、もっと突っ込んだかかわりをする場合、そこから先、3つの層があるように思う。

 1つ目は、担任や学年主任からの呼びかけに応じて、授業や校外学習、キャンプなどのヘルプに入ること。自分の子どもだけではなく、クラスの子、学年の子とかかわることになる。
 2つ目は、学校全体にかかわることで、PTA活動に参加したり、資金集めの活動をしたりすること。
 そして、3つ目は、保護者代表の学校理事会メンバーとして、学校経営の責任者としてガバナンスを行うこと。

 これらは、ひとつひとつ層を上がるごとに保護者への要求度が高くなる。保護者個々人の余裕や考え方によって、どういう付き合い方をするか決めることになる。

 セントマーチンズ小学校では、年に1度「ワイン・アンド・チーズ・ナイト」というものが学校とPTAの主催で開かれる。これは1年のうちに、1度でも、クラス・学年・学校にかかわる活動をした保護者を招いて、感謝の意を伝えるもので、その名の通り、夜、チーズを食べ、ワインを飲み、歓談する。昨年、450ほどある世帯のうち、220世帯に招待状が送られ、実際に参加したのは60人ほどだった。

 この数字から分かるのは、強制力が働かなくとも、半分くらいの保護者は「自分の子ども」から一歩踏み出して、クラス・学年・学校の運営や環境の向上になんらかの形で協力していることだ。さらに、「ワインとチーズ」の誘いに乗って集まった60人ほどは、「わりと熱心」な人で、様々な活動で顔を見ることが多いことにもぼくは気づいた。さらにさらにいえば、学校理事会、PTA、資金集め活動など、要求の大きな役割を担っている(担ったことがある)人たちは、だいたい常に20人くらいであることも聞き取った。

 これで学校の共同体は回る。決して、「みんな一緒」を無理強いする必要はない。

「わたしたちの学校」という意識を持った人たちが多く集い、学校共同体はゆるいけれど強い。

 日本の状況を背負ってこちらに来ているぼくにとっては、なんとも不思議な光景が現出している。
 なぜ、こんなことが可能なのか。

コメント1件コメント/レビュー

保護者統治の学校システムが導入された当時のニュージーランドが経済危機にあったことと、現在の日本が借金漬けで国を経営していることが、なんとなくだぶっているように感じました。「新しい公共」が内閣府で審議されているようですし、市民に行政の仕事を少しずつ投げていくのがトレンドなのかと。経済格差が教育格差、子どもの関係的・経済的貧困から教室にいても授業が理解できない状況、指導要領・教科書検定等による微細にわたり規定された学習内容、システム(実際に保証されているかは別問題)、ガチガチな閉塞感を日本の教育に感じます。現場に近く「任された」ひとが力を発揮するニュージーランドのシステムは、ちょうど「吉越浩一郎の「結果の出る会議」」のシステムとも似通ったものを感じました。(2010/03/24)

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「「明日の学校」は、経済危機によって生まれた」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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保護者統治の学校システムが導入された当時のニュージーランドが経済危機にあったことと、現在の日本が借金漬けで国を経営していることが、なんとなくだぶっているように感じました。「新しい公共」が内閣府で審議されているようですし、市民に行政の仕事を少しずつ投げていくのがトレンドなのかと。経済格差が教育格差、子どもの関係的・経済的貧困から教室にいても授業が理解できない状況、指導要領・教科書検定等による微細にわたり規定された学習内容、システム(実際に保証されているかは別問題)、ガチガチな閉塞感を日本の教育に感じます。現場に近く「任された」ひとが力を発揮するニュージーランドのシステムは、ちょうど「吉越浩一郎の「結果の出る会議」」のシステムとも似通ったものを感じました。(2010/03/24)

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