二回に渡ってお送りした、ミスター・ロードスターこと貴島孝雄氏のロングインタビュー。お楽しみ頂けましたでしょうか?
インタビューを終えた帰り道、我々はマツダ東京本社の並びにある帝国ホテルに寄って、このホテル創業以来の名物であるパンケーキをパクパクやりながら話し合いました。編集Y氏とカーセンサー藤野氏と私の、むくつけき野郎3人がガン首並べてパンケーキを貪る姿は、端から見れば“異様”そのものだったでしょうが、興奮冷めやらぬ我々は他人の目など一向に気になりません。
「いやあ、今回は本当に面白かったですねぇ…….」
「うん、取材する俺たちが面白がってちゃいけないんだろうけど、本当に楽しかった。いろいろ勉強にもなったし」
「でもヤマグチさん、量産ミッドがFFベースなんてことは基本中の基本ですよ。あんなところで感心しないで下さい。貴島さんも呆れてましたよ」
「そうかなぁ……。貴島さんも楽しかったんじゃないのかな? あれだけ時間オーバーしても、まだ話し足りなそうな感じだったし」
「そんなワケないでしょ。どんだけ楽観的なんですかホント」
「しかし貴島さんて凄いよね。普通の人間ならとても成し遂げられないような仕事をされてきて、大変なご苦労もあっただろうに、それを眉一つ動かさずにサラっと話すんだもの。稀代の名車を造り上げた人なのに、傲ったところが一つもない」
「同感です。本当に偉い人は偉ぶらない。本当に強い人は強がらない。ヤマグチさんとは大違いです」
「フンだ。Yさんこそ“みちのく一人旅”のセピア写真にサインもらってキャアキャア騒いでたくせに。ジャニーズの追っかけじゃあるまいし、取材に行ってサインもらうヤツがいるかいな」
「今回は特別です。このサインは家宝にします」
朝青龍引退の号外をヨソに盛り上がる
当日はちょうど朝青龍が電撃引退した日で、店内でも号外が配られていました。ケータイのワンセグで記者会見を見る人の回りには、それを覗こうとする人だかりが出来るほどの騒ぎになっています。しかし我々は文字通り“それどころの騒ぎじゃない”。プロの凄み、誇り高きエンジニアの矜持に触れ、制限時間を大幅にオーバーしたロングインタビューの余韻に酔いしれていたのでありました。そしてこの感動をどのようにお伝えしたら良いものか、大いに悩みました。
書き手によってインタビューの方法は様々です。私は基本的にインタビューの最中にメモを取ることはありません。理由の一つはペンを走らせることにより集中力が削がれてしまうからで、もう一つは余りの悪筆故に、何を書いてあるかが(自分の書いた字であるのに)後でサッパリ分からなくなる事が多いからです。貴島氏の取材を終えてから数日後、Y氏から当日録音した会話を忠実に再現した、いわゆる“テープ起こし”が送られてきます。
これがまた何度読み返しても面白い。読み返す度に新しい発見があります。どこを書き、どこを捨てたら良いのか全く判断が付かない。もうこのまま全部載せてしまおうかと思うほどに充実した内容です。しかし現状のペースで全文掲載していくと、20週間連続掲載しても足らないほどの分量。これではこの「走りながら考える」が「週刊ミスター・ロードスター」になってしまう。ですから前回まで二回に分けてお届けした文章は、私なりに煮詰めに煮詰めた、フォン・ド・ボーのようなものなのであります。
というわけで、クルマとしての総括はもう付け加える点はほとんどない。
今回は、貴島氏がインタビュー中に何度も、「お客さんをナメちゃいけません」「ウチのお客さんならそれが分かります」と表現された“乗り手”の方々はどのような人なのか。例によって街中でイキナリ声を掛けさせて頂きました。そしてこれがまたエラいマニアに当たってしまった。以下、街頭突撃インタビューです。お楽しみ下さい。
土曜日の昼過ぎ。環状八号線沿いにあるクイーンズ伊勢丹の自走式立体駐車場。買い物に出かけたら赤い三代目ロードスター(NC)が停まっている。右側が空いていたのでそこに私のクルマを滑り込ませ、オーナーが帰って来るのを待つ。すぐに紙袋をぶら下げた30歳代の男性が店内から出てきた。
「あのぉ、スミマセン。このおクルマの持ち主の方ですか?」
「……そうですけど……」
「ロードスターの事で少しお話しを聞かせて頂けませんか?日経ビジネスオンラインというサイトがありまして、そこにですね……」
私がここまで言いかけると、彼は「えぇ!」と頓狂な声を上げてこちらに歩み寄って来た。
「あなた、フェルナンドさんですか?」
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