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工業製品に「まさか」を生ませる方法

「CANAAN」安藤真裕監督・2

  • 渡辺由美子

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2010年4月2日(金)

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―― たくさんの娯楽に囲まれている今のユーザーは、どんな物語を提供してくれるのか、この番組を見続けて満足できるかどうかを早く知りたがる。だから、「すぐに答えが欲しい」というクールな割り切りがある。

 それに対して、安藤監督は、「過剰」さを追求することで、作品と制作現場のエネルギーを上げたいということでした。「過剰」さを出すことで、ユーザーが気になるフックを増やし、「つぎにどうなるかわからない」という引き込み方をした、と。

安藤 「不確定な要素」は意図的にでも入れたいなと思っていたんですね。

―― 不確定な要素?

●作品について●

「CANAAN」は平成21年度(第13回)文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品アニメーション部門・長編(劇場公開・テレビアニメ・OVA)に選ばれたテレビアニメ。ゲームソフト「428 ~封鎖された渋谷で~」(チュンソフト)のボーナスストーリーから生まれた。Blu-ray Disc & DVD 全6巻 発売中(公式サイトはこちら)から。

(C)CHUNSOFT/Project CANAAN

安藤 「ライブ感」ともいうんでしょうか。

 音楽のライブでもそうですよね。その場の不確定な要素が入ることで初めて出る面白さがある。実写映画もそう。役者さんの表情や芝居とかの不確定要素が入り込んで、「まさかこうなるとは」という予想外のものが生まれる。

 「CANAAN」にもそうした不確定要素が入って、少しでもお客さんが引っ掛かりを持ってくれたらいいなと。

―― しかし、アニメはライブじゃありませんよね。不確定、ということと結びつきにくくないですか。

安藤 工業製品のように、指示したもの、仕様通りのものを完成させることをゴールにするんじゃなくて、人間の持つ“熱”が入って、偶発的な思いも寄らなかったものが生まれてきて欲しいなと。

 フィルムの中に何かを宿すような、作り手の過剰な思い、それは、スタッフひとりひとりが持っている「個性」ですよね。

ゴールにたどり着けることの確信あってこそ

―― 監督がおっしゃる「個性」は、スタッフ一人ひとりが持つプラスαの部分、「工夫」「アイディア」というところでもありますよね。今、決まった仕事をきちんとこなしていても、その先の展開に行き詰まるということが多くあります。社員の個性を引き出して新しいものを生み出したいというのは、どんな職種にも当てはまるかも知れません。

 魅力的な商品を作るために、「個性」をどのように引きだそうと?

安藤 アニメーションの中で個性という「不確定さ」、ライブ感を発揮してもらうには、クリアしなければいけないことが幾つかあるんです。

安藤 真裕(あんどう・まさひろ)
北海道出身。高校を卒業後、アニメ制作会社に入社しアニメーターとして「エースをねらえ! 2」や「おにいさまへ…」などに参加。その後フリーとなり、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」や「新世紀エヴァンゲリオン劇場版」「COWBOY BEBOP 天国の扉」などに参加。「鋼の錬金術師」の演出などを経て2007年9月に公開された劇場用作品「ストレンヂア -無皇刃譚-」で初監督。「CANAAN」は初のTVシリーズ監督作品となる。

 まずひとつには、TVシリーズという、ロングランな期間の作品作りの中で、物語が拡散してしまわないようにすること。

 普通の企業で言うと、商品コンセプトにあたるんでしょうけれども。

 「どんな話なのか」「どんなテーマを持たせるか」。ここだけは軸をしっかりさせていないと、各スタッフが個性を出したときに、とっちらかって、ひとつの作品として何が言いたいのかよく分からないということになってしまうんです。

 だからまず軸を作る。ゴールにたどり着くことを確信できた上で、ライブ感に振っていく。

―― その「軸」はどのようにして作られたのですが?

安藤 「CANAAN」全体の世界観や大枠のところは僕が決めたんですが、各話のストーリーについては、シリーズ構成(各話のシナリオを監修する仕事)の岡田麿里さんが作ってくれています。

 彼女がシナリオを担当してくれることが、軸作りには欠かせなかったですね。

―― シナリオというのは、登場人物のセリフとともに物語の筋を作っていく、演出や作画より前段階に入る、物語の骨子ですよね。

安藤 そうです。最初に僕の中で、岡田さんに決めた理由というのがあったんです。
 キャラクターが女性なので、女性の繊細な心理が書ける人にしたい。一方で、ストーリー運びとか物語づくりには俯瞰的な視点が欲しい。岡田さんは、異なる資質の両方をうまく持ち合わせている方なんですね。

 そして、シナリオに腕力がある。

―― 腕力?

安藤 いくつかのシーンの選択として、こっちの方が正解なんじゃないの? という隙を見せない。

 そして、各話それぞれの演出や作画、声の担当の人が個性を発揮して“暴れて”も、必ずみんなが納得するところに、物語の軌道をぐるーっとしながらも(ハンドルを握って、車の横滑りを止める動作をしながら)収めてくれるだろうなと。

 言い換えると、「ちゃんと終わる」仕組みを作った上でないと、「商品」をつくるときに冒険なんて怖くてできないですよ。

 僕が監督を引き受けるときの条件として、シナリオを岡田さん、作画を関口可奈味さんがメインでやってくれるというのが最初にあったんですね。

―― それがあってこそ、みんなが「個性」を発揮できると。

システムに拠った作りで「感情」を入れるには

安藤 そうですね。個性を発揮できる環境作りをしていくわけです。

 環境というのは、物語というソフトと、工程というハードの両面ですね。
 クリアしなければならない課題のもうひとつというのは、アニメーション制作現場の中の話なんですけれども。

 アニメーションというのは、工程上、制約が多いメディアなんです。1本のアニメーションを作るには、膨大な工程があって、それぞれのセクション中に、ひとりひとりのスタッフがいる。1本のアニメーションを作るには、大勢の人間が関わって連携しなければいけないんです。

 だから、「個性」といったって、それぞれのスタッフが好きなことを好きなようにやってしまうと、各シーンでの動きがバラバラになったりと、作品として成立しない。

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