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『サリンとおはぎ』は、憎めない自己啓発書
~あの地下鉄に乗った男の運命を赤裸々に

2010年3月24日(水)

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サリンとおはぎ 扉は開くまで叩き続けろ』さかはらあつし著、講談社、1500円(税抜き)

 アマチュアとプロの違いは何か?

 ひとによって答えは様々あるだろうが、なるほどなぁという解答例が、本書のなかで紹介されている。

「アマチュアは負けたら腹を立てるが、プロは負けても腹を立てない。それが違いよ」

 こう語るのは、海外生活が長い、ダイヤ商として名の知れた人物で、著者の伯父にあたる。

 会社を退職し、別の人生を歩みだそうとしている著者を伴い、伯父が、ジュネーブの色石専門の大きな宝石商を訪れたときのことだ。伯父は、これはというエメラルドを目にしながらも、仕入れを保留する。その理由を、著者にこう説明するのだ。

「あのエメラルドは確かにええ石や。でも想定しているお客さんが買(こ)うてくれるかどうか自信がない。買うて売り切れんかったら、俺は腹が立つ思うんや。ダイヤやったらそんなことは絶対にない」

 いっぽう、ダイヤの仕入れとなると一目で即決してしまう。そのスピードに驚かされるのだが、基準はシンプル、「輝くか」「輝かないか」だけだという。

 「一般の人、特に日本の人はダイヤモンドのグレードを大事にしているが、究極的にそんなものは何の役にも立たない」と伯父は言い切り、顧客に対しても「気に入ったものを買ったらええ」と態度を変えない。

 そういえば、島田紳助が司会のテレビ番組「開運! なんでも鑑定団」でも、収録会場が沸き返るのは、ひとから譲り受けた何百万もの壷や掛け軸が、鑑定人によって数千円と判定される瞬間だ。自信満々だった依頼人の落胆を見て、鑑定人が言うことばも決まっていて、「○○の作品ではありませんが、モノはいいものです。日用に使われたらいいのではないでしょうか」。

 素人が欲に目がくらむと大火傷をする見本でもあるのだが、いつも驚かされるのは「鑑定人」たちの判断の速さだ。こういうのをプロというのだろうが。

著者が特製バインダーを手放せない理由

 さて、長い前置きとなったが、本書はまずタイトルが変わっている。カバーのイラストに注目していただきたい。

 肩からタスキ掛けしたカバン、ストップウォッチと方位磁石、「歩いているときにもメモがとれる」ようにした特製バインダー。どれもが著者にとっては外出時に欠かせない道具で、一つひとつには、片時も手放せない理由がある。

 著者のさかはらさんは、京都の公立高校をビリで卒業した(共通一次試験は、1000点満点中、150点)ほどにダメダメだったのが、あることから一念発起し「京大」に入学(とはいえ、あきらめかけていた四年浪人の末)。就職も次々と面接に落ち続け、最後の最後に難関の「電通」。にもかかわらず、二年で退職。一転、アメリカ留学して「MBA」を取得……。

 そのときどきで、その後の人生を大きく左右する友人たちとの出会いを重ねていくなど、経歴の山の頂だけをかいつまむと、劇画の主人公のような華々しさである。

 しかし、ほんとうに異色なのは、電通時代に「地下鉄サリン事件」に遭い、アメリカから帰国後に結婚した相手が「元オウム信者」であったことなど、谷底の時間、ジョン・アービングの物語の登場人物をおもわす苦悶の体験にある。

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