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本当の「謝罪」に必要な3つのこと

「約束する」その4

2010年4月1日(木)

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「約束する」その1
「約束する」その2
「約束する」その3

 さて、ぼくは約束を守れなかった。そのとき、ぼくは謝罪しなければならない。約束したことは、実行すべきことであり、いかなる理由があったとしても、その責務を遂行しなかったことに、謝罪が求められる。「ごめんなさい」。

 この一言は、ときにきわめて口にしがたいものである。なぜか。それには多くの理由があるだろう。沽券にかかわるのかもしれないし、自分に責任を認めないのかもしれない。しかし謝らないと、相手は赦してはくれないだろう。そして相手の心のうちに、ぼくを恨む思いが澱のように残るだろう。

謝罪という行為の3つの次元

 謝ることには、過去、現在、未来の3つの次元が含まれている。「パリに一緒に行く」と約束したのに、それを実行しなかった。そのことでぼくは相手に謝罪する。それは、まず過去において自分が約束をしたこと、そして約束を守る真摯な意志があったことを認めることである。それは過去の自分が咎められるべき行為をしたことを認めること、自分の非を認めることである。

 謝らないということは、「約束なんかしなかった」と言っているか、「約束を守るつもりなんかなかった」と言っているか、「そんな約束なんてどうでもいいじゃないか」と言っていることを意味している。自分に非があったことを認めようとしないのである。

 それにたいして謝るということは、将来において同じことをしないことを約束することである。ドストエフスキーは、賭博に取り憑かれていて、有り金をすべてはたいてしまう。明日の暮らしにも困った彼は、若い妻に必死に謝る。「ごめん、賭ですってしまった」。そして約束する「もう二度と賭博はしない」。「彼がまだ若い妻に何度も繰り返して、もう絶対に賭博はしないとか、今日は絶対に賭博に手を出さないとか約束したり誓ったりしたのだった」[1]。謝るとき、そこには新たな約束が含まれるのであり、これからはしないという「悔い改め」の言葉が語られる必要があるのだ。

 そして謝罪という行為は、それが相手に向かって現在において語られることで、言語遂行的な行為となる。今ここで「ごめんなさい」と謝るその言葉そのものが、謝るという行為を実現する。それは「謝罪するという儀式を終えている」[2]のであり、その行為だけで完結している。これは典型的な言語遂行的な行為なのだ。そのときに約束を守れなかった理由を説明する必要はあるかもしれないが、ほかに説明しなくても、相手には謝罪するという意志が伝わり、謝罪という行為が完了するのである。

偽装された謝罪行為

 ところで、謝罪が言語遂行的な行為でなく、真の意味での謝罪を避けるために行われることがある。これは謝罪を偽装しながら、謝罪を回避する行為だ。これについていくつか考察してみよう。前回、言語遂行的な行為の条件として、一人称現在で語られることが必要であることが確認されていた。謝罪を回避するには、この条件を満たさなければよいのである。

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「本当の「謝罪」に必要な3つのこと」の著者

中山 元

中山 元(なかやま・げん)

哲学者、翻訳家。

1949年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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