「川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記」

“やりたい人がやるPTA”が学校共同体を強くする

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2010年4月9日(金)

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 ニュージーランドのPTAは、日本に比べて格段に「ゆるい」。
 全員参加などということはないし、ごくごく一部の余裕のある人が、会を切り盛りし、ほかの保護者はできる時には手伝う、くらいのスタンス。
 少なくとも、ぼくの子どもたちが通ったセントマーチンズ小学校では、そうだった。

 ただ、セントマーチンズ小学校のPTAは、ちょっと特殊だ。この国のPTAの主要業務とされる学校支援の資金集め活動が、PTAから独立して、行われている。

PTAの資金集めにゴルフトーナメント

 そこで、「資金集め」が主要業務といってもよいPTAのことも見てみたい。
 縁あって取材できたのは、市と空港の間にあるクライスト・ザ・キング小学校。PTAの月例集会に参加させてもらい、また、別の機会に質問にも答えてもらったのだが、セントマーチンズ小学校とは全く違った雰囲気に終始圧倒されっぱなしだった。

 まず、セントマーチンズ小学校は純然たる公立校(state school)なのに対して、クライスト・ザ・キング小学校はintegrated schoolといって、「半分公立」というような微妙な立場だ。名前からも想像できるようにキリスト教系(カトリック)の私立だったものが、財政難のおりに建学の理念は維持したまま国の支援を得て、公立扱いに「統合」された。公立校としてカウントされつつも、政府から与えられる資金はstate schoolよりも少ない。そこで、資金集め=ファンドレイジングがとても大事になってくる。

 全体集会は月に一度で、午後7時半にスタートというのはセントマーチンズ小学校PTAと同じだ。ただ人数が違う。出席者は20名。それでも、会長をはじめ、何人か都合がつかなかった主要メンバーがいるそうで、いつもはもっと多い。
 そして、すごい熱気。だらーんとリラックスムードの我がセントマーチンズと対極にあるといっても過言ではない。

 カトリック系なので、なにはともあれ、お祈りをする。そして、まず前回のおさらいやCorrespondence「外部とのやりとり」のことを述べたら、熱い報告やら議論の始まりだ。

 ぼくが出席した週の金曜日に行われる予定のゴルフトーナメントの担当者が、準備の状況、最終的な参加人数の見込み、当日のヘルプの必要性といったことについて語った。
 これは保護者が参加するトーナメントで、参加費から必要経費を引いたものがそのまま学校の資金源となる。主に父親をターゲットにしており、この年度内の最後にして最大の資金集め事業として、みんなが熱くなっているのだった。当日、バーベキューをして、それを買ってもらうなど、二毛作、三毛作的にさらなる資金集めをすることにもなっており、議論は尽きない。

 やはり、こういうのにはお祭り好きの人が集まるのだろう。イベントをオーガナイズして、晴れの瞬間が刻一刻と近づく高揚感。そして、それが直接、子どもたちに役立つという確信と喜びに満ちた会だったと思う。
 この年度、行ってきた諸活動を見せてもらったところ、セントマーチンズ小学校の資金集めの会よりも、ずっと大規模だったり、ひとひねりしてあったりするものが多い。特にびっくりしたのが、子どもをからめた「知識マラソン」(Knowledgethon)とでもいうべき手法。

「子どもがクイズに正解」で3000ドル稼ぐ

 この「マラソン」に参加するのは子どもたちで、PTAから出題されるクイズに回答する。高学年70問、中学年50問、低学年30問をPTAの担当メンバーで作り、それを「テスト」の3週間前に配布して、子どもたちは一生懸命暗記する。問題の内容は、ニュージーランドの歴史、政治、宗教、学校のこと、先生のこと、などなど。学校の勉強と直結するものから、ローカルな豆知識までバラエティに富んでいる。

 そして、決められた「クイズの日」に、子どもたちはテストを受けるわけだが、親は子どもが1問正解するにつき1ドル、50セント、などと任意に掛け金を決めて、あらかじめPTAに申告しておく。1ドルの掛け金で、高学年の子が70問正解したら、親はPTAに70ドル支払う。子ども10ドルごとにくじのチケットがもらえて、のちに抽選で、マウンテンバイクやらiPod(アイポッド)やら携帯電話などが当たる、という仕組みだ。こういった賞品は、地元の商店にスポンサーしてもらい、寄付でまかなっているそうだから、結局、子どもたちが頑張ってクイズに正答した分だけ、収益になるわけだ。昨年度の場合は3000ドルをたたき出した。

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著者プロフィール

川端 裕人(かわばた・ひろと)

川端 裕人1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン──銀河のワールドカップ・ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider
以前連載していた『川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記』はこちら



このコラムについて

川端裕人のゆるゆるで回す「明日の学校」体験記

保護者への義務なし、強制なし、罰則なし、それでも選挙になるくらい学校運営への協力者が現れる−−? 実験国家ニュージーランドではそんな教育システムが現実にある。参加者がモラルを保ち、自主的に協力する、運営者にとっては夢のような「ゆるくて、ゆるがない」コミュニティ。いったいどうして出来上がったのか。現地に半年間在住し、保護者として実際に学校のガバナンスに関わった著者が根ほり葉ほり探ってきた「明日の学校」の姿から、「明日のガバナンス・マネジメント・コミュニティ」が見えてくる。

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