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医療機関へのフリーアクセスは制限すべき?

  • 木村 憲洋

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2010年4月6日(火)

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 前回は、日本の医療の大きな特徴である「国民皆保険制度」を取り上げ、皆さんから多くのご意見をいただきました。そこで今回は、日本の医療を語るうえで、皆保険制度と並ぶ特徴的なシステムといえる「フリーアクセス」について、皆さんと議論してみたいと思います。

かかりつけ医経由でないと病院に行けない英国

 フリーアクセスとは、受診する医療機関を自由に選べる制度です。日本では、診療所から大学病院、専門病院まで、患者自身が望めばどこでも診てもらえます。「何だ、そんなの当たり前じゃないか?」と思われる方も多いかもしれませんが、実は、医療機関へのアクセスがこれほど自由な国は、世界的に見てもそれほど多くはないのです。

 医療機関へのアクセスという点で、日本と最も対照的なのは英国です。英国の医療は国民医療サービス(National Health Service:NHS)というシステムの下で提供されます。NHSの主な財源は税金で、医療機関の主たる収入は、NHSから配分される予算となります。また、受診時の患者の自己負担はありませんが、原則、地元の家庭医(General Practitioner:GP)からの紹介がなければ、専門医や病院にはかかれません(下図)。

英国における医療機関受診の流れ

 患者は地域のいずれかのGPに登録し、救急医療を除いて、最初の診療は必ずGPで受ける仕組みです。つまり、GPは、患者が適切な医療サービスを受けるうえでのゲートキーパー(門番)の役割を担っています。ただし、GPにおいても原則的に予約なしでは診てもらえず、受診まで数日待つということも決して珍しくありません。専門医や病院にかかるのはその後になるわけですから、日本と比べるとかなり不便です。

 また、英国では、“小さな政府”を目指したマーガレット・サッチャー政権下で不採算病院の閉鎖やそれによる地域のベッド数の不足が生じた結果、病院への入院・手術待ちの患者が一時100万人以上にもなり、大きな社会問題になりました。GPの紹介を経ても、その次になかなかたどりつけなかったのです。1997年の総選挙でトニー・ブレア率いる労働党が政権を奪取して以降、大胆な改革が断行され以前に比べれば状況はだいぶ好転しているようですが、アクセスの点だけで言えば、日本とは雲泥の差といえるでしょう。

フリーアクセスが医療崩壊を招く?

 患者の視点からは、フリーアクセスは絶対に守るべき制度のように思えます。ところが、話はそう単純ではありません。医療資源の効率的な活用という点からすると、ムダが生じやすく、結果として医療従事者の疲弊を招きやすい面があるからです。

 多くの患者は、医療に関してそれほど詳しい情報を持っているわけではありません。そのため、軽症であるにもかかわらず高機能の大病院を受診したり、緊急性が低いにもかかわらず救急車で救急センターへ向かったりすることがあります。患者のこうした行動は、医療資源の適正な活用を考えた場合、やはりムダが多いと言わざるを得ません。

 日本人は大病院志向と言われますが、これも「受診する医療機関を自由に選べる」フリーアクセスと深く関連しているように思われます。大病院志向の問題は、患者の集中による勤務医の疲弊だけにとどまりません。医療費は、仮に同じ疾患の診療であっても、病院の規模が大きくなるほど高額になると言われています。高機能の医療機器を備える病院では、万全を期すために、念入りに検査を行う傾向があるからです。

 下の表は、社会保険診療報酬支払基金の統計月報を基に、入院外(外来)分のレセプト(医療機関から保険者への医療費の請求書)の点数を比較したものです。レセプト1件1日当たりの医療費(患者1人外来1回当たりの医療費)は、大学病院が1411点(1万4110円)、国立病院が1189点(1万1890円)である一方、診療所は570点(5700円)に過ぎません。大学病院の単価は、診療所の約2.5倍に当たります。


4月12日をもって投票の受付は締め切りました。ご協力ありがとうございました

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