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“新しいマネー”の深すぎる世界

『スギハラ・ダラー』の著者、手嶋龍一氏に聞く

2010年4月9日(金)

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 えも言われぬ魅力を湛えた、この物語の主人公は、スティーブン・ブラッドレー。東洋の文化にも日本人以上に造詣が深く、しかも優雅な独身。BBC(英国放送協会)の東京特派員だが、実は英国秘密情報部の気鋭のインテリジェント・オフィサーでもある。

 ブラッドレーとアメリカ人の盟友マイケル・コリンズのコンビが、精巧な北朝鮮製の偽ドル札を追い詰め、国際政治の闇を衝いた『ウルトラ・ダラー』(新潮社)は、大ベストセラーとなった。

 前作の姉妹篇に当たるのが最新作『スギハラ・ダラー』。今回もスティーブンとマイケルの名コンビが奇略縦横の活躍を見せ、「インテリジェンスのわざとは何か」を存分に見せてくれる。

 今回の作品のテーマは、現代社会を動かすマネー。その淵源は、第2次世界大戦の際、杉原千畝が外務省の訓令に抗して発給した「命のビザ」で救われた或る「スギハラ・サバイバル」の物語から始まる。彼がアメリカに逃れて、創りだした革命的な金融商品が、9・11同時多発テロやリーマン・ショックなど世界を揺るがした事件に際して、マーケットに衝撃を与える――。それが「スギハラ・ダラー」だ。その正体に迫っていくスティーブンとマイケルの世界最小の捜査チームが、読者をめくるめくような「インテリジェンス・ワールド」に誘っていく。

 壮大な歴史の流れとマネーの深すぎる世界を描いたこの小説の著者、手嶋龍一氏に聞いた。

―― 『スギハラ・ダラー』の重要なファクターとして「スギハラ・サバイバル」が位置づけられています。ここに手嶋さんが着目したきっかけを教えてください。

スギハラ・ダラー』(手嶋龍一著、新潮社 1680円)

手嶋 1990年代の終わりのことですが、アメリカではビル・クリントン政権が、イラクの首都・バグダッドの情報機関を標的に巡航ミサイルによる攻撃をしばしば行っていました。無人の兵器を使った武力攻撃は、権力者を安易な武力発動に傾かせてしまう。当時、NHKのワシントン支局長だった私は、アメリカの国防長官経験者に「力の行使のあるべき姿は」をインタビューしようと思い立ちました。

 ワシントンの街には名だたる国防長官経験者がいるのですが、みな出払ってしまっていた。そのとき、ふと頭に浮かんだのが、「忘れられた国防長官」でした。フォード政権で若くして国防長官を務めたドナルド・ラムズフェルド氏でした。当時、シカゴに住んでいたのですが、連絡を取ってみると「すぐに来い」と返事をもらったので、シカゴのオヘア空港に向かいました。

「アメリカの金融先物市場の父」との出会い

 中西部の大都市シカゴには「外交評議会」をはじめ、実業家がアメリカの外交や安全保障さらには経済政策を論じる場が数多くあるのですが、そうしたクラブのひとつでラムズフェルド氏にインタビューすることになりました。

 その時のことでした。インタビューを終えた氏は、ちょっと離れた所に悠然と座って談笑していた人物に注意を促し、「君はあの爺さんを知ってるか?」と尋ねたのです。「あの人物こそ、自由な市場の取引を至上のものとするシカゴが生んだもっともシカゴらしい大物だ」と囁いてくれました。そのひとの名は、レオ・メラメド。

―― 1970年代にシカゴ・マーカンタイル取引所を舞台に金融先物商品の取引を育てあげ、「アメリカの金融先物市場の父」と謳われた、あのレオ・メラメドですか。

手嶋 そうです。そのレオ・メラメドが、悠々迫らぬ、あの風貌で飲みもののカップを持っていました。

 イグアスの瀑布を思わせるような大暴落のさなかに、たった一人で立ち尽くしていたレオ・メラメド。私にとって、その名は特別な響きを持っていたのです。1987年10月19日の月曜日のことでした。史上最大規模の世界的な株価の大暴落を招いた、あの「ブラックマンデー」。当時私はワシントン特派員として、未曽有の危機を目の当たりにしました。世界経済の心臓にたとえられるニューヨーク証券取引所は、鼓動を次第に弱まっていくように取引がなくなり、心肺機能が停止してしまいました。

 資本主義の心臓部にあたる証券取引所が閉じてしまえば、経済の血液であるマネーの流れも止まってしまう。それは資本主義の死を招く緊急事態です。9・11同時多発テロに見舞われたアメリカは、一時的に市場を閉鎖しました。しかし、ブラックマンデーの時には、市場当局が進んで閉鎖を決めたのではない。ちょうど心臓の鼓動が弱まるように、力尽きて止まってしまったのです。市場関係者は「アメリカ最後の日」を覚悟したほどでした。

 ところが、そんなさなかに、粛々と商いを続けていた市場があったのです。レオ・メラメドが率いていたシカゴのマーカンタイル取引所がそれでした。

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