• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

70年代の“だめなヒーロー”にこそ、人生を重ねられるんだ

「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」岡村天斎監督・1

  • 渡辺由美子

バックナンバー

2010年4月16日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 組織の命により、殺人を含むさまざまな任務を遂行する「契約者」と呼ばれる者たちがいる。彼らは感情を廃して「合理的判断」が下せる人間と言われ、本人たちもそれを信じている。けれども、究極の選択を迫られたとき、ある者は情に流され、ある者は己が守りたいものに執着して自滅する。

 「合理性」を優先しようとしつつも「感情」にあらがえない人間模様を描いた「DARKER THAN BLACK」シリーズ。(以下「DARKER」)。

――私たちは今、効率を考え、常に合理的判断を求められる、すくなくともそういうプレッシャーを感じる時代を生きています。うまくやらないと自滅するぞ、と。ところが、結局は「情」や人間の持つ何かによって、わざわざ「損」な選択をしてしまいがちですよね。これは非常に今の時代を捉えたテーマなのではないかと思いました。

 制作を開始した2年前、監督はそのようなことはお考えになりましたか。

●作品について●

 解析不可能な異常領域「地獄門(ヘルズ・ゲート)」の出現により、本当の“ 空” を失った東京。それと呼応するように現れたのは、特別な能力を身につけた者たちだった。能力を得る代償として、人間らしい感情が希薄になり、人を殺めることさえ冷徹に行う彼らを、人々は畏怖を込め、「契約者」と呼んだ。ゲートに秘められた謎をめぐり、各国の諜報機関は「契約者」を利用して熾烈な諜報戦を繰り広げている。主人公・黒(ヘイ)も「契約者」の一人として、各国から送られてくる予測不可能な能力を持った敵の契約者たちとの闘いに身を投じていく。(※「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」公式サイトより引用、編集。公式サイトはこちら

 「DARKER THAN BLACK」は、岡村天斎監督によるオリジナル作品として出発したシリーズ作品。2007年4月に第一弾「黒の契約者」、2009年10月に第二弾「流星の双子」がそれぞれTVシリーズとして放映され、さらに「流星の双子」のブルーレイ&DVD偶数巻に収録される形で、完全新作「黒の契約者 外伝」が今年の1月よりリリースされている。

 出荷本数は「黒の契約者」DVDシリーズ全9巻が累計約11万本、「黒の契約者」Blu-ray BOXが約1万3千本超、「流星の双子」第1巻がBlu-ray&DVD合計約2万本超(いずれも2010年4月現在)。1巻に付き1万本以上でヒットといわれる現在のアニメ市場の中で、本作は長期間に渡り好調なセールスを続けている。

(c)BONES・岡村天斎/DTB製作委員会・MBS

むしろ、合理的に生きたいんです

岡村 ごめんなさい、というべきでしょうか。実は、僕自身は「合理主義」を否定するつもりはないんです。そのように見ていただいたとしたら申し訳ないのですが。合理主義自体を否定する気は全くなくて、むしろ逆に、みんなもう少し、「真の合理性」を追求しながら生きてもいいんじゃないか、くらいの気持ちでいたんですね。

―― 真の合理性?

岡村 天斎(おかむら・てんさい)
1961年生まれ、横浜出身。早稲田大学建築学科卒業。代表作は1995年「MEMORIES  EPISODE2 STINK BOMB 最臭兵器」、1999年「メダロット」、2000年「人造人間キカイダー THE ANIMATION」、2003年「WOLF'S RAIN」など(いずれも監督)

岡村 だって、僕たちが仕事をしていても、効率化といいながら無駄をしているなということがいっぱいありますよ。アニメーションの制作現場だって、アフレコ用に「線撮り」の映像をわざわざ作ったりね。(注:「線撮り」……映像が未完成な場合、声優が声を入れるために、登場人物がしゃべるタイミングに合わせて線やフキダシを入れて、仮の映像を作ること)。今のアニメーションの状況も、ムダな手間がかかって、そこでまたお金が発生したりして、もったいないことになっている。真に合理性を追求できていたら、現場はもう少し楽に回っていくと思うんです。だから、合理性を否定しているわけではなく、むしろ僕も、合理性を追求したいとは思っているんです。

―― それは現場の責任ですか、それとも。

岡村 「フィルムを納品することが最優先」というのは、目先の合理性ですよね。どうしても目先のゴールにひっぱられてしまうんだけど、本来は、ギリギリにしか納品できないシステムをどうにかするほうが、本当の合理性ですよね。

―― だとすると、アニメーションの現場に限らず、真の合理性というものに、なかなか私たちはたどり着けませんね。

岡村 そう。みんなが悩んで迷走したりしているのは、自分の価値観とか自分の欲望がよくわからないからというところもあると思うんです。たとえば、今はみんな、お金が儲かるようにしようと動いているけれど……本当は、「お金を集めることそのものが大好きで、それ自体が目的の人」は、あんまりいないんじゃないかなと。本当は、「お金を儲けたあとで何をしたいのか」という、もっと先のゴールを見据えるべきですよね。

 人によって、こうしたいという価値観や欲望は違うはずなのに、「こうしたら合理化できる」というゴールだけ一緒にしようとするから迷走してしまう。そこを混同すると、全員が、「お金をたくさん集めることが合理的ですね」、って思っちゃうんじゃないかなと。

「契約者」とは「コンビニで弁当選びに迷わない人」だ!

―― 目的がないまま合理性を求めてしまう。日本自体が広く陥っている状況かもしれませんね。

岡村 ということは、自分のビジョンがすごい明確、というのが真の合理性じゃないかと思うんですね。

 本来は、ひとりひとりが、自分自身の欲望や目的に、それこそ合理的に進むことができればいいなと思うんです。みんな、何をすれば“自分にとっての”幸せになるのかというのを意外と考えてないのかな、と。

 ……というのが僕が頭で考えていることで。じゃあ、僕も含めたみんなが、「合理的に」進めているのかというと、全然できていないですよね。簡単にできないから、みんなが苦労しているわけで(笑)。

 だから「DARKER」では、「契約者」という、自分の欲望や目的がすごく明確で、目的に向かって一直線に行ける人たちを出したんですね。

―― できないから、出したんですか(笑)。

岡村 そうですよ。できないから、出したんです。「DARKER」を作ることになったとき、スタッフの人たちと話したんですよ。「契約者」とは、特殊能力者である以外に、メンタル的にはどういう人たちなんだろうと。そうしたら、「コンビニに行って、並んでいる弁当を前にして迷わない人だ!」という話が出て(笑)。

―― 新発売の弁当が並んでいても、俺は今日は焼肉弁当だと(笑)。自分の欲望というのがよく分かっているということですか。

岡村 ええ。「契約者」というのは、欲しいものが幾つも並んでいるときに、瞬時に、自分の欲求の全てを秤にかけて、自分の欲求を叶えるにはこれが一番最短距離、という選択ができる人たちなんだろうなと。自分が何をしたいのかわかっていて、そのための道筋を見抜ける人、ということですかね。

 ……でも、物語の主人公の黒<ヘイ>は、「普通の契約者とは違う」存在だという。

―― 黒<ヘイ>は、目的のために一直線に行くことができない人なんですね。

コメント2件コメント/レビュー

「DARKER THAN BLACK」は「黒の契約者」も「流星の双子」も大好きです。監督のお話、次回以降も楽しみにしております。(2010/04/16)

「アニメから見る時代の欲望」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

「DARKER THAN BLACK」は「黒の契約者」も「流星の双子」も大好きです。監督のお話、次回以降も楽しみにしております。(2010/04/16)

最近の言い方をすれば何らかの欠落があるのが日本のアニメヒーローでしたね。屈折したヒーロー像。これはおそらく世代を超えて今後の日本のアニメにも継承されるでしょう。(2010/04/16)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授