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野暮な「ライター」は消えゆくのみ

2010年4月16日(金)

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「ライター規制」という見出しを見て、一瞬、ハッとした。
「なぜだ?」
 と思ったからだ。
「どうしてオレらが規制されねばならんのだ?」
 と。

 が、すぐに思い直した。この記事は、原稿を書くライターの話ではない。たぶん、火をつける方のライターの話だ。最近、子供の火遊びが原因で、何件か痛ましい事故が続発していたことでもあるし、記事は、それらの事件を受けたものなのであろうな、と、ここまでのところを考えるのに費やした時間は、全部で0コンマ2秒ほど。さよう。新聞をナナメ読みにする時、われわれは、非常な速度で情報処理をしている。

 つい先日、「ためしてガッテン」という番組を見ていたら、速読術の話をやっていて、その中で、訓練を受けた人々が新聞を読む時に、見出しのカタチに圧縮された紙面を一瞥することで、巨大な情報を処理しているのだというお話を紹介していた。うむ。特に訓練など受けていなくても、日々新聞を読んでいる人間は、ざっと見るだけで、おおよその内容をつかむことができるぞ。少なくとも、世界を把握した気持ちにはなっている。錯覚であっても。

 番組の中では、群衆の中から知った顔を見つけ出す能力(達人は、数千人の観客席の中から、約2秒で目当ての顔を見つけていた)と、速読術との関連についても興味深い知見を紹介していた。

 おお、以前、このコーナーで、新聞の一覧性(ブラウザビリティ)について述べた時に、私が当てずっぽうで書いたことが、なんとなく立証されている。ありがたい話ではないか。

 とにかく、われわれの脳は、文字のカタマリを「見」(必ずしも「読ん」でいなくても)るだけで、様々な予測と連想と寄り道を展開している。素晴らしい。

 果たして、記事は、ライターの安全規制に関するお話だった。

 なんでも、直嶋政行経済産業相は13日、「5月中にも結論を出したい」と述べ、夏に結論を出すとしていた当初の予定を前倒しする考えを示しているという。

 なるほど。そう遠くない時期に、現状の使い捨てライターは姿を消すかもしれない。われら使い回しライターがどうなるのかはまだわからない。まあ、イシとキタイが残っているうちは、なんとかもちこたえられるかもしれない。

 夕方のテレビは、もう一歩つっこんだ話をしていた。
 具体的には、「チャイルド・レジスタンス」という概念を紹介しつつ、「子供が簡単に操作できないようにする」ことの大切さを訴えていたのだ。

 なるほど。チャイルド・レジスタンス。ある意味、利便性の放棄だ。が、便利なら良いというものでもない。安全装置の無い拳銃はやっぱりコワイ。

 3歳児の手の届くところにライターを放置していた両親の不注意は、もちろん、責められなければならない。が、不注意は誰にでもある。もし、ライターが3歳児の手で着火できない仕様になっていれば、最悪の事故は防げたかもしれない。

 であるならば、やはり、ライターのようなブツは、安全に設計されるべきだ。
 反対意見もある。

「危険なものを遠ざければ良いというものではない。危険な道具を安全に扱うための方法を学ぶのでなければ、子供たちの成長は期待できない」

「手を切るからといってナイフを取り上げ、喉に詰めるからといってゼリー菓子を遠ざけていたら、子供は一生自立できない」
 これらの意見にも、一理はある。

 しかし、ともあれ、3歳児と100円ライターの組み合わせは、「訓練」とか「自覚」とか「知恵」といったお話とはなじまない。3歳は、火の怖さを知るには幼なすぎる。それゆえ、その幼い手で着火可能な道具を、われわれは彼らの手の届くところに置くべきではない。

 さて、冒頭の話に戻るが、私はなにゆえに「ライター」の文字に反応したのであろうか。

 ライターは、ご存じの通り、「原稿書き」の意味だが、私はふだん、自分に対してこの言葉をあまり使わない。
 理由は、なんだか貧乏くさい感じがするからだ。

「ライター」と言うのと、「コラムニスト」と名乗るのでは、やはりちょっと重みが違う。

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「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

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「野暮な「ライター」は消えゆくのみ」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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