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両親を看取って学んだ『死にゆく者の礼儀』
~無理をしない介護の難しさ

  • 浅沼 ヒロシ

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2010年4月21日(水)

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死にゆく者の礼儀』遙洋子著、筑摩書房、1500円(税抜き)

 上野千鶴子氏が女性向けに書いた『おひとりさまの老後』につづき、男性の老後を扱った『男おひとりさま道』がよく売れている。高齢化社会をむかえ、どう老いていくかを真剣に考える人が多くなったのだ。

 『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』のベストセラーで知られる遙洋子氏は上野千鶴子氏の教え子である。

 社会学者の師匠がフィールドワークで明らかにした「老後」の姿を、弟子は自らの体験を元に深掘りした。それが本書『死にゆく者の礼儀』である。

「無理をしない」と「意地」との狭間で

 遙氏は1994年に父を、2007年に母を見送った。

 父は晩年に認知症を患い、脳梗塞によって喋ることも動くこともできなくなった。かたや母は最期まで頭がしゃんとしていて、徐々に体が不自由になっていった。遙氏は対照的な両親の老いを経験することになる。

 ばくぜんと「親が老いたらどうしよう」と考えている人は多いが、具体的に介護保険の内容や老人介護施設のサービス内容を調べようとする人は少ない。また、たとえ下調べしていたとしても、本番になれば次から次へと経験したことのない事態が起こってくる。だから、〈老いは、万人にとっても未知だ〉

 私事だが、評者の私も4年前の義母(妻の母)の死につづき、昨年9月に義父(妻の父)の介護と見送りを経験している。

 遙氏と私では、介護に向かう環境も心構えもかなりの隔たりがあることを念頭に置きながら、それでも身につまされる思いで本書を読了した。

 父の介護で未知の領域に突入した遙氏は、父との意思疎通ができなくなることに苦しむ。一度は遙氏の結婚を許したのに、認知症ですっかり忘れてしまったこともあったという。婚約を台無しにされた遙氏は、〈私は忘れた父に老いへの怒りではなく、これが老いなのだと悲しんだ〉

 父の見送りを終え、今度は母が介護状態になったとき、遙氏は無理をしないことに決めた。

〈仕事はせねばならない、しかし合間に介護もし、たまには休みもする。それは、それぞれが自分のためであり、長期介護に向きあうためのバランスだ〉と自分に言い聞かせた。

 いつの間にか、兄夫婦は母のわがままに付き合うことが介護の中心になり、末娘の遙氏は〈なにもかもが自分の思い通りにならない母の悔しさに付き合う〉ことに注力する、という分担ができあがっていく。

 自分の経験を自嘲気味に〈中途半端な介護〉という遙氏だが、はたから見ると、「もっと肩の力を抜けばいいのに」と声をかけたくなるほど真剣に介護に打ちこんでいる。

 ベッドかソファーでじっと寝ている母を少しでも外出させようとしたり、母の話し相手になれるよう、誰もそばにいない曜日や時間をねらって実家に寄ったりする工夫もした。

 嫁が車椅子を押してくれないと母が嘆いたときは、電動車椅子を買ってあげたりもしたし、しかも、1台40万円もすることを母に気付かれないよう、値段は3万円であるとお店の人に口裏をあわせてもらった。

 極めつけは、母がユッケを食べたいと言ったときのこと。

コメント6件コメント/レビュー

「最後のときをどう迎えるか」病院で働いているとなおの事、身近に感じられることと思います。私も高度医療や福祉が、人間の尊厳を守っているのだろうかと疑問に思います。映画「ジョニーは戦場へ行った」は、まさに、医療のなしえた人道に対する冒涜です。現在では高度医療の名のもと、同様な事が日常茶飯事に行われています。医療関係者からも「意味の無い、治療やリハビリを要請されることがあるが断るのが難しい」と聞いています。誰もが、「自分の意思を的確に伝えられず、尊厳がなく・苦痛にうめき続けるような生き方を望んではいない」と思います。さらに、自分のために家族・誰かがその大切な人生を犠牲にしているなら、それもまた悲惨なことであります。自分の母も認知症でグループホームに入っていますが、決して、尊厳のある生活ではないのです。自分がその状態になったときには、尊厳死を望みます。1970年代の米映画で「ソイレント・グリーン」と言う映画をご存知ですか。2022年死ぬ権利が確立された未来映画です。悲惨な自死より、医療としての尊厳死をしっかり考える時期と思います。また、スイスに「自殺幇助組織ディグニタス」がありますが、ハードルが高すぎ、誰もが利用できるわけではありません。哲学者の須原一秀氏が実行した「自死という生き方」は、人生の生き方の一つと考えて、受け入れられる社会になってきたと思うのですが、いかがでしょうか。(2010/04/23)

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「最後のときをどう迎えるか」病院で働いているとなおの事、身近に感じられることと思います。私も高度医療や福祉が、人間の尊厳を守っているのだろうかと疑問に思います。映画「ジョニーは戦場へ行った」は、まさに、医療のなしえた人道に対する冒涜です。現在では高度医療の名のもと、同様な事が日常茶飯事に行われています。医療関係者からも「意味の無い、治療やリハビリを要請されることがあるが断るのが難しい」と聞いています。誰もが、「自分の意思を的確に伝えられず、尊厳がなく・苦痛にうめき続けるような生き方を望んではいない」と思います。さらに、自分のために家族・誰かがその大切な人生を犠牲にしているなら、それもまた悲惨なことであります。自分の母も認知症でグループホームに入っていますが、決して、尊厳のある生活ではないのです。自分がその状態になったときには、尊厳死を望みます。1970年代の米映画で「ソイレント・グリーン」と言う映画をご存知ですか。2022年死ぬ権利が確立された未来映画です。悲惨な自死より、医療としての尊厳死をしっかり考える時期と思います。また、スイスに「自殺幇助組織ディグニタス」がありますが、ハードルが高すぎ、誰もが利用できるわけではありません。哲学者の須原一秀氏が実行した「自死という生き方」は、人生の生き方の一つと考えて、受け入れられる社会になってきたと思うのですが、いかがでしょうか。(2010/04/23)

 私にもこの評者さんのような強さがあったならと思います。◆2年間、毎週末介護のために実家に帰省する生活に疲れました◆3年前に仕事も結婚も諦め実家に戻り、未だ介護中心の日々、「後悔」の嵐真っ最中です。果たして、介護が終わった後、評者さんのように「後悔は無い」と言えるような選択が自分にできたのかどうか・・・弱さ故選択できなかっただけか◆今はただ、親さえ見送れば後くされなく死ねると思い続ける毎日。◆元気な頃は子供に介護の期待を表明していなかったうちの親も、いざ要介護に弱れば気持ちは変わりました◆介護保険を利用しても限界があります。◆前の方が書いているとおり『介護者も介護に振り回され、自分の人生を犠牲にし、疲れきって鬱になって自殺する人までいます。』私のことを言われているのかと思いました。◆日本の社会全体で対応していける日が一日も早く訪れるのを望んでいます、私には間に合わないでしょうが・・・・。(2010/04/22)

---〈恐怖に怯え「死ぬ」とすがる人に、「そうだ死ぬのだ」と言うのか。「大丈夫。死なない」とうそぶくのか。「神が待っている」と突然登場人物を増やすのか。「負けちゃだめ」と根性をまだ呼ぶのか。「なるようになる」と突き放すのか。--- とありますが、こういった場合に信仰を持っている人は強いです。また、日本で「死」というと「忌まわしいもの」葬式の後は清めのために塩を振る等と「死」を嫌うべきもののように取り扱っているから死を宣言された人々はショックを受けるのです。「死」は遅からず早からずみんなが経験すること。この最後の時までどうやって生きるか、最後の時をどう迎えたいか一度でよいから考えてみるとよいです。私は病院で働いていますが、ICUの患者達を見たことありますか?点滴を腕、首、胸にうたれ、酸素チューブを口から気管支に入れられ、鼻からフィーディングチューブを入れられ、尿道にはカテーテル、肛門にも大便を取るチューブが入れられている。父がそんな状態で亡くなった。私はまっぴらだ。病院で死んでたまるか。母は最期の2年寝たきりだったが、自宅の自分の布団で朝目覚める代わりに息を引取った。彼女が何十万円も払ってお墓を買った後だった。「死」は周囲の者には確かに悲しいことだが、ひとりひとりの任務として考えてやればよいのでは? 私は主人より先に逝きたい。両親が亡くなった後主人が逝ってしまったら、米国でひとりぼっちになってしまう。私がこの世を去る時はあたかも私がどこか遠い国に旅行に行くように見送って欲しい。そんな自分自身の「死」を迎える考えは老いて行く両親から学んだ。(2010/04/22)

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三品 和広 神戸大学教授