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「迷い道くねくね」がロングランへの“近道”かも

「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」岡村天斎監督・2

  • 渡辺由美子

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2010年4月23日(金)

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(前回はこちら→「70年代の“だめなヒーロー”にこそ、人生を重ねられるんだ」)

――自らを「契約者」=目的のためには手段を選ばない合理主義者と考えている主人公・黒<ヘイ>が、任務と感情の間で葛藤する様を描いた「DARKER THAN BLACK」。黒<ヘイ>は、かつての「傷だらけの天使」「探偵物語」といった1970年代ドラマの主人公のような、監督の言葉を借りれば「崖っぷちに向かって走っていく」、迷い悩むヒーロー像ということでしたね。

 監督は、ご自身原案のオリジナル作品として、今の時代には見かけなくなった「古い時代のヒーロー像」を打ち出したわけですが、これは、お客さんに受けるという確信があったのですか。

岡村 天斎(おかむら・てんさい)
1961年生まれ、横浜出身。早稲田大学建築学科卒業。代表作は1995年「MEMORIES EPISODE2 STINK BOMB 最臭兵器」、1999年「メダロット」、2000年「人造人間キカイダー THE ANIMATION」、2003年「WOLF'S RAIN」など(いずれも監督)

岡村 そうですね。迷い悩むヒーローは、今の時代にはあまり登場しないかもしれない。けれども、いつの時代にも好かれるんじゃないかという確信はありました。

 目的に向かって問題を軽々と飛び越えていくようなヒーローだけじゃなくて、悩んで苦しんで、自ら損を引き受けてしまうような“だめなヒーロー”は、時代に関係なく受け入れてもらえる。特に、“おじさん”と呼ばれるような年齢になってからは、そう思うようになりました。

――ロングランな人気作になりましたが、ヒットのコツをご自身で分析すると?

岡村 (笑)。コツとか、そういうことじゃないですよね。僕自身が、監督になるまでに20年かかっているような人生の“迷い人”ですから(笑)。でも、迷い人には迷い人なりの作り方があるのかもしれません。

 僕は、だいたいにおいて作品内で明確な答えを出さないんですよ。たとえば、「謎の組織」というのを出すでしょう。お客さんは、いつ謎の組織の全貌が明らかになるかと思って観ている。でも、最後まで観ても、全貌は明らかにはならない。

――そうでした。結局、謎の組織の正体は、わからないままでした。それはなぜ、明らかにしなかったのでしょう。

細かいプロフよりも「訳ありの女」

岡村 謎は、謎のままで取っておくのでいいんじゃないか、というふうに思うんですね。

 どうしてそういう作り方がいいなと思ったかというと、前に「カウボーイビバップ」という作品の演出を何本かやらせてもらったんですけど、僕が演出を担当した話の中に、ストーリーの鍵を握るジュリアという女の人が出てくるんです。それで、この女性をどのように描いたらいいんだろうと思って、監督(渡辺信一郎氏)に尋ねたんですね。「ジュリアというのはどういう女ですか」と。

――そうしたら?

岡村 そうしたら監督は、「うん、訳ありの女だ」と。それだけしか返って来なかったんですよ。

 ああ、なるほどと思いましたね。それですべてがわかった、ああ、それでいいじゃんと思ったんですよね。「訳ありの女」、それだけでいろんな想像がふくらむじゃないですか。「この女にはこういう過去があって彼女はこうするつもりなんだ」と説明されるよりも、「訳ありの女」というフレーズだけぽんと渡されたほうが、ぐっときたんです。

――全部は説明しないことで、かえって裏側に想像させるものが大きくなる、と。

岡村 そうなんでしょうね。僕は、謎解きとか、謎を解いたらゴール、というのは、やりたいとは思わないんです。むしろ、興味をひく疑問(フラグ)だけを立てておいて、お客さんにそこから考えてもらう。お客さんを“迷い道”に誘い込みたいというふうに思うんですよ。

――でも、普通迷ったら腹が立つじゃないですか。お客さんを迷わせて「面白い」と思ってもらうのは大変そうですよね。

●作品について●

 解析不可能な異常領域「地獄門(ヘルズ・ゲート)」の出現により、本当の“ 空” を失った東京。それと呼応するように現れたのは、特別な能力を身につけた者たちだった。能力を得る代償として、人間らしい感情が希薄になり、人を殺めることさえ冷徹に行う彼らを、人々は畏怖を込め、「契約者」と呼んだ。ゲートに秘められた謎をめぐり、各国の諜報機関は「契約者」を利用して熾烈な諜報戦を繰り広げている。主人公・黒(ヘイ)も「契約者」の一人として、各国から送られてくる予測不可能な能力を持った敵の契約者たちとの闘いに身を投じていく。(※「DARKER THAN BLACK 黒の契約者」公式サイトより引用、編集。公式サイトはこちら

 「DARKER THAN BLACK」は、岡村天斎監督によるオリジナル作品として出発したシリーズ作品。2007年4月に第一弾「黒の契約者」、2009年10月に第二弾「流星の双子」がそれぞれTVシリーズとして放映され、さらに「流星の双子」のブルーレイ&DVD偶数巻に収録される形で、完全新作「黒の契約者 外伝」が今年の1月よりリリースされている。

 出荷本数は「黒の契約者」DVDシリーズ全9巻が累計約11万本、「黒の契約者」Blu-ray BOXが約1万3千本超、「流星の双子」第1巻がBlu-ray&DVD合計約2万本超(いずれも2010年4月現在)。1巻に付き1万本以上でヒットといわれる現在のアニメ市場の中で、本作は長期間に渡り好調なセールスを続けている。

(c)BONES・岡村天斎/DTB製作委員会・MBS

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