• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

分散休日で離散ファミリーは夢を見られるか

2010年4月23日(金)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 一カ月ほど前のある朝、朝刊各紙と各局のワイドショーが、休日分散化の話題を一斉に報じたことがある。おぼえておいでだろうか。

 なんでも、観光立国推進本部(本部長・前原誠司国土交通相)の分科会が、全国を5地区に分割した上で、ゴールデンウイーク(GW)と秋の大型連休を地域ごとに分散化する案を提示したというのだ。で、分科会は、引き続き、11年度の実施を視野に議論を進めている。そういうお話だった。

 報道を受けて、コメンテーター諸氏の反応は、意外や、冷淡だった。

「単身赴任のお父さんの休日はどうなるのか」
「境界線の地域では混乱が起きるのでは」
「全国規模で営業している企業は休めないと思う」
「サービス業は注文がある限り対応せざるを得ないはず」
 と、出て来るのは、否定的なご意見ばかり。

 で、浅黒い顔色をした司会者が
「まーったく、何を考えているんでしょうかね」
 てな感じで話を引き取って、このトピックは捨て去られた。沙汰止み。あるいは整理箱行き。

 が、終わったと思っていたのは私の早とちりで、国土交通省および観光庁は、この件をまだあきらめていなかった。しばらくして新聞に載った続報によれば、彼らは、今後、全国8地域のモデル地区で、休日分散化に関する実証実験を重ねて、その結果を見ながら、実現を目指して行く所存だという。うむ。

 個人的な感想を申し上げるなら、私は、このプランは悪くないと思っている。

 よしんば企業内や家族間で、あるいは各地域の内外で、多少の混乱が生じるのだとして、それはそれで面白いと思うからだ。いずれにしても、北から南までのすべての日本人が、全員同じ日に休んで、一斉に同じタイミングで渋滞の高速道路に繰り出すのは、経済的に適切であるのかどうかはともかく、景色として、非常に薄気味が悪い。二十一世紀の日本人は、もっと多様であるべきだし、できれば、隣人の逸脱や偏向について、より寛大であってほしい。そのために、人々の休日をズラすことは、ちょうど良いワンステップになるのではなかろうか。

 たとえば、一人の学生が飲食店でアルバイトをする。と、日曜日に働くことになったその若者は、微妙に仲間内のスケジュールから外れはじめる。じきに、昼夜も逆転する。と、彼は、先月までの自分とは違う、世間から遊離した人間としての自覚を持つに至る。

 これはこれで楽しい。カレンダーが変われば、世界の眺めも変わる。寝ずに働いた人間の目には、明け方の月がまぶしく感じられる。で、いつしか、若者は、逆方向の終電に乗る客になる。こういう機会がないと、ある種の産業には人材が補填されない。というよりも、コースから外れた出会いがないと、ある人々は天職を見つけることができないのだ。であるならば、休日や起床時間や独立のタイミングは、人それぞれの資質や気分に応じて、千差万別であってしかるべきではないか。

 さてしかし、休日がズレると、それだけで日本各地の観光産業が活性化するのかというと、それはまた別の話だ。

 というよりも、休日分散化の結果、観光庁の目論見通りに、より多くの観光支出が全国にバラ撒かれることになるのだとして、それは、われわれにとって、望ましい未来なのだろうか?

 景気浮揚には、つながることだろう。
 観光支出が増加すれば、観光収入も同じだけ増加するわけで、ということは、経済規模だって、当然、拡大するはずだからだ。
 とすれば、少なくとも、観光地の人々にとっては、良い変化になる。ここまでは良い。

 が、観光客として出費を強いられる側にいる多くの国民にとって、観光の機会が増えることは、これは、果たしてより良い生活なのであろうか。
 観光みたいな、言ってみれば不要不急の享楽的な支出に、より多くの金額を費やすことは、普通に考えて、堕落ではないのだろうか。でなくても、家計に占める観光支出の増加は、貯蓄の減少を招くはずだ。ヘタをすると、借金の増加や、クオリティ・オブ・ライフの悪化につながる。こんなことで良いのか?

 ん? こういう考え方は古いのだろうか。

コメント55

「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」のバックナンバー

一覧

「分散休日で離散ファミリーは夢を見られるか」の著者

小田嶋 隆

小田嶋 隆(おだじま・たかし)

コラムニスト

1956年生まれ。東京・赤羽出身。早稲田大学卒業後、食品メーカーに入社。1年ほどで退社後、紆余曲折を経てテクニカルライターとなり、現在はひきこもり系コラムニストとして活躍中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

面倒くさいことを愚直に続ける努力こそが、 他社との差別化につながる。

羽鳥 由宇介 IDOM社長