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74. 人より拡声器に似ている人は始皇帝にも似ている。

~4月病文学入門2010(4)

  • 千野 帽子

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2010年4月28日(水)

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 日直のボウシータです。前回の続き、そして今年の「4月病文学入門」の、いちおうの最終回です。

 前回論じたとおり、性的放縦などの「道義的に悪い題材・表現」(たとえば永井荷風や吉行淳之介)を前にして、つぎのような4つの態度が考えられます。

(a)「道徳主義」者
けしからん。規範からの逸脱をひけらかすな。
(b)「価値分離主義」者
規範からの逸脱があっても、これはいい表現である。
(c)「逸脱主義」者
規範からの逸脱があるからこそ、これはいい表現である。
(d)「逸脱至上主義」者
(c)に同意。そして規範から逸脱しない作品(たとえばアニメ『サザエさん』)は無価値である。

(a)は(b)(c)から見ると、

「作品を特定の方向からしか見ることができない唐変木の野暮天」

です。この(b)(c)が長いあいだ一般的な文学論の立場でした。

 ところが1980年代以降日本でもさかんになったジェンダー論の立場からすれば、吉行淳之介の小説などは、たとえ市民社会のお堅い性道徳から逸脱していても、他方で男尊女卑・家父長制といった近代の「見えないしきたり」からは逸脱せず、むしろそれらにのうのうと守られつつそれらを再生産しているわけで、むしろ逸脱が足りない、という話になる。(b)(c)だって

「作品を特定の方向からしか見ることができない唐変木の野暮天」

じゃないか、というわけです。まったくもってそのとおりだ。

 こういう見かたが可能になって、私たちはかなり立体的に、自分の頭を使って、さまざまなコンテンツを見ることができるようになりました。言い換えれば、在来文学論の(b)(c)が、コンテンツをいかに一面的に見ていたかが、白日のもとに曝されたわけですね。

 しかし、前々回述べた「信仰・正義・ロックンロール」をやりたい人が、1990年代になると「政治的な正しさ」を旗印に、ジェンダー論やポストコロニアリズムに大挙して乗りこんできました。

 そうすると、「川端康成描く女」とか「南ちゃん」とか「澁澤龍彦の少女人形妄想」とか「ハルヒ」とかいったものを好きな男に向かってマッチョとかマザコンとかロリコンとか罵倒するだけでなんか知的学問的なことをした気になる人、というのも出てきます。

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